2026年2月21日(土)
「米中紛争に巻き込まれてはならない」 在韓米軍基地の米国の対中攻撃出撃基地転用に抵抗する韓国
米軍の戦闘機(出典:韓国合同参謀本部)
数日前(18日)、黄海(西海)上の韓国と中国の防空識別圏の中間地点で、米軍戦闘機と中国戦闘機が対峙する状況が発生した。
韓国の国内報道によると、京畿道平沢の烏山空軍基地から離陸した10機余りの米軍戦闘機が中国の防空識別圏(CADIZ)に接近し、哨戒訓練を行った。これに対し、中国も戦闘機を緊急発進させ、公海上の空域で米中の戦闘機が対峙する事態に至ったという。
在韓米軍の戦闘機が中国のCADIZ付近まで接近するのは極めて珍しい。しかも、韓国軍に事前通告せず単独で実施されたうえ、訓練の性格や目的も一切知らされなかった。今回の哨戒訓練は、在韓米空軍がインド太平洋軍の指示に基づいて実施したものとみられる。
というのも、16日から18日にかけて、米国のB52戦略爆撃機4機と日本の航空自衛隊のF2戦闘機6機、F15戦闘機5機が、東海(日本海)および東シナ海の空域で各種戦術訓練を共同実施していたからだ。東シナ海が訓練地域に含まれていることから、中国を念頭に置いた訓練であることは明らかである。
実は米国は当初、この訓練を日米韓3か国で実施する予定だった。しかし、韓国が米国の参加要請を拒否したため、日米のみで行われることになった。
今回、在韓米軍のF16戦闘機数十機が2日間で100回以上出撃したとされるが、日本列島から台湾、フィリピンを結ぶ防衛線である「第1列島線」内で、米国の戦略資産と日本の自衛隊、在韓米軍の戦闘機が事実上同時に展開するのは異例である。日本の統合幕僚監部は19日、「安全保障環境が一層厳しさを増す中、自衛隊と米軍が共同訓練を実施した」と明らかにしている。
今回の事案を契機に、在韓米軍が単独で訓練を実施する際、訓練計画や目的を韓国軍と共有しないことが慣行化し、今後も韓国を除外して日米のみで中国を牽制する訓練が常態化する可能性もある。
事態を重く見た韓国の安圭伯(アン・ギュベ)国防部長官と鎮永昇(チン・ヨンスン)合同参謀議長は、それぞれジェイビア・ブランソン在韓米軍司令官に電話し、抗議の意を伝えたという。韓国政府や軍が把握していない状況が繰り返されないよう求めた模様だ。
トランプ政権は、北朝鮮の挑発抑止は韓国軍が担い、在韓米軍は中国抑止に専念する方向性を模索しているとされる。在韓米軍の役割を「対北朝鮮抑止」から「対中牽制」へと転換しようとする米国の構想が浮き彫りになり、米韓間の見解の相違も顕在化してきた。場合によっては、韓国が米中紛争に巻き込まれる恐れもあることから、韓国の保守紙、革新系紙ともに20日付の社説でこの問題を取り上げていた。
保守系の「東亜日報」は「西海上空で米中戦闘機が対峙…在韓米軍の役割変更の予告か」との見出しで、「今回の西海への出撃が対中牽制強化措置の一環であるならば、今後も類似の訓練が繰り返される可能性がある。(中略)仮に東シナ海や南シナ海のように西海で緊張が高まれば、韓国が偶発的な紛争に巻き込まれたり、米戦闘機が出撃した国内基地が潜在的な標的となる可能性も排除できない」と指摘した。そのうえで、「米国は今回の訓練の性格について韓国側に十分説明し、今後は事前協議および情報共有の強化を約束すべきである。韓国政府もまた、進行中の『同盟の現代化』協議を通じて国民の不安を解消しなければならない。同盟国の戦略的柔軟性が我々にとって戦略的不確実性となる事態は防がなければならない」と、米韓双方に注文を付けた。
また、革新系の「ハンギョレ新聞」も「朝鮮半島の『対中出撃基地化』は絶対に容認できない」との見出しの下、「政府は、在韓米軍が我々の許可なしに朝鮮半島内の米軍基地を対中牽制のための出撃基地として使用できないよう、一日も早く制度的な安全装置を整えるべきだ」と主張した。
李在明(リ・ジェミョン)大統領は昨年11月にアフリカや中東諸国を歴訪した際、最後の訪問国トルコに向かう専用機内で「韓国外交の基本原則は韓米同盟を根幹としつつ、韓中関係を安定的に管理することにある」と述べ、「その基調の根本は国益中心の実用外交であり、米国にも中国にもこの原則を明確に伝えている」と明らかにしていた。
安全保障を米国に大きく依存する韓国が、米中等距離外交をどこまで維持できるのか。李大統領の外交手腕が問われている。