2026年8月12日(水)
ゼレンスキー大統領が「北の脅威」を強調し、軍事支援を何度要請しても韓国は動かず!
北朝鮮のミサイル部隊(朝鮮中央通信)
ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、ロシア軍が夜間、ウクライナ南東部の都市ザポリージャに北朝鮮製ミサイルを発射し、6人が死亡、19人が負傷したと明らかにした。
ゼレンスキー大統領がおよそこの1か月間で北朝鮮に言及するのはこれで4度目だ。先月(7月)25日には「ロシアが北朝鮮に3万人の派遣を求めている」と発言。続いて今月(8月)8日には「北朝鮮から3万〜5万人の兵士派遣が決まった」と述べ、さらに10日にも国民に向けた演説で、「北朝鮮からの支援なしにはロシアは戦争を遂行できない状況に陥っている」とした上で、「ロシアが自国領内に北朝鮮部隊をさらに配備するための準備を進めている」と語っていた。
国民向け演説では、北朝鮮のミサイルや兵士が投入されるにつれて改良も進むことから、日本や韓国に加え「フィリピンなど周辺の国々に対する脅威も増大する」と付け加えていた。そして今回の発言だ。
ゼレンスキー大統領の「北朝鮮憎し」の感情は想像を絶するものがある。恨み、つらみは半端ではない。何よりも、一昨年8月にロシア領に越境し、最大で約1,376平方キロメートルを制圧していたクルスク州を、北朝鮮の参戦によって奪還されてしまったことが大きい。これによりロシアが占領したウクライナ領との交換を軸とする「和平交渉構想」も頓挫してしまった。
今回もまた、ドローンを巧みに駆使したウクライナ軍の反転攻勢によってロシア軍が劣勢に立ち、プーチン政権が苦境に立たされているタイミングで、前回の派遣規模を2倍以上も上回る兵士だけでなく、ミサイルや発射台、さらにそれらを運用するミサイル部隊まで送り込んでくるわけだから、頭に血が上ってもおかしくはない。
今回の死傷者が、派遣された北朝鮮のミサイル部隊が発射したミサイルによるものなのか、ロシア軍が使用したミサイルによるものなのかは定かではない。しかし、北朝鮮製のミサイルが使用され、民間人に犠牲者が出たことには変わりはない。
追加派兵説についてはその情報源が明らかにされておらず、詳細は不明だ。ただ、規模は別にしても、派兵についてはこれまでゼレンスキー大統領の予告がすべて的中していたことから、今回の増派も事実である可能性は高い。
しかし、あえて北朝鮮を特定し、脅威を強調していることを見ると北朝鮮の脅威にさらされている韓国や日本、また北朝鮮の脅威を憂慮している米国、豪州あるいはNATO諸国から、ウクライナへのさらなる支援を引き出そうとする意図が見え隠れしていることも、また紛れもない事実である。しかし、李在明(イ・ジェミョン)政権は現在も、ウクライナに対する殺傷兵器の直接支援は難しいとの立場を示している。
韓国外務省の当局者は、ゼレンスキー大統領による防空システムの支援要請について、「各国への防衛産業物資の提供は関連する国内法と政策を順守する中で行われてきた」と述べ、「今後もウクライナの平和回復と復興に向けた方策を検討していく」と説明した。これは、韓国政府が引き続き人道支援を基本方針とし、軍事支援は行わないことを改めて確認したものとみられる。
ウクライナ戦で使用されている北朝鮮製ミサイル「KN−23」と「KN−24」は、ウクライナ情報当局の発表によると、精度が増しており、誤差が1キロから1〜3メートルに短縮されているという。
ロシア製の「イスカンデル」よりも2メートル長いとされる「KN−23」は、放物線軌跡を描く一般的な弾道ミサイルとは異なり、マッハ6.9で低空飛行した後、目標地点で急上昇して目標物に突き刺さる技術が適用されているため、パトリオットやTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)でも迎撃が困難とされている。
また、米国製「ATACMS」と類似し、イスカンデルより若干小さい「KN−24」は、射程300キロ、速度はマッハ3とされ、数百発の子爆弾を搭載できるとされる。サッカー競技場3〜4面分に相当する範囲を焦土化できる。
北朝鮮は今年6月24日、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の立ち会いの下、敵の飛行場、港湾、電力施設をはじめとする重要標的の致命的な破壊を目的とした戦術弾道ミサイルの弾頭威力試験を行ったばかりである。そのほか、更新された240ミリ24連装ロケット砲システムの戦闘的特性や、155ミリ自走平曲射砲の射程延長弾の命中率向上に関する実験なども行っている。
ウクライナ国防省情報総局の分析では、北朝鮮がロシアに送り込むミサイル部隊の第1陣は約90人、ミサイルの数は120発、発射台は6基とされ、ロシア南部ボロネジ州の第112ミサイル旅団に配置される計画だという。ボロネジ州はウクライナ東部のルハンシク州と国境を接していることから激戦地となっているロシア軍はハルキウ州を制圧し、ルハンシク州の完全占領を目指すものとみられる。
ハルキウ州などはロシア軍の攻撃対象となっているものの、国際的にはウクライナ領であり、北朝鮮がミサイルでここを攻撃する、あるいは部隊を送り込んで攻め入ることは、侵犯、主権侵害に当たり、一方が攻撃された場合の防衛に限定している「露朝包括的戦略的パートナーシップ条約」にも反する可能性がある。それだけに、北朝鮮の今後の動向が注目される。
(参考資料:北朝鮮に対抗し日本と韓国をウクライナ戦争に引き込みたいゼレンスキー大統領)