2026年1月13日(火)

 韓国は政権が交代する度に対日政策がくるくる変るから困る

慶州での日韓首脳会談(出典:韓国大統領室)

 韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が来日し、高市早苗首相の地元、奈良を訪問している。

 高市首相との日韓首脳会談では李大統領は知的財産(IP)の保護や人工知能(AI)供給網のほか、環太平洋経済パートナシップ協定(CPTPP)への加盟など日本との経済協力問題を議題にする考えのようだ。

 来日直前の日本のメディアとのインタビューではCPTPPに加入するためには日本が求めている福島など8県の水産物の輸入禁止をいつの日か解除せざるを得ないと語っていた。

 韓国が8つの県のすべての水産物の輸入を全面禁止したのは保守の朴槿恵(パク・クネ)政権下の2013年9月6日である。折しも国際五輪委員会(IOC)が2020年五輪開催地を東京に決定する2日前だった。福島原発の汚染水漏れ問題が急浮上し、五輪誘致への大きな障害となっていただけに韓国の決定は誘致に悪影響を与えるのではと憂慮された。日本では韓国が東京五輪潰しを仕掛けたとの穿った見方さえあった。

 輸出禁止地域に指定した8県の中には海に面してもいない、当然漁港もない、これまで韓国に一度たりとも水産物を輸出したこともない群馬や栃木まで含まれていた。福島と隣接しているからといって、リストに載せたのであろう。

 日本は韓国の輸入禁止措置は「WTO(世界貿易機構)協定に反している」としてWTOに提訴し、2018年2月の1審では日本が勝訴したが、翌2019年4月の2審では逆転敗訴してしまった。このため8県は今なお、韓国への水産物の輸出が叶わない状態に置かれている。

 李大統領はCPTPP加盟と取引することを示唆していたが、先輩の文在寅(ムン・ジェイン)元大統領は2020年11月に日本との間で水産分野の相互開放を盛り込んだ「地域的な包括的経済連携(RCEP)」に署名しても、水産物輸入禁止を解けなかった。RECPは人口規模、貿易規模、名目国内総生産でも全世界の3分の1占める世界最大のFTA(自由貿易協定)となり、その規模は北米自由貿易協定(USMCA)やCPTPP)よりも大きい。

 解禁できなかった最大の理由は日本の対韓輸出厳格化措置が先行措置として解除されなかったことと同時に国内の水産業界や環境団体などの反対の壁が厚かったことだ。特に最大の障害は野党の反発にあった。

 菅義偉政権が2021年に原発の汚染水を浄化した後の処理水の海洋放出を閣議決定した時、文政権の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官(外相)は「日本が科学的根拠を示し、IAEAの基準に従うならば、反対しない」と日本に歩み寄る発言をしたところ、保守野党「国民の力」から吊るし上げられた。

 先週来日した韓日議員連盟会長である朱豪英(チュ・ホヨン)院内総務(当時)は同党の非常対策委員会の場で以下のように日本批判を展開していた。

 「日本の放射能汚染水放流は極めて無礼で、日本は傲慢不遜極まりない態度を取っている。(中略)近接している隣国として未来設計を共にやるべきなのに隣国の生命と環境に密接に影響のある問題を一方的に決定しておきながら何の相談もなく強いては『韓国ごとき』と度が過ぎる無礼を働いた。過去を反省しない帝国主義的傲慢な態度である。多くの国民が日本の一方的な放流決定はとても許すことができないと憤慨している。日本にもう一度覚醒を促す」

 また、同党の「俊英(ぺ・ジュンヨン)スポークスマン(当時)は党のホームページに「国民は政府が恨めしい。(なぜ政府は)日本の原発汚染水から国民を守ることができないのか」と、文政権の対日姿勢を叱責していた。

 ところが、文在寅政権から尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に代わると、攻守所を変え、反対が賛成に、賛成が反対に回ることになった。

 同党No.2の尹在玉(ユン・ジェオク)院内総務は院内対策会議で「最近、野党『共に民主党』はIAEAなどが科学的基準で検証することになっている福島放流水に対する様々な怪談を流し、国民を混乱に落としている」と、「汚染水」ではなく、「放流水」と表現し、放流受け入れに前向きな政府を後方支援していた。

 過去に2度(2016年と2018年)竹島(韓国名:独島)に上陸した経験のある同党の成一鍾(ソン・イルジョン)議員は「一旦処理されて放流されるので汚染処理水と呼ぶべきではないか」と、軌道修正を図っていた。

 それもこれも尹大統領が2023年3月に来日した際、日韓議員連盟(日韓議連)役員らとの会談で福島原発処理水の海洋放出問題や海産物の輸入禁止について「時間がかかっても韓国国民を説得する」と発言していたからだ。

 与党「国民の力」が「反対」から「容認」に傾いたのとは逆に反対に転じたのが京畿道知事時代の李在明大統領である。

 「日本の一方的な放流決定を糾弾する。1380万人の京畿道民はもちろん、大韓民国の国民の生命と安全を脅かすものだ」と発言していたのは周知の事実である。

 「海洋放出を速やかに中止すべき」と主張している韓国消費者団体協議会と12の加盟団体、それに環境団体などは昨年8月に小泉進次郎農林水産相(当時)が訪韓した際に「(福島第1原発の処理済み汚染水の)海洋投棄が中断されていない状況で、いかなる理由でも日本産水産物の輸入規制を緩和してはならず、むしろ強化すべきだ」と主張していた。

 李政権は6月に前回ソウル市長と釜山市長を失うなど大敗した全国地方選挙を控えている。選挙事情を考えると、6月までは日本の水産物を解禁できないであろう。というのも「尹錫悦政権の対日外交は親日的で屈辱的である」と叩かれた「国民の力」が手ぐすね引いて待っているからだ。

 対北朝鮮政策もそうだが、韓国の外交は一貫性、継続性がないのが問題だ。