2026年8月20日(木)
嘘をついているのはゼレンスキー大統領か、それとも金与正部長か 北朝鮮が追加派兵を否定
金与正部長(朝鮮中央テレビ)
金正恩(キム・ジョンウン)総書記の代理人でもあり、対外スポークスマンでもある妹の金与正(キム・ヨジョン)党部長は昨日(19日)発表した直近の国際問題に関する談話の中で、ウクライナのゼレンスキー大統領が国際社会に訴えている3万〜5万人規模の北朝鮮の追加派兵について「全く事実無根のキエフの自作自演劇である」と全面否定していた。
そのうえで、露朝間の「諸般の協力は、国連憲章の目的と原則に合致する双方間の包括的戦略パートナーシップ条約に徹底的に準じており、主権的権利行使の合法的領域である」と述べ、「国家の主権と安全利益、領土保全を守るためのロシア政府と人民の正義の行動を全面的に支持、声援する」と付け加えていた。
「諸般の協力」が何かについて触れてなかったが、武器の支援は言うに及ばす、当然人員の派遣も含まれているものとみられる。仮にそれが兵士ではなく、復興に携わる建設労働者であったとしても建設労働者を装った兵士の可能性が高いものとみられる。トンカチ、ハンマ、シャベルを小銃やライフル銃に持ち替えれば紛れもない兵士である。
北朝鮮の追加派兵についてゼレンスキー大統領が公言したのは、何も一度や二度ではない。先月(7月)25日に初めて「ロシアが北朝鮮に3万人の派遣を求めている」と発言して以来、この1か月近くの間に何度も触れている。今月10日には国民に向けた演説で、「北朝鮮が3万〜5万人の兵士をロシアに派遣することが決まった」と、沈痛な表情で国際社会に訴えていた。
ウクライナ国防省情報総局の分析を基に、ゼレンスキー大統領はすでに一部は南西部のボロネジ地域に配備され、北朝鮮製ミサイル「KN−23」と「KN−24」が持ち込まれていることも明らかにした。
一体、ゼレンスキー大統領と金与正部長のどちらが正しいのだろうか? 答えは明白だ。嘘をついているのは金与正部長のほうだ。
その理由は、過去の言動が証明している。
第一に、ウクライナ派兵についてこれまでも嘘をついていたことだ。
ゼレンスキー大統領が2024年10月17日に「北朝鮮が1万人の派兵を準備している」と発表した時、北朝鮮国連代表部は4日後の10月21日に談話を出し、「主権国家間の合法的かつ友好的な協力関係を損ない、わが国のイメージを汚そうとする根拠のない見え透いた噂について言及する必要性を感じない」と否定していた。北朝鮮国連代表部は、厚かましくも4日後の25日にも国連総会第1委員会の場で「根拠のないうわさにすぎない」として否定していた。
しかし、北朝鮮は派兵に踏み切っていた。金総書記は2025年5月9日、ロシアの対独戦争勝利80周年の日に駐朝ロシア大使館を訪れ、「私は兄弟国のロシアの主権と安全を乱暴に侵奪した敵対勢力の冒険的な軍事的妄動を我が国家に対する侵攻とみなし、共和国武力戦闘区分隊にロシア武力と共にウクライナのネオナチ占領者を撃滅し、クルスク地域を解放するという命令を下した」と、ロシアへの派兵を認めた。
金総書記は2024年8月28日、朴正天(パク・ジョンチョン)党軍事委員会副委員長(当時)、金正植(キム・ジョンシク)党軍需工業部第1副部長、それにクルスク派兵を指揮した軍総参謀部偵察総局長の李昌虎(リ・チャンホ)中将ら6人の軍幹部との会議で、朝鮮人民軍特殊作戦部隊をクルスク州解放作戦に参戦させることを決定していたのである。
金総書記自らが2024年10月22日に特殊作戦部隊に直接攻撃命令を出した文書も併せて公開された。国連代表部が「事実無根」と言い張っていた時にはすでに派遣されていたのである。
北朝鮮がなぜ認めたのかと言うと、北朝鮮兵士がロシア領クルスク州に配属されてから2か月が経った2025年1月初旬に兵士2人がクルスク州での戦闘中に生け捕りにされ、自供したからである。
ゼレンスキー大統領はこの年の1月11日、自身のテレグラムで、北朝鮮兵士2人を生け捕りにし、首都キーウに護送していることを明らかにし、ウクライナ情報当局(SBU)に対して「世界にこの状況を知らせるべきだ」と、ウクライナで取材中の各国メディアに北朝鮮軍捕虜を取材させるよう指示を出していた。
1983年にミャンマー訪問中の全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領の暗殺を狙った「ラングーン爆弾テロ事件)も、ソウル五輪を潰すため仕組んだ1988年の「大韓航空機爆破事件」も北朝鮮は今でも「韓国の自作自演」「でっち上げ」と白を切っているが、下手人が捕まったことにより北朝鮮の犯行が明かにされている。
当時、ゼレンスキー大統領は「証拠」あるいは「証人」となる北朝鮮の兵士を生け捕りにするのは「簡単ではない」ともつづっていた。その理由について、「北朝鮮兵士が自爆を強要されている」ことや、ロシア軍と北朝鮮軍が「負傷した兵士を殺害しているからだ」と説明していた。
追加派兵された北朝鮮兵士が生け捕りにされない限り、北朝鮮は今後も追加派兵については知らぬ存ぜぬを貫くつもりのようだ。
なお、金与正氏の談話は対外向けの「朝鮮中央通信」で伝えられ、人民が目にする「労働新聞」には掲載されていない。国民には白々しい嘘を知らせたくないのであろう。