2026年2月4日(水)
「金日成広場を攪乱せよ」 韓国無人機の平壌侵入の狙い
北朝鮮の軍事パレードと韓国の無人機(朝鮮中央通信と労働新聞から筆者キャプチャー)
米国の北朝鮮専門媒体「38ノース」によると、米国の民間衛星サービス「プラネットラブス」が一昨日(2月2日)撮影した平壌近郊の美林飛行場の写真に北朝鮮兵士数百人が行進の演習をしているところが写っていた。昨年11月に撮られた写真には軍用トラック数百台が集結していた。
軍事パレードの演習は常に美林飛行場で行われことから近々開催される第9回党大会に合わせて軍事パレードが行われる公算が高い。因みに2021年1月の第8回党大会の時も14日に軍事パレードが行われていた。党大会の記念行事として軍事パレードが行われたのはこの時が初めてでパレードは深夜に金日成広場で行われていた。
軍事パレードが行われる時は金日成広場に10万人近い平壌市民が動員されるが、仮に雛壇の席に立っている金正恩(キム・ジョンウン)総書記をコケにするビラが上空から大量に降ってきたら、金日成広場は大混乱に陥るであろう。
金総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)党副部長は先月10日に韓国が李在寅(イ・ジェミョン)政権になっても無人機を北朝鮮に向け飛ばしていると非難し、「軍がやろうが、民間がやろうが、韓国領域から我が共和国の南部国境を侵犯した無人機の実体に対する具体的な説明は必ずしなければならない」と、説明責任を求め、これに事態を重く見た李大統領も直ちに「事実であれば、朝鮮半島の平和と国家安全保障を脅かす重大犯罪だ」として、軍及び警察当局に迅速かつ厳正に捜査するよう指示を出していた。
(参考資料:北朝鮮に無人機を飛ばした犯人は誰だ!?)
調査の結果、韓国国防部は「韓国の無人機が今月4日と昨年9月に領空を侵犯した」との北朝鮮の主張について10日の時点で「韓国軍が無人機を運用した事実はない」との見解を表明したことから韓国軍と警察による合同調査タスクフォース(TF)は民間による仕業の可能性を想定し、捜査を進めていた。
ところが、1週間後に保守紙、東亜日報系のTV「チャンネルA」に「北朝鮮に無人機を飛ばした」と主張する「30代の大学院生の男」(呉某氏)が登場した。
呉氏は「私は平凡な大学院生で、好奇心から一度北朝鮮に無人機を飛ばしてみたかった」とか、「北朝鮮のウラン工場の放射能数値を確認することが目的だった」とあっけらかんに語っていたが、その後、呉氏は大学生時代に極右団体「オボイ連合」から支援金を受けた経歴のある「韓国大学生フォーラム」の会長などを務めた経歴のほか、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後、大統領府で契約職員として勤務していた経験がある事実も明らかになった。大学院入学の際には尹政権の政府高官が推薦書を送ったとも言われていた。
また、呉氏は韓国軍にドローン作戦司令部が2023年9月1日に創設された3週間後に無人機製造会社「エステルエンジニアリング」という会社を設立したが、無人機を製作した張某氏が取締役に、金某氏が「対北専門理事」という役職についていた。張氏は呉氏と共に尹錫悦大統領府で勤務していた。
「エステルエンジニアリング」は民間用ではなく「北朝鮮侵入用」の無人機を製作する会社であることは対北専門理事の金氏が北朝鮮の汚物風船による挑発で南北間の緊張が急激に高まっていた頃、「ドローンを潜入させて北朝鮮指導部に圧力をかけるという対応を多様化する必要がある」と述べ、「3Dプリンターで胴体を製作しており、近いうちに試験を行う予定だ」と、2024年5月に作られたカカオトークのグループチャットルームで述べていたことからも明らかだ。
さらに国軍情報司令部の某大佐が2024年、呉氏を工作協力者とし、1300万ウォン(約140万円)の活動費を支援したことも合同調査タスクフォースは突き止めている。
実際に金氏は同年10月には「約140km飛行可能で、平壌への送り方を試験し、成功している」と述べ、「誰も(この無人機を)止められない」と自信を示し、続けて、「たとえ南北の防空システムをほぼ2時間もかき回しても、誰にも気づかれず、すべての映像を撮影している」と自慢していた。金氏は1か月後、「北朝鮮が夜間に軍事パレードを開けば、金日成広場をかき回して戻ってくる」と、自信満々に語っていた。
昨年3人は本格的に対北朝鮮無人機侵入を開始し、性能改良も進めたが、この年の11月に京畿道・驪州に墜落した国籍不明の無人機は同社の無人機だった。