2026年8月29日(土)

 今度は北朝鮮に「千載一遇のチャンス」  トランプの熱愛に金正恩は応えるのか!?

トランプ大統領と金正恩総書記(労働新聞とホワイトハウスから筆者キャプチャー)

 トランプ大統領の金正恩(キム・ジョンウン)総書記へのラブコールが続いている。

 昨年1月に大統領に就任して以来、「金正恩とは良い関係だ」「私は彼が好きだし、彼も私のことが好きだ」と、何度も秋波を送っている。

(参考資料:トランプ大統領の「金正恩に会いたい」の狙いはノーベル平和賞と北朝鮮のレアアース?)

 特に、この1か月間のラブコールは異常なほどだ。何度も「会いたい」とのメッセージを発信し、また、金総書記の関心を引くため米韓合同軍事演習の縮小という「お中元」まで送っていた。

 金総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)部長が5日後に談話を発表し、「我が国家元首(兄)が貴方対して個人的に良い追憶と感情を持っており、二人の関係は依然として立派である」と伝えると、気を良くしたのか、8年前のシンガポールでの金総書記との「お見合い」(首脳会談)写真を引っ張り出し、そのうちお気に入りの3枚を自身のSNSに掲載し、首脳会談を懐かしんでいたようだ。

 トランプ大統領は何としてでももう一回、米朝首脳会談をやりたいようだ。そのことは昨年は強行していた米韓合同軍事演習「フリーダム・シールド」を縮小したことからも窺い知ることができる。

 第1期トランプ政権でホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)の首席補佐官を務め、第2期トランプ政権の政権移行チームでも活動していたトランプ米大統領の側近、フレッド・フライツ米国第一政策研究所(AFPI)副所長はトランプ氏が大統領に就任した昨年1月、個人的な見解だと断ったうえで、「北朝鮮と誠意ある交渉を行える可能性があるのであれば、軍事演習を一時的に中止することは害にはならないと思う」と述べ、トランプ大統領が米朝首脳会談を実現するため軍事演習の中止を考えていることを示唆していた。実際に、トランプ大統領は今年、フライツ氏の「予告」どおり、そのカードを切ったことになる。

 フライツ氏と同様に、トランプ第1次政権時にNSCの北朝鮮担当局長を務めていた、親トランプ派のシンクタンク、米国第一政策研究所のアンソニー・ルジエロ副局長が8月27日(米現地時間)、米議会専門メディア「ザ・ヒル」に投稿し、米朝首脳会談が再開されれば「トランプ大統領は朝鮮戦争を正式に終結させる平和条約、政治・経済関係の改善、米韓合同軍事演習の恒久的な中止を提案する可能性がある」との見方を示していた。

 また、「トランプ大統領が北朝鮮、あるいは中立地帯を訪問し、金正恩と合意文書に署名する可能性もある」とし、「これはトランプ大統領にとって、メディアから大きな注目を集める劇的な場面になるだろう」と予測していた。

 ルジエロ元局長は、米国は見返りとして「北朝鮮の長距離弾道ミサイル(ICBM)と核兵器開発計画について検証可能な制限を要求すべきだ」と提言し、「ウクライナとの戦争を続けているロシアから北朝鮮兵士を撤退させ、軍事支援を停止することも合意内容に含めるべきだ」と進言していた。

 ロシアへの軍事支援を停止すること以外は米国の要求は呑めないはずはない。まさに、北朝鮮にとっては、千載一遇のチャンスが訪れたのではないだろうか。

 ハノイ会談でスモール合意(寧辺核施設の永久破棄と経済制裁の一部解除)がまとまらず、決裂した際、会談に同席していた崔善姫(チェ・ソンヒ)外相は、「米国は千載一遇の機会を逃した。二度とこのチャンスは訪れないだろう」と、捨て台詞を吐いていた。

 しかし、金総書記もまた、トランプ大統領を相手にこの千載一遇の機会を逃せば、二度とそのチャンスは訪れないかもしれない。そのことは、米国の政権がクリントン―ブッシュ―オバマ―トランプ―バイデンと、民主党政権であっても共和党政権であっても、誰が大統領になっても、悲願の「米国の敵対政策の撤回→国交正常化」を実現できなかったことが立証している。

 北朝鮮には苦い教訓がある。駐韓米軍の撤収を検討していたハト派の民主党のジミー・カーター大統領が1979年、朝鮮半島の和平実現のため、韓国を含めた3者会談を提唱した際、韓国が休戦協定の当事者ではないことを理由に拒絶したことだ。

 翌年、カーター大統領は共和党のロナルド・レーガン大統領候補に敗れ、再選を果たせなかった。北朝鮮が朝鮮戦争を終結させ、平和協定に移行するため韓国の参加を認めた3者会談を逆提案したのはそれから5年後の1984年だった。しかし、タカ派のレーガン政権はこれを拒絶した。当時の韓国の政権も全斗煥(チョン・ドゥファン)軍事政権だったこともあり、結局、3者会談は実らなかった。

 歴史は皮肉なもので、それから10年後の1994年の第1次核危機の時、カーター元大統領はクリントン政権の特使として平壌を訪問し、金日成(キム・イルソン)主席と談判し、米朝対決を終息させていた。

 トランプ大統領のラブコールを受け入れるべきか、金主席の孫、金正恩総書記は今まさに、ハムレットの心境だ。

(参考資料:トランプ大統領にのしかかるハノイ会談決裂のツケ 「二度とチャンスは訪れない」の7年前の予言が的中!)