2026年8月3日(月)
露朝国境自動車橋が開通すれば、ウクライナは北朝鮮への報復として爆破を画策か
露朝間に流れる豆満江の上に自動車道路を連結する作業(朝鮮中央通信から)
北朝鮮の羅先とロシアのハサン間の国境(約17キロ)を結ぶ「露朝豆満江大橋」(露朝国境自動車橋)の完成が目前に迫っている。
本来であれば、完成・開通は「露朝戦略的パートナーシップ条約」の締結日に当たる6月19日に予定されていた。しかし、1か月以上が経過した現在も開通していない。北朝鮮側の国境通過施設はほぼ完成している一方、ロシア側の検問施設は大規模な工事となっており、進捗の遅れが原因とみられている。
露朝国境自動車道路は全長4.5キロだが、大橋は全長約1キロ、幅員7メートルの往復2車線からなる自動車専用橋である。両国間には1959年に建設された既存の鉄橋があるが、自動車が直接往来できる道路橋の建設は今回が初めてとなる。開通すれば、ロシアは年内にもウラジオストクと北朝鮮・羅先経済特区を結ぶバス路線を開設する計画だ。
北朝鮮側の露朝国境自動車橋着工式(朝鮮中央通信から)
ロ朝両国は、この道路が両国間の貿易と交流を拡大するための施設だと説明している。一昨年4月末の起工式に北朝鮮の朴泰成(パク・テソン)首相とともにオンラインで出席したロシアのミシュスチン首相は祝辞の中でこの橋を「平和と友好の象徴」と位置付けた。しかし、ロシアと交戦中のウクライナはそのようには捉えていないようだ。経済的価値はないとみているからだ。
ロシアと北朝鮮の2024年の貿易規模は約3400万ドルにとどまる。北朝鮮が期待するロシア人観光客も2025年時点で年間約1万人程度とされる。また、主要観光地である平壌までは500キロ以上離れている。
この道路建設には1億ドル以上の建設費が投じられていると推測されるが、ウクライナは現在の貿易規模や観光需要を踏まえれば、このような大規模インフラ投資は採算に見合わないと分析している。
ウクライナは、この橋を単なる交易インフラではなく、兵力や軍需物資を輸送する戦略的道路になるとみており、この露朝物流網を「脅威」と認識して警戒を強めている。
外電によると、ウクライナの人権団体「トルスハウス」は、この施設の核心的な目的は軍事物流網の構築にあると分析している。その根拠として、道路輸送は鉄道輸送に比べ、衛星監視を回避しやすい点を挙げている。
貨物列車であれば、出発地から到着地まで固定された線路を走行し、一定時間は決まった場所に停車するため、衛星画像によって移動経路や積載貨物を比較的追跡しやすい。また、開放型貨車であれば砲弾や軍用車両など貨物の種類も判別しやすい。一方、トラックの場合は外観だけで積載物を識別することが難しい上、道路沿いの各所で積み下ろしが可能となる。
さらに、露朝間の道路網は鉄道網よりも広範囲に及ぶため、すべての移動経路を常時監視することは事実上不可能である。北朝鮮の兵力や建設部隊、砲弾、ミサイル部品などを民間貨物車両で輸送した場合、外部からの監視は一層困難になる。
ウクライナのゼレンスキー大統領が先週(7月25日)、情報当局の資料に基づき、ロシアが今秋、追加で北朝鮮兵士約3万人を受け入れる準備を進めていると明らかにしたことも、どうやらこの橋の開通計画と関連づけている可能性がある。
直通道路が開通すれば、北朝鮮の兵力は鉄道だけでなく、バスや軍用トラック、さらには民間車両にも分散してロシアへ移送できるようになる。大規模な兵力移動を小規模車両に分散して輸送すれば、衛星や偵察資産による把握はさらに困難になる。従って、ウクライナは「露朝豆満江大橋」を単なる国境インフラとはみなしておらず、北朝鮮の兵力や弾薬をロシア前線へ送り込む重要な補給ルートと認識している。そうであれば、橋の開通はウクライナにとって新たな「脅威」となり、将来的な攻撃対象となる可能性も否定できない。
ウクライナはこれまで、ロシア軍の補給路を断つことを目的として、ロシア本土とクリミア半島を結ぶ「クリミア大橋」をはじめ、複数の橋梁を無人機や水中爆発物などで攻撃してきた。特に2025年6月3日の水中爆破では、橋脚の一部が損傷した。
また、ウクライナ軍特殊部隊や保安庁(SBU)は、ドローンを用いて国境から約4500キロ離れたシベリア南部のイルクーツク州やアムール州の基地を攻撃したほか、昨年5月30日にはウクライナ国境から約6800キロ離れたウラジオストク近郊のデサントナヤ湾付近で、ロシア海軍歩兵旅団が駐屯する施設を爆発した。これらはいずれも国防省情報総局(GUR)の関与が指摘されている。一昨日には、モスクワ中心部のレストランで手製爆弾による爆発事件も発生した。
ウクライナは、国際社会で唯一、兵士をロシアへ派遣してロシアのウクライナ侵攻に加担した北朝鮮を「犯罪国」「戦犯国」とみなし、報復の機会をうかがっている。
ロシア軍の補給路を遮断する軍事的必要性に加え、北朝鮮への報復という観点からも、ウクライナが「露朝豆満江大橋」が開通すれば、攻撃対象とする可能性は十分に考えられるのではないだろうか。