2026年7月16日(木)

 「佐渡島の金山」を巡る日韓の対立が再燃!世界遺産登録撤回はあり得るのか?

元徴用工問題で当時の尹錫悦政権に抗議する韓国の市民団体(「JPニュース」)

 「佐渡島の金山」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産への正式登録を認められたのは、2024年7月のことである。当時、韓国政府は「韓国人が戦時中に強制動員された場所が世界遺産に登録されることは容認できない」として、日本に登録の見直しを求めていた。

 これに対し、日本政府は登録対象期間を1603〜1867年の江戸時代に限定したことや、強制動員の事実を認めていないことを理由に、韓国側の主張を受け入れなかった。しかしその後、日本政府が朝鮮人労働者問題を含む歴史全体を紹介する展示を佐渡金山近くの施設に設置することや、佐渡金山の管理事務所として使われていた相川郷土博物館で朝鮮人労働者の存在を展示することに同意したため、韓国政府は登録への賛成に転じた。

 それでも、日本政府は韓国側が求めていた「強制性」については言及しなかった。日本は2015年の「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録の際も、ユネスコの意向に従って展示施設を設置したものの、軍艦島で朝鮮人に過酷な労働を強いたとの見方については否定してきた。

 登録から約2年後、ユネスコ世界遺産委員会は、日本の展示内容が登録時の約束と異なり、朝鮮人の強制動員の歴史などが十分に扱われていないとして、追加の履行状況報告書を提出するよう日本政府に求めた。委員会は「資産の歴史全体に関する解説・展示戦略には一定の進展が見られたものの、十分ではない」と評価し、鉱山開発の全期間にわたる歴史が包括的に反映されるよう勧告した。

 「一定の進展が見られた」と評価されたのは、日本が今年前半、佐渡金山内にある朝鮮人労働者宿舎跡や共同炊事場などの関連施設が分かりにくいとの指摘を受け、案内標識を10か所以上新たに設置したことによる。

 日本政府は昨年12月に保存状況報告書を提出していたが、日本統治時代の佐渡金山における朝鮮人の強制動員の歴史については記載していなかった。

 韓国の主要メディアは当時、登録への賛成に転じた尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に厳しい論調を示していた。

 韓国日報は2024年7月29日付で「佐渡鉱山世界遺産登録 日本の歴史歪曲の小細工を容認してはならない」と題する社説を掲載し、「苦痛の歴史が正確かつ適切に記録されることがわれわれの目的だ。『端島の事例』が再現されれば、改善の兆しを見せている日韓関係は必然的に大きく後退するだろう」と論じた。

 経済紙・毎日経済も同28日付の社説で、「日本は2015年、軍艦島などの明治日本の産業革命遺産を世界遺産に登録した際も、朝鮮人強制労役を含む『すべての歴史』を伝えると約束した。しかし、その約束は守られなかった。日本政府が再び約束を破り、歴史を歪曲する過ちを犯さないことを願う。そうでなければ、日韓関係だけでなく、北東アジアの安全保障を悪化させた国家として日本は烙印を押されることになるだろう」と批判した。

 当時野党だった「共に民主党」も、「日本の戦争犯罪の歪曲を黙認したこの政府は、大韓民国の政府なのか、日本の総督府なのか区別がつかない」と尹政権を厳しく批判した。また、「尹大統領は昨年、オムライス一皿で強制徴用工被害者らの血と涙を売り渡し、今度は佐渡金山まで日本に差し出した」と非難した。

 李在明(イ・ジェミョン)政権下の韓国外交部は今年、佐渡金山の現地モニタリングを実施したほか、日韓局長級協議で、佐渡金山の解説・展示に朝鮮半島出身労働者の強制動員問題を明記すべきだとの立場を日本側に伝え、ユネスコ事務局とも継続的に協議を行っている。

 来年12月1日までに新たな履行状況報告書を提出するよう求める今回の委員会決定案は、7月20日から釜山で開催される第48回ユネスコ世界遺産委員会(23日まで)で最終採択される見通しである。議長国が韓国であることから採択は確実視されており、その後、日本の履行状況報告書は2028年開催予定の第50回世界遺産委員会で再検討される予定だ。

 日本が勧告に従わないことを理由に世界遺産登録が直ちに取り消される可能性は低いとみられるが、勧告を無視し続ければ、その可能性が全くないとは言い切れない。世界遺産であっても、その登録基準である「顕著な普遍的価値(OUV)」について国際社会や関係国から疑問が提起されれば、その地位が揺らぎ、登録が抹消された前例がある。オマーンのアラビアオリックス保護区(2007年)、ドイツのドレスデン・エルベ渓谷(2009年)、英国のリバプール海商都市(2021年)の3件はいずれも、開発によってOUVが損なわれたと判断されたことが登録抹消の理由だった。ただし、リバプール海商都市ではユネスコが懸念を表明してから登録が取り消されるまで約10年を要している。

 気になるのは中国の存在である。日本にとって幸いなことに、中国は現在21か国で構成される世界遺産委員会の委員国には含まれていない。しかし、ユネスコにおける中国の影響力は依然として無視できない。一方、日本はユネスコ加盟国の中で2番目に多い分担金を拠出している。

 その中国は「強制労働は日本の軍国主義が対外侵略と植民地統治の過程で犯した深刻な犯罪であり、国際社会の怒りを招くものだ」(中国外交部報道官)として韓国の主張に同調し、日本を批判していた。