2026年4月19日(日)
トランプ政権はイランとの核交渉では米朝交渉の教訓から学ぶべき
イランを訪問した当時の金永南最高人民会議常任委員長とロウハニ大統領(当時)(労働新聞)
世界中が注目している米国とイランとの交渉が折合いが付けば、数日内に行われると伝えられている。
イランとの交渉での米国の要求は核開発能力の放棄とミサイル開発の制限である。
イランは2010年2月、「将来の原子力発電用に開発している」として、高濃縮ウランの製造を発表していた。しかし、核開発の疑いを持たれたことにより欧米の圧力と経済制裁下に置かれたイランは2015年、欧米が経済制裁を解除する見返りに核開発を制限することを盛り込んだ核合意を、米英仏独露中の6カ国との間で交わした。
ところが、2017年1月に発足したトランプ政権が合意から一方的に離脱したことに反発し、2019年以降、核開発を大幅に進めた。当時3.5%程度だった濃縮度は60%にまで達し、放置すれば、核兵器級の90%も時間の問題と言われた。
トランプ第2次政権は現在、核問題について@国内のウラン濃縮活動の停止(民生目的を超えるレベルの濃縮の禁止)A既に保有している濃縮ウランの米国への引き渡しB核施設の一部解体と軍事転用の禁止を求めている。さらに、国際原子力機関による厳格な監視と核開発制限、すなわち検証や査察の受け入れ強化も要求している。
また、弾道ミサイル開発についても、保有数の制限および中長距離弾道ミサイルの規制を求めている。具体的には、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や長距離弾道ミサイルの開発停止と、核弾頭搭載が可能な弾道ミサイル能力の放棄である。ただし、イランは現時点で米大陸を標的とするICBMは保有していない。
イランを北朝鮮と比較すると、類似点もあるが相違点のほうが多い。何より、核問題・ミサイル問題ともに北朝鮮が先行している。
イランの核問題は、ブッシュ政権下の2002年8月にイラン反体制派が核兵器開発疑惑を指摘したことから浮上した。一方、北朝鮮の核問題はそれより13年前の1989年、米国の偵察衛星が寧辺の核施設を確認したことで表面化した。その後、北朝鮮は原子炉(5000キロワット)の存在を認め、「実験用で平和利用のため少量のプルトニウム(90グラム)を抽出した」と公表した。イランがウラン型であるのに対し、北朝鮮はプルトニウム型の核開発であった。
イランは前述したように2015年に国連常任理事国にドイツを加えた6カ国と合意を交わした。一方、北朝鮮もブッシュ政権下の2008年に日米中露および韓国との6カ国協議で合意に至ったが、その後決裂し、2010年からウラン濃縮作業に本格的に着手した。さらに、2006年から2017年の間に6回の核実験を行い、既に核兵器を保有しているとされる。
トランプ大統領は第1次政権下の2018年と2019年に、金正恩(キム・ジョンウン)総書記と2度にわたり首脳会談を行い、核放棄を迫った。
当時の米朝核交渉は、北朝鮮が「スモールディール」(段階的・ギブ・アンド・テーク方式)を求めたのに対し、米国は「ビッグディール」(一括方式による完全な非核化)を要求した。すなわち「先に核放棄、後に制裁解除」という前提の、いわゆる「リビア方式」であった。
この方式は、北朝鮮がすべての核兵器・核物資および化学兵器を米国に搬出し、核関連活動を凍結・破棄し、ミサイル施設を解体すれば制裁解除に応じるというものだった。言い換えれば、完全な放棄がなされない限り制裁解除には応じないという立場だ。分かり易く言えば、「先に手を挙げろ」ということだった。
この米国の要求に対し、当時の李容浩(リ・ヨンホ)外相は「リビアが核兵器を放棄した後にカダフィ政権が崩壊したのを我々は見ている」と述べ、「リビア方式」を受け入れない姿勢を明確にした。
カダフィ政権下のリビアは、米英両国との合意に基づき2003年12月に核計画の放棄を宣言し、大量破壊兵器(WMD)の廃棄を約束した。IAEAなどによる査察を受け入れ、関連施設の廃棄にも着手した。核関連物資や機材、スカッドCミサイルなどは米国に引き渡され、テネシー州オークリッジの施設で保管された。
その後、米国は2004年に制裁を大幅に緩和し、2006年にはテロ支援国家指定を解除して大使館を開設した。しかし、リビアで内戦が発生すると、英仏などが軍事介入し、2011年10月にカダフィ大佐は拘束・殺害され、42年間続いた政権は一瞬にして崩壊した。
米朝会談決裂後の約7年間で、北朝鮮は少なくとも30発の核兵器を保有するに至り、米国本土に届くICBMに加え、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)や極超音速ミサイルまで手にした。また、ロシアのウクライナ戦争にも参戦している。結果として、米朝交渉決鉄によって米国は何一つ得るものがなかった。
米国はイランを屈服させようとしているが、米朝交渉の失敗から教訓を得るべきだ。イランが敗戦国でない限り、イランの主張にも耳を貸すべきではないだろうか。
(参考資料:ロシアを軍事支援した北朝鮮は「反米同志国」のイランにはどう対応するのか)