2026年4月2日(木)
「トランプ批判」に尻込みする中露朝首脳 北朝鮮は2017年とは大違い!
北京の天安門で並び立つプーチン大統領、習近平主席、金正恩総書記(朝鮮中央通信から)
トランプ大統領は言いたい放題、やりたい放題だ。暴君と言っても過言ではないだろう。かつて米国にこのような大統領がいただろうか。
今朝の国民向け演説も、いつものように最初から最後まで自画自賛していた。圧倒的な軍事力を背景に戦争を引き起こし、勉学中に爆撃された175人の児童をはじめ多くの罪のない市民を死に追いやり、また不幸のどん底に突き落とし、世界中に経済混乱を招いたことへの反省は微塵もなかった。イランの指導者を何人殺害したとか、何か所も爆破・破壊したとか、軍事的成果をひたすら誇示していた。「常軌を逸した者に刃物」とは、トランプ大統領のことを指しているのではないだろうか。
トランプ大統領が国際法を無視し、傍若無人にも他国の主権を踏みにじり、武力侵攻しても、それを止める国も、リーダーもいないとは、実に嘆かわしいことだ。第2次世界大戦を引き起こしたヒトラーの横暴は、国際社会が一致団結、力を合わせて阻止したが、今では国連事務総長も無力である。面と向かってものも言えないありさまだ。
ドイツのシュタインマイヤー大統領が「(イラン攻撃は)国際法に反していることに疑いの余地はない」と明言したことや、イラン攻撃に加担しなかったことでトランプ大統領から名指しで批判されたイタリア、英国、フランスの首脳らが反発する発言をしたことくらいだろうか。
また、米国と同様に「軍事作戦」という名の下にウクライナへ侵攻したことで、トランプ大統領から「完全に狂っている」「あまりに多くの人を殺している」と非難されたロシアのプーチン大統領も、「台湾侵攻なら北京を爆撃する」と恫喝された中国の習近平主席も、やり返す好機であるにもかかわらず口をつぐんだままだ。
では、米国と不倶戴天の関係にある、世界で最も反米的な国の一つである北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記はどうか。確か第1次トランプ政権の時は、「売り言葉に買い言葉」でトランプ大統領と激しく応酬していたことは、まだ記憶に新しい。
トランプ大統領は大統領就任以前から、「金正恩は頭がおかしい。北朝鮮が核兵器を持っていること自体が問題だ」とか、「狂人がこれ以上核を持ってふざけないようにすべきだ」とか、「寧辺の核施設を精密打撃すべきだ」と、金総書記を痛烈に批判していた。極め付きは、2017年の国連演説だった。
トランプ大統領は北朝鮮を「不良国家」「犯罪者集団」「完全破壊」「堕落した政権」などの言葉で激しく責め立て、「米国と同盟国を防衛すべき状況になれば、他の選択の余地なく北朝鮮を完全に破壊するだろう」と威嚇した。
これに対して金総書記は、北朝鮮の憲政史上初めて、最高権力機関である国務委員会委員長の名で声明を発表し、「大統領になってから世界のすべての国々を威嚇・恐喝し、世界をかつてなく騒々しくしているトランプは、一国の武力を持つ最高統帥権者として不適格であり、彼は明らかに政治家ではなく、火遊び好きな放火魔かチンピラに違いない」と罵倒した。さらに、「言葉の意味も分からず好き勝手なことを言っている老いぼれには、行動で示すのが最善だ。米国の老いぼれた狂人を必ず火で鎮めるだろう」と強く反発していた。しかし今回は、トランプ大統領への公然たる口撃は影を潜めている。
米国とイスラエルによるイラン攻撃が始まった翌日に出された北朝鮮外務省の談話では、「侵略行為であり、最も醜悪な主権侵害である」と非難するにとどまり、侵略行為を命じたトランプ大統領への直接的な批判は避けていた。
今朝も外務省報道官が、国連安保理による北朝鮮人権決議案の採択に反発して談話を出したが、そこでも「中東全域では、第2次世界大戦期の反人道的犯罪にも匹敵する大量虐殺が続いている」とか、「覇権勢力の侵略野望によって国際法規範と秩序が無残に蹂躙されている」と述べるにとどまり、米国を名指しで批判することはなかった。
北朝鮮は、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)元大統領を「低能」、尹錫悦(ユン・ソクヨル)元大統領を「ごろつき」、バイデン前大統領を「老いぼれ」と評するなど、レッテル貼りや罵詈雑言を得意としてきた。しかし、今こそその本領を発揮すべき時であるにもかかわらず沈黙を守っているのは、正直、北朝鮮らしくない。
トランプ大統領は金正恩とは相性が良いと口癖のように語っている。おそらく、自己中心的で自信過剰な点が似ているのだろう。
トランプ大統領は、自身の見識が誰よりも優れていると信じている。そのため発言は断定的で楽観的だ。第三者には大ぼらに聞こえることもあるが、本人はいたって真剣である。実際、金総書記との首脳会談は大統領選挙期間中に「核問題解決のため金正恩と会談する」と述べたとおり実現した。
自己中心的で自信過剰という点では金総書記も負けていない。2018年の新年辞でトランプ大統領に向かって、「米国は決して私と我が国を相手に戦争を起こせない。米本土全域が我々の核打撃射程圏内にあり、核ボタンが私の執務室の机の上に常にある」と述べ、強気の姿勢を示した。その後、国連安保理から度重なる経済制裁を受けながらも、米本土に届く大陸間弾道ミサイルを「火星17」から「火星20」まで開発している。
「金持ち喧嘩せず」という言葉があるが、似た者同士、争わないのかもしれない。