2026年1月16日(金)
韓国宿命の対決 天国の李大統領と地獄の尹前大統領
2022年大統領選挙当時の李在明大統領と尹錫悦前大統領(李候補陣営と尹候補陣営から筆者キャプチャー)
どこの国でも政治、スポーツに限らず、宿命の対決があるものだが、韓国では今年66歳になる尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領と4歳年下の李在明(イ・ジェミョン)現大統領がそれに値するだろう。二人の運命があまりにも好対照であるからだ。
尹前大統領は父親が延世大学統計学教授、母親が李梨女子大教授の裕福な家庭の下で育ち、ソウル大学法学部で学んだ。一方、地方(慶尚北道・安東)生まれの李大統領は家が貧しく、小学校卒業後中学に進学できず、京畿道の城南市の工業団地で工員として働かざるを得なかった。
尹前大統領は大学卒業後にソウル大学法科大学院で学び、エリートコースの検事の道をまっしぐらに進んだが、李大統領は独学で大検を経て、中央大学法学部に入学して法学学士を取得し、弁護士の道を歩んだ。
司法試験では尹前大統領は8回落第したため合格した時は31歳になっていた。一方、李大統領は尹前大統領よりも3年早く、25歳の時に司法試験に合格しているので、年下だが、李大統領が先輩にあたる。
卒業後、尹前大統領はソウル中央地検特捜部1部長(2013年)、ソウル中央地検長(2017年)を経て、文在寅(ムン・ジェイン)政権下の2017年9月に検察総長に起用され、2021年3月まで在職していた。一方、李大統領は2010年から2018年3月まで京畿道の城南市長を務め、その後、京畿道知事を2021年6月まで在職していたが、城南市長時代の大庄洞地区土地開発を巡る特恵疑惑や京畿道知事時の北朝鮮不正送金疑惑は検察の追及はいずれも尹前大統領の検察総長時代に行われていた。
生まれも育ちも歩んだ道も異なる二人が初めて対峙したのが2022年3月の第20代大統領選挙で、非国会議員同士の対決として注目された大統領選挙は大接戦の末、0、7ポイント(約25万票)の差で「国民の力」が推した尹大統領候補が当選し、2022年5月に第20代大統領に選ばれた。
尹大統領はかつて指揮していた検察を動員し、文在寅(ムン・ジェイン)前政権の要人ら政敵の不正を徹底的に追及し、「共に民主党」の代表になっていた李在明氏も裁判に掛けられ、収監されるのも時間の問題だった。
ところが、それから約2年7か月後の2024年12月に尹前大統領は非常戒厳令を発令したため過半数以上の議席を有する李代表の「共に民主党」によって国会で弾劾され,翌2025年4月には憲法裁判所で罷免され、現在は刑務所に収監の身である。一方、李代表は「ポスト尹」の大統領選挙で当選し、今は天下を謳歌している。
この二人の浮き沈みをコントラストに象徴したのが昨日の世論調査結果である。
韓国の世論調査会社「リアルメータ」がエネルギ―経済新聞の委託を受け、14日に行った世論調査によると、尹前大統領が特別検察官に死刑を求刑されたことに国民の60%、即ち10人中、6人が「妥当である」と支持していた。
その一方、世論調査会社「メディアトマト」が「ニューストマト」の依頼で12日から13日まで行った世論調査によると、李大統領の支持率は61.5%と、就任以来過去最高値を記録した。
今、二人が置かれている境遇はまさに地獄を見ている尹錫悦前大統領と天に上った気分の李大統領と言った感じだが、その象徴が奇しくも李大統領の訪日と尹前大統領の求刑判決が同じ日に重なったことだ。
李大統領は13日に高市早苗首相の地元、奈良を訪問し、日本で大歓迎されたが、同じ日に尹前大統領は後輩の検察から死刑判決を求刑されていた。
本来ならば、尹前大統領の求刑は9日に予定されていた。それが、尹前大統領弁護人側の遅延戦術を取ったことで13日に延期され、その結果、李大統領の訪日と重なってしまった。
韓国メディアの社説をチェックすると、尹前大統領の裁判と李大統領の訪日を取り上げた件数を比較すると、「尹裁判」が「中央日報」「朝鮮日報」「東亜日報」など保守3大紙をはじめ「京郷新聞」「ハンギョレ」など進歩系紙など10紙に対して「李訪日」は中立紙の「ソウル新聞」や「国民日報」、それに「ソウル経済」など経済紙を含め7紙と、少なかった。
李大統領としては外交成果を国民に華々しくアピールしたかったところだが、どちらかと言うと、李訪日は影が薄い感じとなってしまった。
尹前大統領が李大統領に一夜報いたということにもなるが、「大統領は内乱又は外患罪以外は在職中に刑事上の訴追はされない」との憲法第84条によって李大統領の裁判が停止中にあるが、4年後大統領を辞職すれば、昨年5月1日に大法院から1審の無罪を破棄され、高裁に差し戻された裁判を含め4つの裁判が同時に再開されるので尹前大統領を後追いする可能性もゼロではない。
仮に、4年後に保守に政権が交代すれば、過去の例に従えば、尹前大統領が恩赦され、釈放される可能性も決して低くない。
「尹錫悦対李在明」の対決の完全決着はまだまだ先のような気がする。