2026年1月20日(火)

 「瞬間湯沸かし器」の金正恩総書記がまた怒った!即刻、副首相の首が飛んだ!

叱責された楊勝虎副総理と金徳訓前総理(労働新聞から筆者キャプチャー)

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記がまたも現地視察で激怒し、大衆の面前で党の経済幹部を幹部を吊るし上げた。

 金総書記が現地視察の際に雷を落とすのは毎度のことだが、今回はただ事ではなかった。あまりの剣幕に同席していた党幹部を含め出席者ら縮みあがっていた。

 金総書記は19日、咸鏡南道にある竜城機械連合企業所の第1段階改造・近代化対象の竣工式に出席した。党と政府の幹部をはじめ、党中央指導機関のメンバー、咸鏡南道の活動家、建設者、科学者、技術者、関連部門および竜城機械連合企業所の活動家・従業員らの前で演説を行ったが、めでたい式典であるにもかかわらず顔を紅潮させ、終始不機嫌だった。恒例のテープカットすら行わず、朴泰成(パク・テソン)総理に代行させるほど苛立っていた。

 演説が始まると間もなく、企業所の第1段階近代化の過程で「人為的な混乱を経て、少なからぬ困難と経済的損失を被った」と不満を表明。その場で機械工業を担当する内閣副総理を名指しし、「資質も能力もなく、無責任な内閣副総理は今の職務に合わない。重責を任せるには不適切だ」と断罪したうえで、「副総理は自分の足で出られるうちに、これ以上手遅れになる前に出ていけ」と命じた。さらに追い打ちをかけるように、「私はこの場で副総理の解任を宣言する」と公言したのである。

 引きずり出されこそしなかったものの、その光景は2013年12月、党中央委員会総会で吊るし上げられ、衛視によって会場から引きずり出された金総書記の叔父・張成沢(チャン・ソンテク)氏を彷彿とさせた。叱責の対象となったのは、楊勝虎(ヤン・スンホ)内閣副総理である。

 元・大安重機械連合企業所支配人だった楊勝虎副総理は、その手腕を高く評価され、2016年年6月に最高人民会議代議員、2019年4月に党中央委員候補、同年12月に党中央委員に選出された。2020年4月に総理に昇格した金徳訓(キム・ドクフン)副総理の後任として副総理に起用され、2021年1月の労働党第8回大会では党政治局員候補にも選ばれていた。昨年11月に死去した金永南(キム・ヨンナム)前最高人民会議常任委員長の国葬葬儀委員(109人)の中では23番目に名前を連ねていた実力者である。

 「機械工業担当副総理が仕事をいい加減にしたため、多くの労働力と資金を浪費した」と楊副総理をなじる金総書記は、昨年12月に開かれた党中央委員会第13回総会での態度にも言及。「内閣副総理は討論の冒頭で、自身の過ちについては簡単に触れるにとどめ、管轄機関を組み入れた審議システムの樹立を提起するなど、自分が見つけ出して行うべきこと、当然行うべきことを並べ立て、不穏当な言動で党中央を愚弄しようとした」と批判した。「あの時、私は党総会を愚弄しようとする彼の言動を厳しく指摘し、以後ずっと注視してきた。しかし、その後の行動を見ると責任意識は皆無だった」と、解任理由を語った。

 楊副総理に問題があることを早くから把握していながら、昨年12月の時点で更迭しなかったのは、もしかするとその姓や容姿からして父親が先代に仕えた楊亨変(ヤン・ヒョンソプ)元政治局員であることに配慮した可能性もある。

 楊亨変氏は高等教育相(1967年)、社会科学院院長(1980年)、最高人民会議常設会議議長(1983年)、朝鮮社会科学協会委員長(1997年)、最高人民会議常任副委員長(1998年)などを歴任。常任副委員長の地位は金正恩政権下の2019年4月まで維持され、2022年に97歳で死去するまで代議員の座にあった。1992年に金日成勲章、2012年に金正日勲章を授与された功労者であり、他の党長老らとともに「金正恩後継」を支持した人物の一人でもある。

 金総書記は今回、「すでに批判されたことだが、前内閣総理はもとより、竜城機械連合企業所の改造・近代化に対する政策的指導を怠り、見物人のように振る舞ってきた政策指導部門の責任幹部たちも当然呵責を受けるべきだ」と明言している。この発言から、前内閣総理の金徳訓政治局員も処罰を免れない情勢だ。

 金前総理については、今回の演説で「当時の総理と内閣の無責任な態度を象徴する事件」として南興青年化学連合企業所や興南肥料連合企業所の問題が持ち出された。さらに金総書記は、2023年に台風・水害対策を怠り、穀倉地帯である平安南道の安石干拓地の水田が冠水し、食糧生産に大きな支障を来した件にも言及。金前総理を「政治的未熟児」「知的低能児」と罵倒し、「内閣総理の無責任な活動態度と思想観点を党的に深く検討する必要がある」と名指しで批判していた。

 金徳訓氏は2024年12月に開かれた第8期党中央委員会第11回総会で、内閣総理および党政治局常務委員を解任され、現在は経済担当の党書記・党部長に就いている。こうした経緯から、金前総理は開催が迫る第9回党大会ですべてのポストを解任されるだけでなく、表舞台から姿を消す可能性が高い。

 なお、楊勝虎副総理については金総書記が今回、楊勝虎副総理の行為について「反党行為ではない」と述べていることから、処刑や政治犯収容所送りといった最悪の事態は避けられる見通しだ。

 金総書記は一昨年(2024年)7月11日から12日にかけ、最北部・両江道三池淵市を視察した際にも、新設された観光ホテルなどが「いい加減に施工された」と激怒。李順哲(リ・スンチョル)国家建設監督相(当時)と副相(副大臣)ら監督責任者を槍玉に挙げ、「国家公務員としての初歩的な道徳も資格もない、けしからぬ連中だ」と叱責し、「両人の権利を停止し、直ちに法機関に引き渡して調査せよ」と厳罰を命じていたばかりである。

 早くも第9回党大会では人事の大幅な入れ替えが予想されている。