2026年4月24日(金)

 軍事的緊張を引き起こすため無人機を北朝鮮に侵入させた容疑で尹錫悦前大統領に懲役30年を求刑

北朝鮮に侵入し、墜落した韓国の無人機(朝鮮中央テレビ)

 非常戒厳宣布の名分を作るため北朝鮮の挑発を誘導する目的で無人機作戦を実行したとされる「一般利敵」の容疑で起訴された尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領に対し、特別検察チームは本日(24日)、ソウル中央地裁の結審公判で懲役30年を求刑した。また、共謀の金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防部長官には懲役25年を求刑した。

 尹前大統領と金前国防長官は内乱容疑では死刑と無期懲役を求刑されていたが、2月19日に行われた一審ではそれぞれ無期懲役、懲役30年に減刑されていた(二人とも判決を不服として控訴している)

 尹錫悦政権は2024年12月3日に非常戒厳令を発令する2か月前、3度にわたり無人機を平壌に飛ばしていたことは、北朝鮮外務省が「韓国が10月3日、9日、10日の計3回、無人機を平壌上空に侵入させ、中心区域である中区域に反北宣伝ビラを散布した」とする内容の「重大声明」を発表したことで明るみに出た。

 当時、韓国国防省および合同参謀本部は「そのような事実はない」と否定していたが、当時野党だった「共に民主党」の朴範界(パク・ボムゲ)議員が約2か月後の12月7日、「金龍顕国防長官(当時)の指示を受け、防諜司令部を通じて実行された」とする軍内部の情報を明らかにした。

 翌2025年1月28日には同党の「尹錫悦内乱真相調査団」の団長である秋美愛(チュ・ミエ)議員が「尹前大統領が非常戒厳令の名分を確保するため北朝鮮に無人機を送り、南北の緊張を誘導しようとした」とする調査結果を発表した。

 今年に入り、国防部の軍事懲戒委員会は、尹前大統領、金前国防長官、ならびに防諜司令部の呂寅兄(ヨ・インヒョン)前司令官(当時)らが共謀し、「平壌無人機浸透作戦」を計画していた事実を突き止めた。3人は同じ高校(沖岩高)の出身である。

 同委員会の調査によると、防諜司令部は2024年10月3日午前2時、北方限界線(NLL)上のペクリョン島から無人機2機を飛ばしたのを皮切りに、同年年11月19日までに延べ18機を北朝鮮の平壌、元山、開城、南浦などに投入し、対北宣伝攪乱ビラを散布した。飛行回数は北朝鮮発表の3回ではなく、18回に上った。なお、ペクリョン島から北朝鮮の黄海道までは約17kmしか離れていない。

 「平壌無人機浸透作戦」は、指揮系統に関わるごく少数の者のみで共有され、前線部隊や駐韓米軍、国連軍司令部にも通知されず、極秘裏に実行された。作戦にはドローン司令部傘下の第101、第103、第105ドローン大隊に所属する将兵59人が投入された。これらの部隊はペクリョン島や北朝鮮と接している京畿道漣川、江原道高城など西部・中部・東部の最前線に配置されている。

 金前国防長官と呂前防諜司令官はこの目的のために金正恩(キム・ジョンウン)総書記の面子を傷つけ、住民の離反を誘うための対北宣伝ビラを制作し、無人機で北朝鮮の主要地域、特に平壌に散布して心理戦を展開した。

 尹前大統領は、無人機が労働党庁舎上空から金総書記を批判するビラを散布すれば、北朝鮮が対抗措置として無人機を飛ばすか、あるいはNLL付近の島に砲撃を行うとのシナリオを描いていた。

 被告人らが無人機だけでなく、武装ヘリコプターを軍事境界線や北方限界線ぎりぎりまで飛行させ、北朝鮮の挑発を誘導しようとしていたことも明らかになっている。飛行は夜間ではなく日中に行われ、北朝鮮の軍基地からわずか2〜3kmの距離を飛行していた。このため、作戦に参加した操縦士は「真下に北朝鮮の漁船が肉眼で見えるほどだった」と証言している。

 実際、この日のために韓国合同参謀本部はすでに2024年1月の時点で、北朝鮮が挑発した場合に事実上の全面戦争に発展することを想定した作戦計画を策定していた。北朝鮮の前方軍団(第1・第2・第4・第5軍団)を攻撃対象とする「敵前方軍団合同打撃計画」であった。

 上空からビラを撒かれ、扱き下ろされたことに金総書記が怒り狂ってかつてのように砲弾で反撃すれば、待ってましたとばかり、韓国が迎え撃つことになっていた。

 ソウル中央地裁の結審公判で特別検察チームは「国民の生命と安全を守る責任を負う国軍統帥権者や国防部長官、防諜司令官が、非常戒厳を手段として政治的反対勢力を排除し、権力を独占・維持するために朝鮮半島で戦時状況を作り出そうとした反国家・反国民的犯罪だ」と指摘した。

 なお、尹前大統領は来週29日、逮捕妨害などの容疑に関する裁判の2審判決を控えている。この件について特別検察チームは結審公判で懲役10年を求刑しており、1審では懲役5年が言い渡されていた。