2026年7月21日(火)

 李在明政権は日本の「ACSA」提案に今は「ノー」でも 将来は「イエス」と言う?

ソウルで6月に行われた日韓防衛相会談で対座する小泉進次郎防衛相と安圭伯国防長官(右)(出展:韓国国防部)

 韓国にはデジタル版も含め日刊紙は50数紙以上ある。その中に27年前に創刊された保守色の強い経済総合日刊紙「デジタルタイムス」がある。保守紙「文化日報」の姉妹紙として知られている。

 「デジタルタイムス」は経済だけでなく、政治、外交・安全保障、社会、文化など国家全般を幅広く扱い、自由民主主義と市場経済の守護者を自負している。

 その論説室長であるカン・ヒョンチョル氏が7月15日付で「日韓物品役務相互提供協定(ACSA)を急いでいるのは大韓民国だ」と題する論説を掲載し、李在明(イ・ジェミョン)大統領の対日姿勢を痛烈に批判し、これに最大野党「国民の力」や保守支持層から賛同する声が上がっている。日本にとっても気になるところで少し長いが、要点をを引用してみた。

 「ACSAとは、有事や軍事演習の際に、両国軍が食料、燃料、弾薬などの軍需物資を相互に提供し、後日精算する協定である。一部の親北・左派勢力が扇動するような、日本の自衛隊による朝鮮半島再侵略の足掛かりではない」

 「韓国がすでに締結している日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が『目と耳』を共有するものだとすれば、ACSAは実際に戦い続けるための『拳』の持続力を保障する仕組みである」

 「冷静に考えれば、日韓ACSAの締結が頓挫、または遅延した場合、困るのは日本ではなく韓国である。中国の習近平政権が台湾へ武力侵攻し、その余波で朝鮮半島でも全面戦争が勃発する最悪の事態を想定してみよう」

 「韓国軍は世界最高水準の通常戦力を保有しているが、原油や主要な軍用部品を輸入に依存するという構造的な弱点を抱えている。朝鮮半島有事の際、韓国軍が単独で全面戦争を継続できる期間は、長くても1〜2か月程度というのが専門家の一致した見方である。ウクライナとロシアのように戦争が数年に及ぶ長期戦となれば、大韓民国の命運は円滑な兵站補給に左右されるほかない」

 「その補給の生命線こそ、日本国内にある7か所の国連軍司令部後方基地である。横須賀や嘉手納など、日本国内の国連軍後方基地を経由しなければ、米軍の増援部隊や戦争物資を朝鮮半島へ迅速に展開することはできない」

 「日本との軍需支援協定は、有事の際、この後方補給線を寸分の狂いもなく円滑かつ迅速に機能させるための制度的な安全装置なのである。さらに、アフリカや中東など海外派遣先で任務に当たる韓国軍兵士の生命を守る上でも、自衛隊との物資融通は有効である。2013年、アフリカ・南スーダンで反政府勢力の脅威にさらされた韓国のハンビッ部隊が、自衛隊から1万発の小銃弾の緊急支援を受けて危機を乗り切った事例もある」

 李在明大統領は、5月に訪韓した高市早苗首相との会談で、ACSA日韓締結について「国民感情を考えると、現時点では受け入れることは難しい」と伝えたとされる。実際、小泉進次郎防衛相が6月下旬に訪韓した際も、この問題について前向きな対応は示さなかった。すでに6月8日に青瓦台(大統領府)で開いた就任1年の記者会見で日本の特派員からこの問題について質問された際、「私自身は現実的な必要性を感じている」としながらも、「協定に対する国民の抵抗感が強い」との理由から、日韓間の正式な議題とすること自体に消極的な姿勢を示した。

 このことについてカン論説室長は「歴史問題が完全に解決していないからといって、安全保障協力まで拒否することは別問題だ。旧韓末期の為政者たちも大義名分や斥和論に固執した結果、国権を失う悲劇を招いた。感傷的な民族主義に酔い、外交・安全保障上の孤立を自ら招くことは愛国ではなく、国家を危険にさらす自傷行為である」と指摘した。

 さらに、「日本が嫌いだからと屋根の修理を拒み、北朝鮮、中国、ロシアという激しい風雨によって家全体が崩れ落ちる愚を犯してはならない。盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領は、進歩・左派支持層の激しい反対にもかかわらず、済州海軍基地の建設とイラク派兵を断行した。国益と安全保障のために決断したのである」と畳みかけ、「政府は感情論の壁を打ち破り、大韓民国の生存のため、日韓物品役務相互提供協定(ACSA)の締結を速やかに決断すべきである」と進言している。

 李在明大統領が尊敬する盧武鉉元大統領は、反米・民族主義色の強い大統領として知られていた。しかし、ブッシュ政権下でイラク戦争が勃発した際、同盟国である米国からイラクへの派兵を要請されると、世論の6〜7割が反対し、政権内部でも米国の戦争への加担に異を唱える声が多数を占める中、最終的には戦闘部隊を含む派兵を決断した。派遣に転じたことについては様々な理由が挙げられているが、その一つは、派兵を拒否すれば、在韓米軍を縮小される恐れがあったことだ。同時に、イラクで米国を支援することで、その見返りとして、ブッシュ政権が「悪の枢軸」と位置づけた北朝鮮に対する軍事行動にブレーキをかけることができるとの計算もあった。

 このときの盧大統領の決断については進歩層の間では「汚点」とみる向きもあるが、政治的立場を異にする保守層の中には「国際社会で責任ある行動を取った」と評価する声も少なくない。

 李大統領は現在、ACSAに慎重姿勢を示している。しかし、「ブルータス、お前もか」という言葉ではないが、今後、この協定を巡って盧大統領と同じ決断をする可能性は十分にあるのではないだろうか。