2026年2月20日(金)
5年ぶりに開催された朝鮮労働党第9回大会の見どころ
開幕した朝鮮労働党第9回大会(労働新聞)
北朝鮮の執権党である朝鮮労働党の第9回大会が2月19日に開幕した。
事前に今月下旬開催の予告があったことから、第4週の22日以降の開催が有力視されていた。しかし、前回大会で打ち出された5か年経済計画の目玉であった平壌5万世帯住宅建設のフィナーレである和盛地区第4段階の1万世帯住宅が16日に竣工したことを受け、日程をやや前倒ししたようだ。
本来であれば、未完となっている軍事偵察衛星の発射や、昨年12月25日に外形を公開した8700トン級原子力潜水艦の完成を待ち、さらに米韓合同軍事演習が例年どおり3月に実施されるかどうかを見極めたうえで開催したいところだったと思われる。しかし、間に合わず時間切れとなったようだ。
その代替措置かどうかは定かではないが、大会前日に首都平壌で600ミリ大口径ロケット砲の贈呈式を盛大に執り行い、体裁を整えたようだ。軍需工業担当者は式典で「朝鮮労働党第9回大会に贈るため、2カ月間で50門の600ミリ大口径ロケット砲を増産した」と明らかにしており、こうした見方もあながち的外れではなさそうだ。
第9回大会では、今後5年間の国家目標や路線、政策が打ち出される見通しであるが、注目点は大きく分けて人事と対外路線の2点である。
人事の焦点は、党の最高幹部である政治局常務委員(4人)、政治局員(14人)、政治局員候補(11人)の顔ぶれであるが、特に注目したいのは、後継者と目されている金正恩(キム・ジョンウン)総書記の娘の後見人とも、ライバルとも言われている妹の金与正(キム・ヨジョン)党副部長の処遇である。
11年前に表舞台に登場して以来、党副部長の肩書で兄に随行してきた金与正氏は、2016年5月に党中央委員に選出され、2017年10月には30歳で政治局員候補となり、2019年2月には党中央委員会第一副部長に起用された。しかし、前回の第8回党大会では意外にも政治局員候補から外れていた。
今大会の執行部は金総書記を筆頭に39人で構成されているが、その中に金与正氏が含まれていることから、政治局員に復帰する可能性は高いとみられる。
人事でもう一つ関心を払わざるを得ないのは、前回大会で新設されながらも空席のままとなっている党第1書記ポストの行方である。
新設から5年過ぎても空席のままであるのは極めて不自然で、過去に前例がない。前回大会で改正された労働党規約では、第一書記は「金正恩総書記の代理人である」(規約第26条)と定められている。従って、単なる党ナンバー2にとどまらず、後継者を意味することから金総書記の娘のために用意されたポストとの観測もあるが、娘はまだ13歳で党員でもないことから今回の大会でも選出は見送られる公算が大きい。
対外路線では、敵対勢力と位置付ける米国および韓国への対応が焦点となる。
前回大会では、2年前にハノイで行われた2度目の米朝首脳会談が決裂したことや、トランプ政権から、北朝鮮を「米国と世界の安全保障に対する深刻な脅威」と位置付けるバイデン政権へと移行したことを受け、北朝鮮は米国を相手にしない「戦略的無視」政策を取る一方、「国防科学発展および兵器システム開発5か年計画」を打ち出し、ミサイル開発を進めてきた。
今回はトランプ大統領が復帰したこともあり、金総書記はトランプ米大統領に対して「良い思い出がある」と述べ、「米国が北朝鮮に核兵器の放棄を求めなければ、対話に応じる考えがある」とも語っていることから対米批判は一定程度抑制される可能性がある。
対韓関係については、すでに韓国との統一放棄を表明していることから、労働党の規約から「民族大団結の旗を高く掲げ、祖国の平和統一を早める」との条項は削除され、「敵対的な二国家関係」との文言が盛り込まれる可能性がある。ただし、李在明(イ・ジェミョン)政権が対北融和政策を掲げ、北朝鮮とは敵対的ではなく「平和的な二国家関係」、すなわち「共存と共栄」を表明していることから、対話の余地は残すものとみられる。
番外としては、党大会記念行事として軍事パレードが実施されるかどうかである。
前回は党大会(1月5日〜12日)終了2日後の14日深夜に実施され、潜水艦発射弾道ミサイル「北極星5」や新型5軸10輪の車載式弾道ミサイルが初公開された。従って、金正恩政権下で16回目となる軍事パレードの内容にも注目が集まるだろう。