2026年7月13日(月)

 日本版CIAの「国家情報局」対北朝鮮版「モサド」の「偵察情報総局」

偵察局の元締め、李昌虎偵察情報総局長(労働新聞から)

 北朝鮮と日本は、良くも悪くもまるでやまびこのように呼応する。

 日本が国家サイバー総括室に続き、国内外の情報機能を強化するため「国家情報局」を新設するのであれば、北朝鮮もまた、新たに編成した「偵察情報総局」を通じて軍事偵察・情報収集能力の飛躍的な向上を図ろうとしている。

 「国家情報局」が日本版「CIA」だとすれば、北朝鮮の偵察情報総局は海外情報の収集から敵対勢力への秘密工作まで担うイスラエルの情報機関「モサド」の北朝鮮版と言えなくもない。

 ここ数日、朴熙哲(パク・フィチョル)軍総政治局組織担当副局長(少将)が10日の党・政府・軍合同会議で公開粛清されたことに注目が集まっていた。しかし、その前日(9日)に金正恩(キム・ジョンウン)総書記が主宰した党中央軍事委員会第9期第1回拡大会議では「偵察情報総局の機能と任務を多角的に拡大し、軍事偵察および情報収集能力を飛躍的に向上させる」ための課題と方策が示されていた。

 党中央軍事委員会は、党のあらゆる軍事分野における路線・政策を策定し、関連事業を組織・指導する最高意思決定機関であり、委員長は金総書記自身が務めており、副委員長の鄭慶澤(チョン・ギョンテク)前軍総政治局長の他、李昌虎(リ・チャンホ)副総参謀長兼偵察情報総局長を含め9人の委員がいる。

 偵察情報総局の存在は、昨年9月、朴正天(パク・ジョンチョン)当時の党中央軍事委員会副委員長の談話を通じて初めて公にされた。

 旧偵察総局は朝鮮人民軍傘下で対外工作、特殊部隊、サイバー攻撃などを統括する情報・工作機関であり、韓国を主な対象として軍事情報の収集や軍事偵察、サイバー攻撃を実施してきた。軍事情報の収集にとどまらず、海外工作も担っていた。

 偵察情報総局は、一言で言えば、従来、対韓工作機関として知られていた「偵察総局」を拡大・再編した組織である。

 今年2月に行われた第9回党大会記念軍事パレードでは、李昌虎(リ・チャンホ)上将が偵察情報総局長(海外特殊作戦部隊第1副司令官兼務)の資格で海外作戦部隊を率いる姿が確認された。その際、「朝鮮中央通信」は同機関を「潜在的な敵対勢力の脅威を管理し、重要情報を収集するうえで中核的役割を担う組織」と紹介していた。

 この「潜在的な敵対勢力」という表現は、従来の対韓国一辺倒の姿勢からの転換を示唆するものとみられる。現在の敵対国だけでなく、日本など将来的に北朝鮮に対して敵対的な姿勢を取る可能性のある国々まで監視対象に含める意図があるようだ。

 今回、北朝鮮が軍の情報・偵察組織の機能拡大を公然と強調した背景には、現代戦の様相の変化への対応があるとみられる。従来の対韓浸透や工作活動を中心とした情報活動から、サイバー戦、電子戦、軍事偵察衛星など先端的な情報能力を組み合わせた体制へと移行しているとの評価が出ている。

 韓国の北朝鮮問題専門家の間では、「核戦力の拡大と偵察情報総局の機能強化を連動させることで、比較的低コストで日米韓の先端戦力を監視・牽制できる非対称戦力の高度化を目指している」との見方がある。一方で、「イラン戦争で改めて注目されたイスラエル情報機関モサドの役割を踏まえ、偵察情報総局の任務と役割を拡大しようとしている」との分析も出ている。

 さらに、「韓国内の主要施設に対するサイバー攻撃や無人機による偵察・情報収集など、非軍事的なグレーゾーンでの挑発を一層高度化させる可能性が高い」との見方もある。

 北朝鮮に敵対行為を取らないことを宣言している韓国の李在明(イ・ジェミョン)政権は今のところ対抗策を取る考えはようで統一部の担当者は記者会見で「偵察情報総局の機能・任務拡大に関する動向を関係機関とともに注視していく」と、一言コメントするだけだった。