2026年1月30日(金)
日中対立に「漁夫の利」を得る韓国と英国の対中接近
慶州APEC総会での習近平主席と李在明大統領(出典:青瓦台)
総選挙では中国人を念頭に置いた外国人政策が争点となり、また高市首相の台湾関連発言」への「報復措置」として中国が観光客の訪日規制やレアアースの輸出制限など「経済制裁」を実施していることに反発し、競って「脱中国」が叫ばれている。
日本がいつまでどこまで本気で中国ととことん遣り合うのか、当事国の中国を含め周辺国の韓国や台湾、東南アジア諸国さらには欧米諸国が注視しているが、日本にとっては残念なことに足並みを揃えてもらいたい韓国、そして欧州の英国が日本の意に反し、揃って対中接近を強めている。
米国の同盟国である英国のキア・スターマー首相が1月28日から訪中している。英国の首相としては2018年のテリーザ・メイ首相以来7年ぶりに訪中である。
スターマー首相は米中の貿易摩擦について英国としては「二者択一」の考えはないとし、世界第2位の経済大国・中国と「戦略的で一貫した関係を維持することが大事である」と述べている。一にも二にも経済を重視しているスターマー首相の訪中には製薬大手アストラゼネカや鉱物資源の世界大手アングロ・アメリカンなど経済界から60人のリーダーが加わっていた。
英国でも韓国や日本同様に中国の人権抑圧やスパイ活動などによる反中感情が年々高まっており、その一例として、今、首都ロンドンでは中国の大使館の改修工事に反対するデモが連日起きており、保守党など野党は挙ってこの時期のスターマー首相の訪中に反対している。
それでもスターマー首相は「意見が一致しない問題を議論し、一致する問題については進展させることが重要である」との考えから訪中を決行したようだ。
北京での中国の 習近平主席との会談の結果、すでに英国は中国に輸出しているウイスキーの関税を5%に引き下げてもらい、さらに英国人に対する短期ビザ(査証)の免除を取り付けたと伝えられている。
韓国の李在明(イ・ジェミョンだ)大統領がスターマー首相に先駆けて1月4日に訪中したのもまた、「意見が一致しない問題は脇に置き、一致する問題は進展させる」という考えからだった。英国同様に韓国もまた米国が最大の同盟国だったが、李大統領はお構いなく訪中を強行した。
当然、国内では英国同様に最大野党の「国民の力」は「米国との信頼関係が損なわれる」として猛反対したが、李大統領は「韓国と中国の間には誤解や対立が幾つかあったが、今回の中国訪問を通じて誤解を解消し、二国間関係を新たなレベルへと引き上げていく」と、訪中の目的を語っていた。
李大統領は「韓中関係が一方に偏ったり、感情に左右されたりしないよう双方が尊重し、各自の国益を中心に置くとの原則の上で管理する」とことをモットにしている。従って、国内の反中デモについて「より良い環境をつくれるのになぜ不要で根拠のない事案をつくり、対立を触発するか理解できない」と批判していた。
李大統領の訪中もまた、経済最優先だった。その証拠に三星(サムソン)、現代(ヒュンデ)ら4大財閥の総帥を含め約200人の財界人が同行し、人工知能、グリーンエネルギー、サプライチェーン、観光など分野での協力を取り付けた。
また、李大統領は習主席との首脳会談で中国が黄海の韓中暫定措置水域(PMZ)内に無断で設置した構造物をPMZ外への移動と韓国の音楽やドラマ、映画などの流通を制限する中国の「限韓令」を段階的に解消することも約束させ、新たにジャイアントパンダの貸与についても善処を取り付けた。
さらに李大統領は首脳会談で「軍事分野でのレベルを上げるため」として黄海(西海)で海難捜索や救助を目的とした中韓海軍の合同訓練の再会を提案していた。海軍合同訓練は2011年11月まで実施されていたが、2016年に韓国がTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)を米国から導入したため中断したままになっていた。
帰国した翌日、李大統領は青瓦台が主宰した首席補佐官会議で「経済と文化全般にわたる交流・協力強化の基盤をしっかり構築した」と自画自賛していたが、「永遠の敵も、永遠の友邦も、永遠のルールもない冷酷な国際秩序の中で韓国の運命は我々が自ら開拓する国益中心の実用外交にかかっている」と、実利に基づく対中外交を推し進める考えを明らかにしていた。
「鬼のいない間に洗濯」ではないが、日本が「台湾問題」で中国との関係がこじれている間に「火事場泥棒」ではないが、中国から得るものは得るというのが李大統領の真骨頂のようだ。