2026年8月19日(水)
「トランプの真夏の夢」 慶州がダメならば深センで「金正恩に会いたい」!
2018年6月シンガポールで行われた米朝首脳会談(朝鮮中央通信から)
真夏の夢ではないが、トランプ大統領がまた、金正恩(キム・ジョンウン)総書記との会談の夢を見ている。
米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」(WSJ)は18日(現地時間)、トランプ大統領が側近らに対し、早ければ今秋にも金正恩総書記との首脳会談を進めるよう促したと報じた。
どうやらトランプ大統領は、来る11月に中国・深センで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を、対話の機会として活用したい考えのようだ。
トランプ大統領は昨年も、確か10月に韓国・慶州で開催されたAPEC首脳会議に出席するため訪韓した際、「金総書記に会えるのであれば、30日の帰国予定を1日延ばしてもよい」と述べるほど、金総書記との再会を待望していた。しかし、待てど暮らせど北朝鮮側から色よい返事はなく、「また来る」と言い残して帰国の途についた。
慶州がだめならば、今度は深センということのようだが、北朝鮮を対話の場に引っ張り出すのは容易ではない。
慶州の時は、金総書記と会えるならば「ハノイ会談で求めていた制裁についても協議することができる」と、制裁解除をちらつかせていた。
北朝鮮が反応をしなかったことら前回の教訓を生かし、今回は北朝鮮に対して米韓合同軍事演習の縮小というニンジンをぶら下げた。
トランプ大統領の支持を受け、当初8月18日から27日まで予定されていた米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダム・シールド(UFS)」は、予定を早め、21日には終了する。24日から27日まで予定されていた第2部の演習は実施しないことになった。第1部の演習も防御訓練のみを実施し、北朝鮮が反発している反撃訓練は中止、実動訓練も縮小される。米側の要請で縮小するのは、極めて異例のことである。
ワシントンから漏れ伝わってくる話では、トランプ大統領は来月訪米する習近平主席に、米朝首脳会談の仲介を要請するようだ。その中国からは共産党中央外事工作委員会弁公室主任兼外交部長が今日(19日)訪韓し、20日までソウルに滞在する。滞在中には李在明(イ・ジェミョン)大統領との会談も予定されている。
米朝首脳会談の「ペースメーカー」を公言している李大統領は、トランプ大統領の対北アプローチを歓迎している。
韓国のチョ・ヒョン(趙顕)外交部長官は今日、国会で「これほどまでにラブコール(接近・対話を求めるメッセージ)が発せられたので、金総書記が望めば、どのような形であれ(会談が)実現するだろう」と述べ、「韓国政府の立場としては、それは非常に望ましいことだ」と語った。
李政権は、米国を含む3者、もしくは中国を交えた4者による首脳会談での朝鮮戦争の終結宣言と平和条約の締結を望んでいる。
戦争終結宣言と平和条約については北朝鮮も中国も異論のないところだ。トランプ大統領も昨年、慶州で「私は朝鮮半島の南北が公式には戦争状態にあることを知っている。すべてを正すため我々が何をすべきかを考えてみなければならない」と語り、第1次政権下で合意に達しなかった戦争終結宣言や平和協定の締結を念頭に置いた発言を行っていた。
こうした流れから、中国での首脳会談開催が有力視されるが、北朝鮮はAPECの加盟国ではない。従って、中国に出向く大義名分がない。もちろん、昨年、韓国が慶州APEC首脳会議に非加盟国のアラブ首長国連邦(UAE)を招待したように、北朝鮮をオブザーバーとして招請することは可能だが、北朝鮮はそれでのこのこと出ていく国ではない。まして会談場所が北京ならば、北朝鮮が中国の保護下にあるかのような印象を与えかねず、金総書記のプライドがそれを許さないであろう。
会談場所について言うならば、平壌、もしくは北朝鮮が観光や外資誘致に力を入れている東海岸のリゾート地・元山しか考えられない。共和党のニクソン大統領が1972年2月、ベトナム戦争の最中、敵対国だった中国を電撃訪問したように、トランプ大統領が北朝鮮を訪問するのであれば、北朝鮮が拒む理由はないだろう。金総書記が「私は今も個人的にはトランプ大統領に良い思い出を持っている」と語っているからだ。
ただし、それにはお土産が必要だ。
金総書記は「米国が非現実的な非核化への執着を捨て、現実を認めた上で真の平和共存を望むのであれば、我々にも米国と対話できない理由はない」と再三、述べている。何よりも米国が北朝鮮の非核化方針を転換し、北朝鮮の核保有を当面認めることが最低限の条件となる。
イランで失敗したトランプ大統領が、そこまで譲歩、あるいはへりくだって訪朝しても、中間選挙にはプラスにならないことから現実的にトランプ大統領の訪朝による首脳会談も困難であろう。
一度あることは二度あるというが、またしてもトランプ大統領の「真夏の夢」で終わりそうだ。