2026年2月13日(金)
領空だけでなく、領海侵犯にも必ずや苛烈な対応を取る!不気味な「金与正談話」
韓国が侵入させた無人機と金与正党副部長(朝鮮中央通信から筆者キャプチャー)
北朝鮮は、韓国が今年1月に北朝鮮に向けて無人機を飛ばしたことについて、韓国に謝罪と責任ある説明を求めていたが、韓国の鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官が10日、遺憾の意を表明した。これを受け、金与正(キム・ヨジョン)党副部長は今朝、談話を発表し、「鄭東泳長官が公式に遺憾を表明したことを幸いに思う」として受け入れる姿勢を示した。金正恩(キム・ジョンウン)政権との関係改善を模索している李在明(イ・ジェミョン)政権は安堵しているようだ。
韓国を無視し続けてきた北朝鮮が反応を示したことに加え、金正恩総書記の側近であり実質的な代理人ともいえる妹の金与正党副部長が談話で対応したことから、李在明政権は胸をなで下ろしている。政府・与党内では関係改善への期待が高まっている。
北朝鮮担当の統一部の尹ミンボ報道官は「金副部長の談話に留意している」との声明を発表し、その中で「(談話は)朝鮮半島の緊張緩和と偶発事態の防止に向け、南北が共同で努力する可能性を示唆している」と歓迎の意向を明らかにした。
大統領府もまた、国民に向けて「南北間の貴重な平和を阻害する行動は控えるべきだ」と呼びかけたうえで、「南北が相互疎通を通じて緊張を緩和し、信頼関係を回復することを期待する」との立場を示した。
李政権は、無人機問題が一段落すれば、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前政権下で事実上白紙化された2018年9月の南北軍事合意の復元措置を検討している。復元案には、軍事境界線一帯で相手側を標的とした各種軍事演習の中止や、軍事境界線(DMZ)から東部地域では15km以内、西部地域では10km以内の飛行禁止措置などが含まれている。
これについては北朝鮮も大きな異論はないとみられるが、北朝鮮にとってより重要なのは領空よりも領海の問題である。すなわち、紛争の火種となっている海上の境界線、いわゆる国境線の策定問題だ。
金副部長は談話で、「反共和国無人機侵入行為を実行した主犯が誰であれ、個人であれ民間団体であれ、われわれは関心がない。問題視するのは、わが国家の領空を無断で侵犯する重大な主権侵害行為が韓国発で行われたという事実そのものだ」と強調した。そのうえで「我が国の神聖不可侵の主権を侵害する挑発事件が再発すれば、必ず苛烈な対応が取られる」と述べ、「さまざまな対応攻撃案のうちいずれかが選択され、その対応は比例性を超えるものとなる」と威嚇した。さらに「韓国当局は内部で愚かな行為が行われないよう、再発防止に万全を期すべきだ」と警告した。
談話を読む限り、北朝鮮は無人機侵入を国際法上の領空侵犯行為として韓国が事実上認めたことを、「敵対する二つの国家論」の正当化に利用するだけでなく、今後は海上においても軍事的対応の名分とする可能性が高い。
すなわち、「金与正談話」は南北関係改善の意思を示したものではなく、むしろ完全な決別を意図したものであり、来るべき海上での新たな境界線(国境線)の線引きに備えた布石とみることができる。
北朝鮮は1953年の停戦協定に基づき、陸上に引かれた軍事境界線は認めているが、海上については米韓が一方的に設定した北方限界線(NLL)を認めていない。
北朝鮮は今後開催される第9回党大会で党規約を改正し、「敵対する二つの国家」に基づいて韓国との間に国境を定める可能性がある。その場合、NLLより南側に線引きされる公算が大きい。
金総書記は2024年2月8日、国防省での演説で初めて「国境」という表現を用いた。その1か月前に開かれた最高人民会議での施政演説では、「我が国家の南の国境線が明確に引かれた以上、不法無法の『北方限界線』をはじめ、いかなる境界線も許されない。大韓民国が我が領土、領空、領海を0.001ミリでも侵犯するならば、戦争挑発と見なす」と断じていた。
その発言から4か月後、金鋼一(キム・ガンイル)国防次官は韓国軍による海上での国境侵犯を取り上げ、「我々は主権と安全を守るために必要な軍事的措置を取ることができるとすでに警告している。海上主権が引き続き侵害されるなら、決して座視せず、水上・水中を問わず自衛力を行使する」と改めて牽制した。
金副部長は今朝の談話で「韓国当局は、自ら招いた危機を遺憾表明でごまかすのではなく、我が共和国の領空侵犯という重大な主権侵害事件の再発を確実に防止する担保措置を講じるべきだ」と強調していたが、やはり北朝鮮にとって今回の「無人機騒動」は、海上における国境線線引きの伏線であることを示しているといえる。