2026年1月8日(木)

 「日中対立」は7年前の「日韓対立」に酷似 中国は日本の方式を踏襲

高市早苗首相(出典:首相官邸)

 日本がまたもや中国から経済制裁を掛けられた。日本が経済大国2位だった一昔前には考えられなかった現象である。世の中というか、国際政治力学が随分と激変したものだ。

 高市早苗首相の台湾有事を巡る「存立危機事態」発言に激怒した中国は中国人観光客の訪日規制に始まり、日本の水産物の輸入制限、軍民両用品の対日輸出禁止と「報復措置」をエスカレートさせているが、輸出禁止対象品目に中国に60%以上依存しているレアアースが含まれている可能性があることから日本の経済界には動揺が広がっている。

 中国商務省はレアアースについては直接言及していないものの対外紙「チャイナ・デイリー」が「レアアースに関連する品目については輸出許可審査の厳格化を検討している」と報じていることからほぼ適応されるようだ。

 仮にレアアースの輸出に規制が掛かれば、電機自動車、半導体など様々な分野で影響を受けることになり、3か月でGDPが−0.11%、1年続けば−0.43ほど下がると言われていることから高市首相が年頭会見で見込んでいた今年の名目GDP成長率3.4%に狂いが生じることになる。

 従って、日本政府が「高市発言」への報復として経済制裁を掛けるのは不当であると反発し、木原稔官房長官が「我が国のみをターゲットにした中国の措置は国際的な慣行と大きく異なり、決して容認できない」と中国に抗議し、撤回を申し入れるのも無理もない。

 エスカレートする日中の対立をみていると、6〜7年前の日韓の対立を彷彿せざるを得ない。中国のやり方はまさに元徴用工訴訟で韓国大法院(最高裁)から賠償を命じられた日本企業の差し押さえ問題を受け、当時日本政府が韓国に対して取った措置のコピーと言っても過言ではない。

 日本政府が当時、「徴用工判決」に猛烈に反発し、関税から送金の停止、ビザの発給停止まで様々な対抗措置を検討していたことは公然たる事実である。

 結局、日本政府は2019年7月に「不適切な事案がある」としてスマートフォンやテレビに使われるフッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストの半導体素材3品の輸出厳格化措置に踏み切った。このことについて当時、萩生田光一・自民党幹事長代行は民放の番組に出演して「(化学物質の)行き先が分からないような事案が見つかっている。軍事転用可能な物品(高純度フッ化水素、エッチングガス)が北朝鮮に渡っている懸念があるのでこうしたことに対して(安保上の)措置を取るのは当然だ」と説明していた。

 また、8月には「国際約束である請求権協定・慰安婦合意が守られてない。約束を守らない国に優遇しないのは当然の判断である」(安倍晋三首相)として輸出上の特恵を与えていた「ホワイト国」から韓国を外してしまった。食品と木材以外の工作機械、尖端素材、電子、通信、センサー、化学薬品などに適応されていた優遇措置が取っ払われたのである。

 日本政府は半導体輸出厳格化措置については「政治報復でもなければ、安全保障上の管理から単に輸出審査を厳格化するだけだ」と韓国に対しても、世界貿易機構(WTO)にも説明していた。

 しかし、韓国はそうは受け取らなかった。日本の措置を保守系の「東亜日報」は「日本の規制措置は徴用工判決への事実上の報復措置である」と断じ、同じく保守系の「朝鮮日報」も「日本が北朝鮮を持ち出したのは、輸出規制が経済報復ではなく、安保次元という詭弁を裏付けようとする意図があるようだ」と日本批判を展開していた。

 日本の輸出厳格化措置が撤回されず、長期化した場合に韓国に与える悪影響について大韓商工会議所が会員企業を対象に行った調査によると、輸出では81.2%、輸入では93.8%が「影響を受ける」と回答していた。

 そのため韓国は撤回を求めたが、日本政府は「元徴用工訴訟への対抗措置でも、報復措置でもない、安全保障上の管理から単に輸出審査を厳格化しただけ」と主張し、譲らなかった。

 このため韓国でも「対抗措置を取るべき」との勇ましい声が上がり▲戦略物資の対日輸出制限▲日本製品輸入規制▲日本観光ボイコット▲日本製品の不買▲米国や中国、EUなど國際社会と協調して日本に圧力を掛けることが検討されたが、主に取った対抗措置は観光ボイコットと日本製品不買運動だった。「日本に行かず、日本のモノは売らず,買わず」の「ノーノ―ジャパン」は全国に広がり、日本の自動車販売がモロに影響を受け、激減した

 日本が韓国の大法院判決の撤回を求め、これに対して韓国は日本の半導体輸出厳格化措置の撤回を求めるというパターンと、中国が高市発言の「撤回」を求め、日本は軍民両用品の対日輸出禁止措置の撤回を求めるパターンは余りにも酷似している。

 日韓の「貿易戦争」は2022年5月に進歩派の「共に民主党」から政権を奪還した保守派の「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が懸案の元徴用工問題で第3者弁済方式による「解決策」(韓国が財団を設けて元徴用工らに補償金を支払う案)を提示し、これを日本が受け入れ、2023年4月に輸出厳格化措置を解除し、5月に韓国を「ホワイト国」に再指定したことで収束したが、最終的には元の状態に戻るまでに4年近くかかった。

 果たして日中は修復するまでどれだけかかるのだろうか?