2026年1月26日(月)
韓国では中国人団体客にノービザを実施しても不法滞在も犯罪も増加しなかった
慶州APEC首脳会議で会談した習近平主席と李在明大統領(出典:大統領室)
韓国の法務部によると、昨年9月29日付で中国人団体観光客に対する条件付きノービザ措置が施行された後、10〜11月にそれぞれ42万5453人、33万1698人の中国人が入国したと集計された。前年同期比ではそれぞれ23.1%、18.7%の増加となったが、爆発的に増加したわけではない。
中国政府が台湾問題をめぐる「高市発言」への報復措置として、中国人の日本観光を制限した以降の統計はまだ出ていないものの、日本を訪れる予定だった中国人観光客が韓国に旅行先をシフトしたと言われていることから12月は急増した可能性が高いと推察される。
韓国観光公社によると、2024年に韓国を訪れた外国人観光客は総計1637万人で、このうち最も多いのが中国人の460万人(28%)だった。2位の日本(322万人)をおよそ100万人以上も上回っている。
李在明(イ・ジェミョン)政権は昨年、中国人観光客数を536万人まで押し上げる目標を掲げていた。韓国銀行の推計では、中国人団体観光客が100万人増加した場合、GDPは約0.08%上昇するとされている。
一例として、韓国のアイウェアブランド「ブルーエレファント」は、ノービザ入国制度の施行以降、中国人による購入売上が約1500%も急増したと明らかにした。
同社によると、制度施行後、訪韓する中国人観光客の店舗訪問数が急速に増加し、実際の購入につながる割合も大幅に拡大したという。特に、単品購入よりも複数購入の事例が増え、売上拡大に好影響を与えたとしている。
一方、日本でも韓国でも、マナーの悪い中国人が増えれば、その分、犯罪や不法滞在も増加するのではないかと見られがちだ。実際に韓国でも、中国に反感を持つYouTube動画やSNS上で「中国人犯罪が急増している」という刺激的な話が急速に拡散し、中国人観光客が訪れる明洞など繁華街では反中集会が頻繁に行われている。
しかし、今朝の「SBSテレビ」の放送によると、中国人犯罪は外国人犯罪全体の減少率(9.5%)とほぼ同水準で、ノービザ施行後に犯罪が急増したことを裏付ける有意な統計変化は確認されなかったという。
「中国人ノービザ」施行以降、本当に犯罪が急増しているのかを徹底検証したSBSの取材班は、ノービザ制度施行後、つまり昨年10月から3か月間の警察庁・法務部の外国人犯罪統計を詳しく分析した。その結果、この期間の中国人犯罪は前年同期間比でむしろ9.8%減少していた。
▲中国人犯罪検挙状況(警察庁)
2024年(10〜12月):中国人 4180人/外国人9468人
2025年(10〜12月):中国人 3769人/外国人8569人
昨年10月からの3か月間に入国した中国人ノービザ観光客は、済州(チェジュ)のみが認められていた前年同期と比べて49%増加していた。法務部によると、済州を除いたノービザ入国者はこれまで約2万3000人と推定され、そのうち不法離脱者は11人にとどまり、うち7人はすでに検挙されている。数字上、不法滞在は極めて少ないことがわかった。
また、日本同様、韓国でも国民の間には不法滞在への懸念があるが、SBSの調査班が未登録外国人の累積現況を確認したところ、中国人の比率はタイ、ベトナムに次いで3番目で、毎月およそ15%前後と、制度施行前後で大きな変化は見られなかったという。
▲2025年 累積未登録外国人比率(法務部資料)
タイ人 32.8%、ベトナム人 20.2%、中国人 15.9%、モンゴル 4.1%、フィリピン 3.8%
中韓関係はここ数年ぎくしゃくした状態が続き、韓国内の反中感情はピークに達していた。しかし、習近平主席が昨年10月に慶州で開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議に出席したことや、訪中した李在明大統領が中国で国賓待遇を受けたことなどから、韓国人の反中感情もやや和らいでいるようだ。
ノービザ実施後の11月4〜5日に時事週刊誌「時事IN」が世論調査会社「韓国リサーチ」と共同で行った調査では、「国内にいる中国人は追放すべきか」という質問に対し、「同意しない」が72%と、「同意する」の21%を大きく上回った。
それでも法務部は「一部国民が感じている文化的な違和感や治安不安を十分に認識している」とした上で、今後も出入国審査と管理を厳正に行っていく方針を明らかにしている。