2026年7月25日(土)
「新軍国主義の象徴」の小泉防衛相と「危険な軍事独裁者」の金総書記の組み合わせは「最悪」か「最良」か
小泉進次郎防衛相(右)と金正恩総書記(左)(首相官邸HP及び「労働新聞」から筆者キャプチャー)
小泉進次郎防衛相の就任から9か月が経過したが、北朝鮮は今年に入って小泉氏の安全保障政策を露骨に批判している。
今朝も、小泉防衛相が7月17日にインターネット番組で語った「核を含めた安全保障政策を再議論すべきだ」との発言を批判していた。小泉氏は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けたフランスの核抑止力強化や、フィンランドで進む核兵器持ち込み容認の議論に触れ、「日本として議論しにくい課題ではあるが、避けて通れないテーマの一つが核だ」と述べただけだった。
しかし、北朝鮮はこの発言を単なる問題提起ではなく、日本の核武装に向けた政策転換のシグナルと受け止めた。朝鮮中央通信は「核武装への野望を単なる公論化にとどめず、国家の重要政策へ直結させようとする意図だ」と強く反発し、日本が核兵器を大量生産できる潜在能力を有していることにも言及しながら「日本の行動は自ら墓穴を掘る結果を招くだけだ」と警告した。
小泉氏は国会議員になる以前から、地元・横須賀で自衛隊に体験入隊するなど、安全保障分野への関心が高いことで知られていた。
防衛相就任式でも「インド太平洋地域の平和と安定を守るためには、確固たる抑止力と対処力が必要」と強調。日米同盟を基軸に、自衛隊と米軍が能力を最大限発揮できる体制づくりを進める考えを示していた。
北朝鮮は小泉防衛相就任当初、父・小泉純一郎元首相が2002年に初めて訪朝し、金正日総書記との間で歴史的な日朝平壌宣言をまとめた経緯もあり、直接的な個人批判は控えていた。
しかし昨年末、日本を「軍国主義復活を試みる国家」と位置づけ、「新軍国主義」というレッテルを貼って以降、小泉防衛相をその象徴的存在であるかのように名指しで批判するようになった。
今年1月に訪米し、ヘイグ国防長官と会談したことを「海外膨張と平和破壊の道へためらいなく飛び込もうとする日本反動勢力の冒険主義的傾向が再びはっきりと露呈した」と批判し、2月に長射程ミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型」の熊本への配備を開始したことを「再侵略のための戦争準備」との批判を展開していた。
先月も陸上自衛隊が米海兵隊との間で年次合同演習「レゾリュート・ドラゴン(不屈の龍)」を実施したことについて「徹頭徹尾、実戦を想定した戦争演習であり、日本はこれを通じて侵略能力を絶えず向上させている」と、批判の矛先を小泉防衛相に向けていた。
小泉防衛相の「核議論」言及発言を取り上げた今朝の「朝鮮中央通信」は「日本は先進的な核技術を保有し、多数の核爆弾を製造可能なプルトニウムや濃縮ウランを蓄積しており、任意の時点で核兵器の大量生産を実現できることはすでに公然の秘密である」と指摘したうえで「日本の行動は必ずや自ら墓穴を掘る結果を招くだけだ」と警告していた.
日本では「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則が半世紀以上にわたり国是とされてきた。それだけに北朝鮮は今後予定されている安全保障関連文書の改定に合わせ、日本がこの原則を維持するのか、それとも安全保障環境の変化を受けて議論を深めるのかを注視しているとみられる。
日朝間は拉致問題をはじめ、国交正常化交渉も長年停滞したままであり、相互不信は極めて深い。一歩対応を誤れば、偶発的な衝突へ発展するリスクも否定できない。
小泉防衛相は、2024年9月に行われた自民党総裁選で「私が総理になれば、同世代同士として従来のアプローチにとらわれず、新たな機会を模索したい」と語り、金正恩(キム・ジョンウン)総書記との対話の可能性に言及していた。果たしてそれが可能なのだろうか?
父親同士は1942年生まれの同じ年で、趣味もオペラ クラッシク鑑賞と共通するところがあったが、小泉防衛相は今年45歳で、42歳の金正恩(キム・ジョンウン)総書記よりも3つ年上である。小泉防衛相の趣味は野球、サーフィン、映画鑑賞で、金総書記は乗馬、バスケット、スノーボードと一致したものはない。干支も含めて相性は決して良くない。
共通点を敢えて挙げるとすれば、世襲であることと政界デビューが同じであることぐらいだ。小泉防衛相は2009年に父親の地盤を引き継ぎ、初当選し、金総書記も2009年1月に父親の後継者に指名されている。それと、互いに気性が激しいところである。
もちろん、国家間の外交は個人の趣味や「相性」で決まるものではない。しかし、互いに譲らない強い性格同士であるとすれば、対立が感情的な応酬へ発展するリスクがある。
北朝鮮から見れば、小泉防衛相は「新軍国主義の象徴」であり、日本から見れば金正恩総書記は「核・ミサイル開発を進める危険な軍事独裁者」である。こうした相互認識が固定化されればされるほど、対話のハードルは高くなる。
小泉防衛相は「ポスト高市」の最有力候補として注目されている。まだ首相になってもない今の時期からの北朝鮮の「小泉批判」は先が思いやられる。