2026年4月28日(火)
金正恩政権下での「処刑・死刑執行は136件 公開処刑は94件」 人権調査団体の報告書
韓国に2016年4月に集団脱北した中国出稼ぎ北朝鮮女性従業員(出所:韓国統一院)
朝鮮半島の最新情報を速報する「KOREA WAVE」は今朝、北朝鮮からの脱出(脱北)を題材にした韓国とデンマークの合作映画について、ロシア当局が国内上映を公開1週間前に突然、不許可としたとの情報を伝えた。
折しも、昨日まで北朝鮮では、人民軍特殊部隊のロシア派兵を記念した「海外軍事作戦戦闘偉勲記念館」の完工式が開かれ、金正恩(キム・ジョンウン)総書記は来賓のロシアのウォロジン下院議長、ベロウソフ国防相らを前にロシアを「兄弟国」と呼び、露朝連帯を強調していた。
プーチン大統領も祝電を送り、「この記念館は疑う余地もなく両国人民の友情と団結の象徴となる」と強調したうえで、北朝鮮との包括的戦略パートナーシップを引き続き強化していくことを誓った。
北朝鮮を脱出した女性が韓国で生きる道を探る過程を赤裸々に描いた映画「北朝鮮を離れて(ハナコリア)」は、デンマーク出身の監督が演出を担った映画は今月30日に公開予定だったが、ロシア文化省は23日、突然、配給証の発給を拒否したという。
人の心理は隠されるほど知りたくなり、見たくなるものだ。ロシアで上映が中止となれば、その反動で今後、ロシアに批判的な国々で上映の動きが出てくるだろう。というのも、北朝鮮の人権状況の告発は今に始まったことではないからだ。実際、昨日も「転換期正義ワーキンググループ(TJWG)」という北朝鮮の人権調査団体が報告書を公表した。
「コロナ19パンデミック前後の北朝鮮における処刑マッピング:金正恩政権下13年間の死刑」と題する衝撃的な報告書には、金正恩統治期間(2011年12月17日?2024年12月16日)の処刑・死刑宣告144件の分析結果が記されている。
韓国に脱北した256人の証言と北朝鮮専門メディア5社の報道を基にしたデーターだが、このうち実際に死刑が執行されたのは136件で、そのうち公開処刑は94件で、全体の72.8%を占めた。執行方法は銃殺が96.4%と大半を占めたが、鈍器を用いた処刑も2件確認されたという。また、「コロナ」封鎖前は処刑・死刑宣告が30件だったのに対し、封鎖後は倍以上の65件に増えている。
報告書で特に注目されるのは、封鎖後に韓国の「?文化」(映画・ドラマ・音楽など)との接触が主な理由で処刑された特異なケースである。
北朝鮮は6年前に「反動思想文化排撃法」や「平壌文化語保護法」などの統制法令を制定し、西側の情報、とりわけ韓国の放送や録画物の視聴・流布に対する処罰を強化している。韓国の歌を聴いたりドラマを密かに視聴したことを理由に、未成年者が処刑されたケースもあったと伝えられている。
韓国では、脱北者が運営するユーチューブや北朝鮮に批判的なテレビ媒体が、脱北者を頻繁に登場させて政治犯収容所の実態などを含め北朝鮮の抑圧状況を連日伝えている。こうした状況もあり、北朝鮮に融和的な李在明(イ・ジェミョン)政権も、人権問題を普遍的な課題と捉え、先月の国連人権理事会における北朝鮮人権決議案に共同提案国として名を連ねた。
韓国は保守の李明博(イ・ミョンパク)政権下の2008年から国連人権理事会及び国連総会の北朝鮮人権決議に共同提案国として参加していたが、進歩派の文在寅(ムン・ジェイン)政権下の2019年から2022年までは北朝鮮に対する配慮から参加を見送っていた。
しかし、北朝鮮に強硬姿勢を取る尹錫悦(ユン・ソクヨル)前政権下の2023年から復帰したことから進歩派と称されている李在明政権の対応が注目されていた。
南北対話の復活と関係改善のため、李政権は@北朝鮮の体制を尊重するA北朝鮮を吸収しないB敵対的な行動は一切取らない――との対北融和政策を打ち出しているが、昨年11月の国連総会での決議採択時にも共同提案国として参加していた。
北朝鮮は、脱北者問題を取り上げることは敵視政策の表れであり内政干渉だと反発している。しかし、韓国は朝鮮半島の当事者であり、北朝鮮に最も利害関係を有する立場として沈黙を守るわけにはいかない事情がある。
脱北者を生み出している側に問題があるのは明らかだ。衣食住と基本的人権が保障されない限り、脱北者が後を絶つことはない。同時に脱北が続く限り、韓国を含む国際社会による北朝鮮への監視と告発もなくならない。北朝鮮はそのことに気づくべきだ。