2025年9月9日(火)

 北朝鮮の対米反発は言葉よりも行動で! 米大陸を網羅した超大型ICBMの発射はいつ?

新型ICBM「火星20」型とおぼしきミサイル推進体を見て回る金正恩総書記(朝鮮中央通信)

 上機嫌で中国から帰国した金正恩(キム・ジョンウン)総書記はトランプ大統領が2019年2月のハノイ会談直前に米海軍特殊部隊を北朝鮮に侵入させ、金総書記の電話などの通信内容を盗聴しようとしたとの米紙「ニューヨーク・タイムズ」(5日付電子版)の記事に衝撃を受けたはずなのに沈黙を守り続けている。

 失敗したとはいえ、ビン・ラディンを殺害した前歴のある最尖鋭の米海軍特殊部隊が原子力潜水艦と小型潜水艇を使って北朝鮮の沿岸に上陸しようとしたこと、またその際、北朝鮮の漁民を殺害し、海に沈めたことなどは許しがたい犯罪行為であり、露骨な休戦協定違反である。即座に反論もしくはミサイル発射など対抗措置を取ってもおかしくはない「重大な挑発」である。

 金総書記の動静をみると、5日午後に中国から特別列車で帰国した金総書記は昨日(8日)平安北道・亀城市病院の建設現場を視察していた。随行者は趙甬元(チョ・ヨンウォン)組織部長、朱昌日(チュ・チャンイル)宣伝部長、金才龍(キム・ジェリョン)規律部長ら党幹部のみで軍人の姿は見えなかったが、亀城は2017年5月に準ICBM「火星12」型、同年7月にはICBM「火星14」型が発射された地点である。

 さらに、注目すべきは病院視察の前後にミサイル総局による炭素繊維固体エンジンの地上噴出試験に立ち会っていたことだ。

 金総書記は確か、中国の「抗日戦争勝利80周年記念式典」に出席するため北京に向けて出発する直前にもこの化学材料総合研究所を訪れ、炭素繊維複合材料の生産工程や大出力ミサイルエンジンの生産実態を直接確認していた。この視察から僅か1週間後に北朝鮮は炭素繊維固体エンジンの地上噴出試験を行ったのである。

 北朝鮮の発表ではこの固体エンジンは「火星19」型系列および次世代ICBMと称される「火星20」型に使用されることになっている。

 固形燃料使用を使用する「火星19」型は昨年10月31日に初めて試射され、最高高度7687km、距離1001km、86分飛行し、日本海に着弾していた。ロフテッド方式ではなく、正常角度(30〜45km)から発射されれば飛行距離が1万5000kmを超えることから北朝鮮は「戦略ミサイル能力の最新記録を更新し、世界最強の威力を持つ我が国の戦略的抑止力の現代性と信頼性を遺憾なく誇示した」と豪語し、ICBM「火星18」型と共に運用する「最終完結版の大陸間弾道ミサイルである」と宣伝していた。

 最終完結版のミサイルを開発したことで北朝鮮のミサイル開発も終わりかと思いきやそうではなかった。北朝鮮は1年も経たないうちに「火星20」型を開発していたのである。

 ちなみに同じく固体燃料使用の「火星18」型は昨年4月13日に試射され、74分間飛行し、最高高度は約6000km以上、飛翔距離は約1000kmと推定され、当時、金総書記は「火星18型は最も威力ある中核主力手段として、重大な使命と任務を引き受けて遂行することになる」と発言していた。

 「火星20」型が「火星18」型や「火星19」型よりも規模も性能も上回ることは十分に推測がつく。それというのも、2021年1月の第8回党大会で打ち出した5大戦略兵器の中に中・大型核弾頭を生産し、固体エンジン大陸間弾道ミサイルで1万5千km射程圏内の任意の戦略的対象を正確に打撃できる、それも多弾頭ミサイルの保有を盛り込んでいたからである。

 北朝鮮は昨年6月に中長距離固体弾道ミサイル1段エンジンを利用して初の多弾頭ミサイルの発射実験を行い、各機動戦闘部は「設定された三つの目標座標点へ正確に誘導された」と発表していた。

 多弾頭ミサイルであるとみられる「火星20」型を打ち上げるにはより強力な固体燃料エンジンが必要である。それが、昨日行った最大推進力が1971kNとされる炭素繊維固体エンジンである。

炭素繊維素材を利用した大出力固体燃料式エンジン噴射実験に立ち会う金正恩総書記(朝鮮中央通信)

 北朝鮮の発表では炭素繊維素材を利用した大出力の固体燃料式エンジンは過去2年間で8回も地上燃焼試験を行っており、昨日の噴出試験が「最後の試験である」と明らかにしている。ということは、過去の例からしてそう遠くない時期に「火星20」型の発射があるものとみられる。

 例えば、2017年3月18日に西海衛星発射場で新型大出力エンジン(100tf)地上噴出実験を実施してから2か月後の5月14日に「火星12号」型が発射されていた。

 また、2023年4月13日に「火星18」型を発射された時もその約3か月前の1月に咸鏡南道咸州郡馬近浦のエンジン試験所で固体燃料エンジン試験が行われていた。

 来月10日の朝鮮労働党創建80周年には間に合いそうにないが、12月末から来年1月にかけて予定されている労働党第9回大会には合わせる公算が大だ。