2026年4月16日(木)

 中東石油危機で韓国が悔やむ2年前の「原油埋蔵発見」不発

韓国の原油・ガス探索(出典:韓国石油公社)

 イランと米国によるホルムズ海峡封鎖により、国際社会は石油危機に直面しているが、中東に石油を依存している韓国も最も影響を受けている国の一つである。

 トランプ大統領が指摘するように、韓国は中東から石油の45%を輸入している。今回の封鎖で、韓国船舶26隻がホルムズ海峡で足止め状態に置かれている。

 韓国の石油備蓄量は日本よりも約1か月分少なく、約7か月程度と見積もられている。危機感を深める韓国政府は早くもエネルギー節約などの自衛策に乗り出し、3月25日からソウル市をはじめ全国の市・道で、政府・地方自治体・公共機関に出入りする車両(約150万台)に対し、週1回の運行規制を実施している。このまま中東危機が長引けば、経済や庶民生活に大きな打撃を受けかねない。

 韓国の現代経済研究院が3月3日に発表した「オイルショック発のスクリューフレーションとスタグフレーションに備えるべき」と題する報告書に基づけば韓国の石油消費量は極めて多い。G7(先進7か国)を含む世界の主要国の中で、ロシアを除けば韓国は最も石油を多く消費している国の一つである。

 国内総生産(GDP)に対する石油消費量、すなわちGDP1万ドル当たりのバレル数を見ると、ヨーロッパ最大の産油国であるロシアに次いで多い。ロシアが6.46バレルであるのに対し、韓国は5.63バレルである。ちなみに、韓国同様に中東から大量に輸入している日本は2.94バレルで、韓国のほぼ半分の水準である。

 経済成長が著しい韓国の経済規模は世界12位だが、残念なことに日本同様にレアアースを含め資源に乏しい。資源を外国に依存せざるを得ない韓国にとって、「石油さえ出れば」という願いは長年の夢である。

 ところが2024年6月3日、「浦項市の迎日湾沖に最大で140億バレルの天然ガスと石油が埋蔵されている可能性がある」との尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領による電撃発表に韓国は大騒ぎとなった。これは、尹前大統領が非常戒厳令を宣布する半年前の出来事である。

 慶尚北道・浦項市の近海が有望な埋蔵場所でガスと原油の内訳はガスが75%、原油が25%と推定されたが、仮に埋蔵規模が140億バレルであれば、韓国は世界第15位の産油国となる可能性がある。

 記者会見を滅多に開かない大統領自らが記者会見を開き、「深海鉱区としては今世紀最大の石油開発事業とされる南米ガイアナの110億バレルを上回る資源量である」と発表し、さらに同席した安徳根(アン・ドックン)産業通商資源部長官が「その資産価値はサムスン電子の時価総額(約440兆ウォン=当時)のおよそ5倍、約2200兆ウォンに上る」と試算を示した。

 国民の間で「資源大国」への期待が高まったのも無理はない。加えて、産業通商資源部が約20年前から探査と試掘を行い、その分析を依頼した米国の深海技術評価企業(アクトジオ社)が評価を与えたとされれば、期待が高まるのも当然であった。

 当時、政府系メディアである朝鮮日報系の「朝鮮TV」は、夜のニュースでアンカーが「大きな話題ではあるが、朴正煕(パク・チョンヒ)政権時にも同様の騒動があった。今回は冷静に見守り、成功を祈るのが妥当だ」とコメントしていた。期待半分、不安半分というのが、韓国国民の偽らざる心境だった。

 この朴政権時の騒動とは、1976年の年頭記者会見で朴正煕大統領(当時)が「浦項の迎日湾に原油が埋蔵されている」と発表したことを指す。この発表に国民は歓喜したが、1年後に経済性がないことが判明し、国民の産油国への夢は潰えた。

 今回も、所管の産業通商資源部の崔南浩(チェ・ナムホ)第2次官が昨年2月の記者会見で、日本海(東海)の深海ガス田の有望地点でボーリング調査を行った結果、ガスの兆候は一部確認されたものの、「経済性を確保できる規模ではなかった」と明らかにした。こうしてバラ色の夢は、わずか8か月で消えることとなった。

 一度ならず二度となれば、韓国の「原油埋蔵」は「徳川幕府埋蔵金」のような「空想」と言わざるを得ない。

 振り返れば、「シロナガスクジラ」と名付けたこの石油・ガス田開発プロジェクトも1976年の時と同様にレイムダック化した尹前大統領による窮地から脱するための一大賭けであったようだ。

 それでも石油危機に直面した今、韓国国民の中には「油田発見が正夢であったら」と思っている人は相当数いるのではないだろうか。他の誰よりも弾劾、罷免され、内乱罪で獄中にいる尹前大統領が一番悔しがっている筈である。