2026年1月29日(木)

 妻の「1年8か月」の軽い判決に「後悔先に立たず」の尹錫悦前大統領

尹錫悦前大統領と金建希夫人(大統領室での記念写真)

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の妻、金建希(キム・ゴンヒ)被告は1月28日の中央地方裁判所(中央地裁)で懲役1年8か月と追徴金約1280万ウォン(約140万円)を言い渡された。特別検察官の求刑は懲役15年なので、大幅な減刑となった。

 金建希被告は、資本市場法違反、政治資金法違反、さらに統一教会(世界平和統一家庭連合)から高級ブランドバッグなどの金品を違法に受け取った罪(斡旋収賄罪)など3つの罪に問われていた。

 資本市場法違反とは、独身時代(2010〜12年)に知人が経営する自動車輸入会社「ドイツ・モーターズ」の株価操作に関与し、8億1000万ウォン(約8640万円)相当の不当利益を得たとされる容疑である。政治資金法違反は2022年の大統領選を前に夫と共謀し、政治ブローカーのミョン・テギュン氏から複数回にわたり計2億7000万ウォン相当の世論調査を無償で提供されたとされる容疑を指す。

 特別検察官は昨年12月3日の論告求刑公判で、資本市場法違反と斡旋収賄罪について懲役11年、罰金20億ウォン、追徴金8億1144万ウォンを、政治資金法違反については懲役4年と追徴金1億3720万ウォンを求刑した。

 しかし判決では、資本市場法違反と政治資金法違反はいずれも無罪となり、斡旋収賄罪についても高級バッグを受け取った点のみが有罪と認定された。ダイヤモンドのネックレスを含むその他の高級ブランド品については無罪とされ、その結果が懲役1年8か月である。刑期を半分務めれば保釈される。本当に病弱ならばもっと早く釈放されるかもしれない。

 金被告の3つの容疑のうち、本丸とされていたのは「ドイツ・モーターズ」の株価操作事件であり、誰もが有罪は免れないと見ていた。ところが蓋を開けると、この点について中央地裁は「操作において被告がどのような役割を果たしたのかを示す証拠が不十分である」として無罪を言い渡した。

 この事件では、金夫人が株価操作を主導したとして執行猶予付きの懲役刑を宣告された共犯者と、2020年に40回以上も電話で連絡を取り合っていたにもかかわらずソウル中央地検は2023年10月に「容疑なし」として起訴せず、捜査を終了していた。

 当時野党だった「共に民主党」は中央地検が検察総長出身の尹大統領に忖度して起訴を見送ったと批判し、野党が絶対多数を占める国会で夫人の証人喚問を求めるとともに、特別検察官による「再調査」を要求していた。

 「共に民主党」は、夫人の疑惑を専門に捜査する特別検察官を任命する法案「金建希特検法」を2024年1月5日、10月2日、11月26日の計3回にわたり上程したが、尹大統領はその都度、拒否権を発動していた。尹大統領にとって、夫人の疑惑を捜査する特別検察官を受け入れることは絶対に容認できないものだった。

 しかし、大統領の特権である拒否権を行使し、3度にわたってこの法案を葬り去ることはできたものの、「金建希特検法」が国会に上程されるたびに、与党「国民の力」の内部には法案に同調する動きが広がった。

 側近中の側近である韓東勲(ハン・ドンフン)代表までもが、党最高委員会議で「国民が懸念している問題について、大統領は正直かつ詳細に説明し、謝罪を含め必要な措置を取るべきだ」と進言し、金夫人に対しても「直ちに対外活動を中止すべきだ」と勧告した。さらに「今後このような不祥事が再発しないよう、予防のための特別監察官を任命すべきだ」と、毅然とした口調で尹大統領に迫っていた。

 尹大統領にとって残された手段は国会解散しかなかった。そのため、12月3日に禁じ手である非常戒厳令の発令に踏み切ったというのが政界では定説になっている。

 しかし結果的にそれは裏目に出た。尹大統領は国会で弾劾され、さらに憲法裁判所で大統領職を罷免され、内乱罪で起訴されるに至った。現在は、死刑判決を宣告される可能性のある立場に置かれている。

 「株価操作事件は無罪」との知らせを獄中で聞いた尹錫悦前大統領は「浅はかだった」と、獄中で悔やんでいるのではないだろうか。

 「妻は株では無罪」との確信を持っていれば拒否権を発動することも、非常戒厳令を発令せずに済んだはずだ。何とも哀れ極まりない。