2026年6月19日(金)
苦境に立たされたロシアへの北朝鮮地上部隊増派の可能性は?「ロシアの武器庫」に徹する!
2年前に平壌で包括的戦略的パートナシップ条約を締結したプーチン大統領と金正恩総書記(労働新聞から)
北朝鮮は、ロシアの首都モスクワがウクライナ軍のドローン攻撃を受けるなど、プーチン政権が苦境に立たされている現状をどのように捉えているのだろうか。
今日(19日)は、プーチン大統領の訪朝を機に締結された「包括的戦略的パートナーシップ条約」から2周年に当たる。
条約は全23条で構成されているが、国際社会にとって見過ごせないのは第3条と第4条である。
第3条には、「双方は、双方のうち一方に対する武力侵略行為が強行されうる直接的な脅威が生じる場合、双方は一方の要求に従って互いの立場を調律し、当面の脅威を除去することへの協力を相互提供するための可能な実践的措置に対して合意する目的で、二国間協商ルートを遅滞なく稼働させる」と規定されている。
また、第4条には、「双方のうち一方が個別の国家または複数の国家から武力侵攻を受け、戦争状態に瀕した場合、他方は国連憲章第51条と朝鮮民主主義人民共和国およびロシア連邦の法に準じ、遅滞なく自国が保有する全ての手段で軍事的およびその他の援助を提供する」と定められている。
この条約は、双方のいずれかが効力停止を通告しない限り、無期限に有効とされている。
北朝鮮による対ロシア武器供給や派兵はこの条約に基づいて行われ、その結果、ロシアはウクライナ軍に占領されていたクルスク州を奪還することができた。
北朝鮮の党機関紙「労働新聞」は、締結から2周年を迎えたこの日、同条約について「戦略的安定を図るための不可欠な法的武器である」と評価し、協力をさらに強化する意思を改めて表明した。
国際面ではなく2面に掲載された「朝露同盟関係の威力はさらに力強く誇示されている」と題する記事の中で、北朝鮮は「わが海外作戦部隊軍人らがロシア軍人と共にクルスク地方を侵犯した新ナチ勢力を撃滅し、国際反動陣営に大きな不安と恐怖を与えた」と回顧した。そのうえで、「強大な国家建設と国際的正義のための朝露両国人民の聖なる共同偉業の勝利は確定的であり、血で結ばれ日々強固になっている偉大な朝露親善は永久不滅である」と結んでいる。
北朝鮮は2024年10月の第1次派兵を皮切りに、計4回にわたり戦闘部隊や工兵部隊など約2万人をクルスク地域へ派遣し、推定で約6000〜7000人の死傷者を出した。一方、その見返りとして食糧やエネルギーを含め総額144億ドル(約2兆3000億円)を手にしたとされる。
現在、ロシアは戦局打開のため兵力増強を図り、若者を対象とした徴兵を進めているが、思うように人員を確保できていないようだ。そこで頼りになるのが「人材ポンプ」ともいえる北朝鮮である。
実際、現状でロシアに派兵できる国は北朝鮮しかない。最も身近な同盟国であるベラルーシの兵力は約4万5000人であり、自国の国境防衛だけで手いっぱいである。これに対し、北朝鮮は約110万人の正規軍を擁する。金正恩(キム・ジョンウン)総書記が出兵を命じれば、即座に兵力を投入することも可能だろう。
ロシアがこの戦争で敗北することは、北朝鮮にとって悪夢である。仮に北朝鮮の核保有を容認してきたロシアが敗北すれば、北朝鮮は強力な後ろ盾を失い、国際社会で一層孤立することになる。
ロシアの国防専門家イーゴリ・コロチェンコ氏は2022年、「北朝鮮は10万人の義勇兵派遣を申し出ていた」と米紙ニューヨーク・ポスト(2022年8月5日付)に語っていた。ベトナム戦争が終結するまで韓国が延べ30万人以上の兵士を派遣したことを勘案すれば、決してあり得ない話ではない。
しかし、北朝鮮の派兵はロシア領土の防衛を大義名分としている。条約に基づけば、北朝鮮の地上部隊の戦闘地域はロシア領内に限定される。国境に近いハルキウ州への攻撃や、国境を越えてのウクライナ侵攻は認められない。領土侵犯に当たるからである。
結局のところ、北朝鮮による支援は武器供給が中心となるだろう。北朝鮮はこれまでにロシアへ数百万発の砲弾を供給しているほか、西側で「KN−23」と呼ばれる戦術誘導ミサイル「火星11ナ」も提供している。
金総書記は今年1月から6月にかけて、戦術誘導兵器の生産工場をはじめ、さまざまな弾道ミサイルや巡航ミサイルの製造施設を視察していた。また、射程900kmの極超音速ミサイル、射程350kmのロケット砲弾、約13ヘクタールの範囲を打撃できる地対地戦術弾道ミサイル「火星11ラ」、新型155ミリ砲弾、さらには人工知能(AI)を活用した戦術巡航ミサイルの発射実験にも立ち会っている。
おそらく北朝鮮は、包括的戦略的パートナーシップ条約締結2周年を機に、独自に開発したこれらの兵器をロシアに供与していくものと思われる。