2026年7月15日(水)
賃金上昇でも労働争議が絶えない韓国 最低時給は3.7%上昇の1165円
昨年5月の全国民主労働組合総連盟(民主労総)のデモ(出展:「ニュース1」)
韓国の輸出額は6月、1022億5000万ドルとなり、史上初めて1000億ドルを突破するなど、韓国経済は近年まれに見る好調ぶりを示している。
半導体市場の好況を背景に、月間貿易黒字が300億ドルを超えたこともあり、韓国企画財政部は昨日、今年のGDP成長率見通しを1月時点から1.0ポイント引き上げ、3.0%へ上方修正した。名目成長率も1月時点から7.4ポイント引き上げ、12.3%とした。因みに経済協力開発機構(OECD)のデータによると、今年の韓国のGDP成長率は2.6%と予測されている。
好況となれば、当然、労働者の賃上げ要求は高まる。保守政権ならまだしも、労組が支援した進歩派の李在明(イ・ジェミョン)政権となっても韓国で労働争議が絶えないのは、何とも理解し難い。
現在の韓国の最低時給は日本の全国平均時給1016円を上回る1万320ウォン(約1080円)だが、労使などで構成する韓国の最低賃金委員会は昨日、2027年度の最低賃金を3.7%引き上げ、時給1万700ウォン(約1165円)とすることを決めた。しかし、1万700ウォンは労使による円満決着ではなく。難航の末の産物だった。最低賃金の上昇率は2023年の5.0%から2024年は2.5%へ低下し、2025年は1.7%、2026年は2.9%となっていた。
労働側の当初要求額は、今年より16.3%引き上げた時給1万2000ウォンで、一方、経営側の当初提示額は今年と同じ1万320ウォンだった。その後、労働側は時給1万1220ウォン、経営側は1万530ウォンを提示した。これはそれぞれ今年より8.7%、2.0%引き上げた金額である。それでも双方の隔たりは690ウォンあった。
最低賃金委員会は深夜まで合意を目指して交渉を続け、労使双方はそれぞれ修正案を提示した。最終案では、労働側が時給1万730ウォン、経営側が時給1万700ウォンと、差は30ウォンまで縮まったものの、最後まで埋めることはできず、採決に委ねられた。採決の結果、在籍委員27人のうち15人が経営側の案を支持した。
この採決について韓国労総(韓国労働組合総連盟)事務総長は「低賃金労働者の切迫した生活実態を十分に反映できておらず、非常に残念な決定だ。最近の物価水準や生活費の上昇を考慮すると、3.7%の引き上げは事実上据え置きに近く、生活保障機能を回復するには到底不十分だ」と不満を表明していた。
経営者、事業者側にとっても決して納得できる額ではない。人件費負担の大きい自営業者は特に切実だ。
全国一律に適用される制度である以上、現在の最低賃金ですら負担が重い零細事業者にとって、3.7%の引き上げは大きな痛手である。今月9日に開かれた会議では「2%を超える引き上げ率は受け入れ難い」として最低賃金委員会をボイコットしていた小規模事業者連合会所属の使用者委員はこの日の会議に復帰し、「小規模事業者の支払い能力を考慮すべきだ」と主張したが、受け入れられなかった。
雇用労働部は、最低賃金委員会から最終審議案の提出を受け、8月5日までに2027年の最低時給を確定・告示する予定だが、これで労働争議は一件落着とはならない。
最も戦闘的な労組である全国民主労働組合総連盟(民主労総)は、本日(15日)猛暑真っただ中のけ午後3時からソウル市鍾路区の東和免税店前で「元請けとの団体交渉元年、企業の枠を超えた団体交渉を実現!すべての労働者の労働基本権を勝ち取る!民主労総7・15ゼネスト大会」を開催することになっている。約1万人が参加する見込みで、大会終了後には青瓦台(大統領官邸)前までデモ行進を行う予定だ。
これに合わせ、全国金属労働組合(金属労組)も各事業所で4時間以上のストライキを実施し、ソウル支部は午後1時にソウル雇用労働庁前で集会を開いた後、民主労総のゼネスト大会に合流する。また、傘下組織も業種別のストライキや事前集会を一斉に実施する方針である。
今回のゼネストは、今年3月に施行された、いわゆる「ノランポントゥ法(改正労働組合法)」に基づき、元請け企業の使用者責任を認めることや、下請け労働者との直接交渉に応じることを求めて実施される。
民主労総は、ゼネスト後も元請け企業が団体交渉に応じない場合、今年後半にさらに大規模な闘争を展開する方針を示している。李大統領にとっては頭の痛い問題だ。
(参考資料:W杯の戦績は日本を下回ったが、輸出が日本を追い抜いたことで韓国は留飲を下げた!?)