2026年1月18日(日)
「金正恩決死護衛」の警護責任者の4人のうち3人が交代 「金正日暗殺計画」映画との関係は?
軍事パレードで行進する国務委員会警備局縦隊(朝鮮中央テレビから)
韓国では北朝鮮の国営テレビが新年に最高指導者の暗殺を題材にした映画「対立の昼と夜」を放映したことに関心が集まっている。
映画「対立の昼と夜」のワンシーン(出典:「NKニュース」)
この映画は2024年に企画、製作され、昨年10月に2019年9月以来6年ぶりに開催された「平壌国際映画祭」に出品され、一部外国の映画関係者の間では早くから話題になっていた。
これまでの北朝鮮映画では決して登場することのなかった男女のベッドシーンからカーチェイス、暴力シーン、爆発シーンなど激しいアクションシーンなどが取り入れられるなどハリウッド映画のような作りになっているだけでなく、何よりも「金正日暗殺未遂事件」を題材にしていたからである。
韓国で特に注目される理由は、暗殺のターゲットが信じられないことに最高尊厳の金正恩(キム・ジョンウン)総書記の父、金正日(キム・ジョンイル)前総書記であること、それとベネズエラのマドゥロ大統領が米軍の特殊部隊に襲撃され、米国に連行された直後に放映されたからである。
そんな最中、韓国統一部が13日に公開した「北朝鮮主要人物情報2025」(「北朝鮮機関別人名録2025」)によって金総書記を護衛・警護する党中央委員会護衛処、国務委員会警衛局、人民軍傘下の護衛司令部、秘密組織である護衛局のうち3つの組織のトップが交代していたことがわかり、ここにきて金総書記の警護問題が俄然脚光を浴びている。
党中央委員会護衛処は第一線で金総書記の身辺警護を担当する最側近組織で、金総書記の身辺及び家族の警護を管理し、警護組織内では最上位の実質的権限を保有している。
国務委員会警備局は国家的行事及び儀礼の警護を担い、金総書記の国務委員長としての活動を警護する。公式晩餐、閲兵式、最高人民会議など公式的な国家行事や海外訪問などの外部行事で警護を担当する。
人民軍傘下の護衛司令部は首都防衛及び外郭警備を担う。平壌市全域、錦繍山太陽宮殿など主要施設や軍事施設、金総書記の動線の外郭道路封鎖などを担当する。また、クーデターや人民蜂起を鎮圧する任務も担う。
最後に秘密警護組織である護衛局は党中央党舎など金総書記が滞在する主要執務室(党本部)を中心に、主要施設の内部警備を担当する。護衛局は警護局を側面から支援しつつ、組織間の相互監視を行う機能も遂行する重要組織でもある。
どれもこれも「金正恩決死護衛」「金正恩絶対死守」のスローガンにしている尖鋭の警護・護衛組織で軍事パレードでの部隊行進では常に第1軍など正規軍よりも先駆けて行進するほど重宝されている。
今回、労働党中央委員会護衛処の処長は韓スンチョル上将から孫ジュンソル上将に、国務委員会警衛局の局長は金チョルギュ少将から呂ギョンチョル少将に、護衛司令部の司令官は郭チャンシク中将から羅チョルジン中将にそれぞれ替わっていた。護衛局の局長の金ヨンホ中将は現状のままである。
人事交代は昨年10月の党創建80周年閲兵式で識別できたが、いつ交代したのかは不明である。
前任者の韓スンチョル処長と金チョルギュ局長はロシアのショイグ当時国防相が出席した2023年7月の戦勝節70周年までその職にあった。郭チャンシク司令官も少なくとも2022年には護衛司令官として警護を担当していた。新任の孫ジュンソル護衛処処長が2024年12月に党第8期第11回全員会議拡大会議で党中央委員に選出されていることからおそらくこの頃に交代したものと推測される。
一昨年(2024年)7月に起きたトランプ前大統領の暗殺未遂事件とほぼ同じ時期に発覚したウクライナによるプーチン大統領の暗殺計画に衝撃を受けたのか、北朝鮮は金総書記の身辺警護を一段と強化している。
特に一昨年10月に韓国防諜司令部がドローンを北朝鮮に飛ばしたことや米韓合同軍事演習が再開され、米韓の特殊部隊による「斬首作戦」の訓練が密かに行われていたことなどから警戒を強めている。
金総書記が車で移動する際には前後3台が護衛し、またボディーガードらは日本のSPを真似し、銃撃や投石などを防ぐため盾になる黒いカバンを手にしている。
なお、日本の警察庁長官にあたる社会安全相は2024年7月31日に李太燮(リ・テソプ)から軍政指導部の方頭燮(パン・ドゥソップ)党第1副部長に代わっている。方頭燮社会安全相は党中央に入る前は軍第一副総参謀長兼作戦総局長のポストにあった。