2026年6月14日(日)

 トランプ大統領の奇怪な行動 イランとの和平合意直前に「金正恩とのツーショット写真」をSNSに投稿!

トランプ大統領が自身のSNSに投稿した金総書記とのツーショット写真(出展:トランプ大統領のSNS)

 何かと奇怪な言動を取ることで知られるトランプ大統領が、イランとの戦争終結合意を控えた13日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に金正恩(キム・ジョンウン)総書記と一緒に撮影した写真を投稿した。この写真は2018年6月12日にシンガポールで首脳会談を行った際、会談場所である「キャペラ・シンガポール」の庭園を金総書記と散策していた時のものである。

 何の説明もなかったことから、この写真を掲載した意図については、「6月12日が米朝首脳会談の日だったから載せた」という見方から、「過去の和平交渉の実績をアピールしたかった」「習近平主席の訪朝を意識し、金総書記との緊密ぶりを強調したかった」など、さまざまな憶測が飛び交っている。

 中には「イランの次は北朝鮮と和平交渉を行う用意があることを示唆した」という見方まであった。その根拠とされるのが、今年4月13日、訪米した韓国の金民錫(キム・ミンソク)首相とホワイトハウスで会談した際の発言である。「中国訪問を機に金総書記と会うのか」との記者の質問に対し、トランプ大統領は「会うのは非常に良いことだ。ただ、それが今回の中国訪問の時期かもしれないし、そうではないかもしれない。その後になる可能性もある」と答えていた。

 トランプ大統領が北朝鮮に対し再三対話を呼びかけているのは公然たる事実である。しかし、北朝鮮は反応を示していない。

 数日前にも、北朝鮮専門サイト「NKニュース」(6月11日)が、トランプ大統領から金総書記宛ての書簡をニューヨーク駐在の国連担当北朝鮮外交官らに渡そうと複数回試みたものの、北朝鮮側から「受け取りを拒否された」と報じていた。これに対し、ホワイトハウスのレビット報道官は、トランプ大統領が金総書記に書簡を送ろうとして拒否されたとの報道について確認を避けていた。

 トランプ大統領の金総書記宛ての個人的な書簡を、大使であれ国連代表部職員であれ、北朝鮮側がその場で受け取り拒否することがあり得るのかという疑問は残る。しかし、「NKニュース」の報道が事実であれば、レビット報道官がいくら「トランプ氏は金氏とのやりとりを受け入れる意思がある」と説明しても、現在の北朝鮮に応じる意思はないようだ。

 そのことは、金総書記の妹である金与正(キム・ヨジョン)党部長が、米中首脳会談で米中両国が北朝鮮の非核化という共通目標を再確認したことについて、「偽りである」と非難した6月7日の談話からも明らかである。

 金部長は「最も敵対的であったし、現在と未来にも最も暴悪であろうとする腹黒い下心を隠さない言動で表している勢力、我々の正当な自衛的防衛政策に対する是非と、特には『非核化』に対する妄想を取り止めなければならない」と述べ、「非核化」の看板を下ろさない限り米朝首脳会談に応じる意思がないことを改めて示した。

 さらに13日には、北朝鮮外務省のスポークスマンが核協議グループ(NCG)の会合で米韓両国が北朝鮮に非核化を求めたことに反発し、「何人たりとも、時代の流れとともに永久的に消滅した『非核化』を取り戻すことはできない」との談話を発表した。北朝鮮が非核化を前提とした対話に応じない姿勢を改めて示した形だ。

 北朝鮮が強気の姿勢を崩さない理由についてはさまざまな分析がなされているが、興味深い論文がある。

 ブリュッセル自由大学外交・安全保障戦略センター特別研究員のジョン・パク(Jung Pak)氏が最近、米外交問題評議会(CFR)が発行する国際政治経済ジャーナル「フォーリン・アフェアーズ」に寄稿した「北朝鮮はいかにして勝利したのか」と題する論考である。

 パク氏は「今日の北朝鮮は中国とロシアに歓迎される国家として浮上しており、金総書記は国際社会の『のけ者』から地政学的プレーヤーへと変貌した」と述べた。さらに、「核兵器開発、ウクライナ戦争、米中競争が相互に作用する中で、北朝鮮の地位と影響力は朝鮮半島を超え、国際秩序における重要な変数として機能している」と指摘している。

 寄稿文の最後にパク氏は以下のように結論付けている。

金総書記はここ数年で新たな外交ネットワーク、向上した軍事能力、事実上の核保有国としての地位、さらに中国とロシアの後ろ盾まで確保した。そのため、米国がこれまでのように限定的な見返りや人道支援だけで北朝鮮を動かすことは難しくなった。

・国内外の環境や北朝鮮の立場が変化した以上、米国と同盟国の対北朝鮮政策にも従来とは異なるアプローチが必要である。

・過去には北朝鮮との関与や行動抑制のために制裁緩和や経済・人道支援などを活用してきたが、今後対話を再開するためには、それをはるかに上回る見返りを提示しなければならないだろう。

 国連安全保障理事会の経済制裁下でも北朝鮮が経済成長を遂げている現状を報じた米保守紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」(6月7日付)や、北朝鮮体制が崩壊しなかった理由を取り上げた「ニューヨーク・タイムズ」(6月8日付)など、米主要紙が相次いで北朝鮮を特集していることを併せて考えると、もはや旧態依然としたアプローチでは閉ざされた北朝鮮の扉を開くことは難しいようだ。