2026年7月5日(日)

 国際スポーツ社会から批判を浴びる韓国代表監督へのバッシング

洪明甫・韓国サッカー代表前監督(出展:「韓国スポーツ」)

 北中米W杯で1次リーグ敗退に終わった韓国サッカー代表の洪明甫(ホン・ミョンボ)監督は、帰国後に開いた記者会見で「韓国サッカーを愛し、いつも応援してくださる国民の皆様に心よりお詫び申し上げます。本日をもって代表監督を辞任します」と述べた。しかし、帰国からわずか2日後には米国・ロサンゼルスへ向けて出国した。ロサンゼルスには家族が住んでいるとされている。

 出国直前、仁川空港で報道陣の取材に応じた洪前監督は「話したいことはあるが、いつかきちんと話す機会があるだろう」とだけ語り、空港を後にしていた。

 洪監督の突然の渡米について、海外メディアの多くは「身の安全を確保するための出国」との見方を示している。

 スペインの「COPE」は、@帰国時に激しい敵意にさらされたこと、A一部店舗で入店を拒否されたこと、B殺害予告を受けたことなどを挙げ、安全上の理由から米国へ渡ったと報じた。また、同じくスペインの「AS」も、数日にわたり殺害予告が続いていたことや、ソウル市内に洪前監督を標的としたポスターが貼られていたことを伝えた。さらに、アルゼンチンの「オレ」は、韓国警察が殺害予告について捜査を開始したことを受け、洪監督は身の危険を感じて「米国へ避難した」と報じている。

 フランスの「Le10Sport」は、「洪前監督は韓国サッカー史上最高の選手の一人であり、代表主将も務めた人物である。そのような人物がこのような状況に置かれているのは非常に皮肉だ」と伝えた。

 一方、韓国国内では、警察の捜査や国会公聴会への出席を避けるための「海外逃亡」ではないかとの無責任な憶測も飛び交っている。洪前監督が出国時、「帰国日がいつになるか分からないので何とも言えない」と語ったことも、そのような見方に拍車を掛けた。そのため、与党「共に民主党」の(崔敏姫)チェ・ミニ議員は「洪前監督には国民にワールドカップの結果を説明する義務がある」として、国会から出席を求められた場合には必ず応じるよう求めた。

 しかし、李在明(イ・ジェミョン)大統領がSNSで「無能な人物を指揮官に選べば、結果は明らかだ」と厳しく批判したほか、文化体育観光部の崔輝永(チェ・フィヨン)長官も、外部専門家による調査委員会を設置し、違法・不当行為が確認されれば厳正に責任を問うとして特別監査を実施する方針を明らかにしていた。さらに、市民団体による告発を受けて警察が捜査を開始し、国会でも聴聞会の準備が進められている状況を考えれば、洪監督が韓国国内で平穏な生活を送ることは極めて困難だったとみる向きもある。

 警察の捜査開始について、保守大手紙「朝鮮日報」は、サッカー協会の人事を巡る不正疑惑を2年間にわたり捜査してきたソウル鍾路警察署が、今回の捜査をソウル警察庁広域捜査団へ移管したことを取り上げ、「李大統領が怒りを示した後になって本格捜査が始まった。ワールドカップ敗退がなければ捜査は行われなかっただろう」として、警察の対応を批判している。

 サッカーに政治が介入し、問題が刑事事件化するような事態となれば、国際サッカー連盟(FIFA)が乗り出し、韓国サッカー協会に制裁を科す可能性も否定できない。日本のメディからも指摘されているように「政府介入」と判断された場合には、韓国はワールドカップ出場停止などの処分を受ける可能性もある。そのため韓国のサポーターの間では、「サッカー協会会長も監督も辞任したのだから、このあたりで矛を収めるべきではないか」との声も聞かれ始めている。

(参考資料:「天地の差の報道」 韓国はブラジル戦の日本の善戦をどう伝えたのか 韓国国民の反応は?)