2026年4月21日(火)
米国の次期駐韓米大使は北朝鮮に強硬な「脱北者2世」 揺らぐ米韓関係
駐韓米大使に任命されたミシェル・スティール元共和党下院議員(「JPニュース」から)
順風満帆だった米韓関係に隙間風が吹いている。
事の発端は韓国がトランプ大統領の再三の要請にもかかわらず米国のイラン攻撃を支持せず、軍艦派遣などの協力を拒否したことにある。加えて、李在明(イ・ジェミョン)大統領が米軍と共に戦っているイスラエルのレバノン爆撃を「絶え間ない反人権的・反国際法的行為」と断じ、「失望している」と批判したことも米国の怒りを買ったようだ。
李在明政権はイラン攻撃への協力を拒否したことへのトランプ政権の「報復措置」を危惧していたが、トランプ政権は鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官が3月6日の国会外交統一委員会で、北朝鮮のウラン濃縮施設の場所として北西部の寧辺と平壌近郊の降仙の他にもう一か所、北西部の亀城を挙げたことを理由に今月初めから韓国との情報共有を制限する措置を取った。米国は衛星や傍受、偵察などで得た北朝鮮の軍事動向に関する情報を韓国に提供しているが、米国は鄭長官の一方的な公表を「機密漏洩」とみなしたようだ。
トランプ政権の李在寅政権への「懲罰」はこれに留まらず、4月13日には駐韓米国大使に元カリフォルニア州連邦下院議員の在米韓国人、ミシェル・スティール(韓国名:朴ウンジュ)氏を任命した。
韓国系女性としては史上2人目(ソン・キム大使に続く)の駐韓大使だが、両親は北朝鮮から脱出した離散民(北朝鮮出身の難民)。脱北者である。彼女は「両親は社会主義のためにすべてを失ったが、アメリカで機会を得て新しい人生を築いた」が口癖の、まさにアメリカンドリームの申し子でもある。
ミシェル・スティール元議員は極右的な反北・反中の立場を強く表明してきた政治家で、共和党内の親イスラエル強硬派から全面的な支持を受けているネオコンとして知られている。
また、両親の脱北経験から「北朝鮮の人権」を最重要政策とみなし、2021年5月に文在寅(ムン・ジェイン)大統領(当時)が訪米した際には家族とともに1975年に米国に移民したカリフォルニア州出身の共和党のヤング・キム議員と共に「金正恩(キム・ジョンウン)政権に誤った判断を与えかねない」として北朝鮮との関係を重視する文大統領の言動に釘を刺していた。
今年71歳になるミシェル・スティール元議員は議員時代に「金正恩政権は信頼できない」として対話や交渉に原則的に反対の立場を貫き、文在寅政権が主導していた朝鮮戦争終戦宣言などにも公然と反対し、また台湾有事に韓国の軍事支援を強く主張してきた人物として知られている。
この指名について韓国国内では極右、保守勢力はトランプ大統領から「大韓民国への贈り物」と歓迎しており、進歩的な李政権の発足で肩身の狭い思いをしていた脱北団体もこぞって歓迎している。
米国大使館前での「ミシェル・スティール駐韓米大使指名反対」集会(「JPニュースから)
これに対して進歩勢力は反発しており、昨日(20日)も「自主統一平和連帯」「全国民衆行動」「トランプ脅威阻止共同行動」などの団体が参加し、ソウル・光化門の米国大使館前で「ミシェル・スティール駐韓米大使指名の撤回」を求める記者会見を開いていた。
参加者たちはミシェル・スティール元議員について「北朝鮮との対話と交渉に原則的に反対している」「終戦宣言などにも公然と反対している」「韓国の台湾関連の軍事支援を強く主張している」「李承晩独裁を美化するドキュメンタリー『建国戦争』を支援している」「尹錫悦支持勢力の不正選挙主張に同調する人物である」と叫び、「朝鮮半島を対立の戦場に変え、トランプ式収奪政策の先頭に立つミシェル・スティールの駐韓米大使指名を撤回せよ!」との声明文を読み上げていた。声明文には李大統領に対して「アグレマン付与を拒否すべき」と申し入れていた。
この記者会見の直前には同じく米大使館前で労働者階級政党建設推進委員会など6団体の共同主催による米国とイスラエルによるイラン攻撃の即時中止と政府の自主外交を求める記者会見が開かれ、ここでも参加者たちは声明文を発表し、トランプ政権と李政権に対して▲米国は直ちに終戦を宣言し、イランに対するすべての制裁と封鎖措置を中止する▲米国とイスラエルは平和破壊・民衆虐殺・民生破綻をもたらす侵略戦争を中止する▲李在明政権は米国への従属同盟から脱し、堂々と自主外交に乗り出すことなど7項目の要求を突き付けていた。
外交は相互主義である。李政権が駐米大使に任命した文在寅政権当時の外相だった康京和(カン・ギョンファ)氏は李政権発足から半年も経たない昨年10月にはワシントンに就任している。
米国の駐韓大使はゴールドバーグ前大使の離任後、1年4か月にわたって空席が続いている。米韓同盟関係の維持は保守、進歩に関わらず韓国の安全保障の核なので次期大使がネオコンであっても李政権はアグレマンを出さざるを得ないであろう。