2026年4月25日(土)

 韓国で飛び交う高市首相の「5月訪韓説」 李大統領の故郷を訪問?

今年1月に奈良を訪問した李在明大統領とドラムで歓迎した高市早苗首相(出展:青瓦台)

 高市早苗首相と李在明(イ・ジェミョン)大統領による日韓首脳会談が、5月に李大統領の故郷でもある慶尚北道・安東で開催されるとの情報が飛び交っている。

 安東での会談は、李大統領が今年1月に訪日し、高市首相の地元・奈良で会談した際、返礼として「次回は私の故郷にお招きしたい」と自ら招請したことによるものだ。

 安東は「韓国精神文化の首都」と呼ばれるほど、朝鮮時代から続く儒教・両班文化の中心地である。

 李大統領は年初の国務会議や新年記者会見の場で、安東での日韓首脳会談に意欲を示していたが、日程も含め日本からはまだ正式な回答は届いていないとも言われている。

 しかし、奈良を訪問した際に世界遺産の法隆寺を訪問した李大統領の指示に従い、すでに外務省儀典担当官室が会談場所として候補に挙がっているユネスコ世界文化遺産の河回(ハフェ)村や屏山書院などを視察していることから、高市首相の安東訪問は韓国では既成事実として受け止められているようだ。

 河回村は1999年4月、エリザベス2世英国女王が訪韓した際、訪れたことで世界の注目を集めた。エリザベス女王は当時、河回村を訪れただけでなく、別神クッ仮面劇(国家無形遺産)も観覧した。こうしたことから高市首相が訪れれば、今回も同仮面劇の事前観覧などが日程に含まれるものとみられる。

 人口減少と消費委縮により活気を失っている安東で仮に日韓首脳会談が開催されれば、再び世界に知られ、同地の多様な食や観光資源が注目されるとして地元では歓迎ムードが広がっている。

 しかし、総じて慶尚北道の対日感情は決して良好とはいえない。領土問題がネックとなっているからだ。日韓の間では「竹島(韓国名:独島)の領土問題が長年、対立の火種になっているが、竹島が島根県に帰属しているならば、独島は慶尚北道に帰属している。

 従って、日本が外交青書で「竹島は我が国固有の領土」と主張するたびに、慶尚北道の議会は声明を出して反発している。

 今年も4月10日、高市政権が2026年版外交青書で「独島を日本固有の領土」と主張したことに対し、慶尚北道側は反発し、道知事権限代行を務める黄明錫(ファン・ミョンソク)行政副知事名で声明を出し、即時撤回を求めていた。

 今月に入り、日本政府が武器輸出規制を大幅に緩和したことも悪材料となっている。韓国メディアは、殺傷兵器の輸出許可を戦後日本が維持してきた武器輸出抑制政策の大転換と位置付け、「日本が戦争可能な国家に転換している」と挙って報じている。

 また、高市首相が靖国神社に「内閣総理大臣 高市早苗」名義で「真榊」と呼ばれる供物を奉納したことも韓国人の感情を害している。

 韓国外交部は21日、「日本の過去の侵略戦争を美化し、戦争犯罪者を合祀した靖国神社に、日本の責任ある指導者らが再び供物を奉納したり参拝を繰り返したりしたことに深い失望と遺憾の意を表する」とする報道官論評を出したばかりだ。

 加えて、タイミングが悪いことに、6月3日には韓国で地方自治体選挙が行われる。

 慶尚北道は保守の牙城である。道知事も安東市長も最大保守野党「国民の力」所属だ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)前政権下の2024年4月に行われた国会議員選挙では、同道(25議席)で李政権の与党「共に民主党」は1議席も獲得できず、完敗した。

 昨年6月に実施された大統領選挙では、李大統領は地元安東市では「国民の力」の対立候補に8.3ポイント差で勝利したが、2022年の大統領選挙では尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領に0.7ポイント差で惜敗していた。

 安東市長選では再選を狙う「国民の力」の現職、権奇萬(クォン・ギマン)市長と「共に民主党」の公認候補、李サムゴル元行政安全部次官との一騎打ちが予想されているが、李大統領としては日韓首脳会談の安東誘致を追い風にして3度目の挑戦となる李候補の勝利を導くだけでなく、赤色(国民の力」のシンボルマーク)一色の慶尚北道を「共に民主党」のカラーであるブルーに一変させたいところである。

 高市首相の安東訪問は李大統領の奈良訪問とは比べ物にならないぐらい政治的な色彩を帯びている。