2026年6月20日(土)
英国と北朝鮮が国交断絶寸前! 北朝鮮が駐英大使を本国に召還
駐英北朝鮮大使館(出展:韓国統一部)
英国と北朝鮮の外交関係が破綻寸前にある。
事の発端は、英国が発表した対ロシア制裁リストに北朝鮮の松涛園国際少年団キャンプ(野営所)を含めたことに対し、北朝鮮外務省が猛反発したことだ。
松涛園国際少年団野営所(キャンプ場)入所式(朝鮮中央通信)
英国政府は先月11日、ロシアによるウクライナの子供らの強制移送や思想教育(洗脳)に関与した疑いのあるロシア関連の団体・個人を対象とする制裁パッケージを発表し、その中に日本海に面した元山にある北朝鮮の松涛園国際少年団野営所(キャンプ場)も含めた。
北朝鮮は、同国の少年団員らに同年代の外国の子供らとの交流、親睦を深める機会を提供する事業の一環として、松涛園国際少年団野営所に友好国の青少年を受け入れている。同キャンプは新型コロナウイルス流行期間中に閉鎖されていたが、2024年にはロシアおよびロシアが占領するウクライナ地域の子どもたちを対象としたプログラムを再開していた。
英国政府は、北朝鮮の少年団野営所がウクライナの子どもらを受け入れたことを「強制移送」への協力とみなし、戦争犯罪や人道に対する罪に加担したと判断したようだ。
これに対し北朝鮮外務省は6月15日、「我が国の児童・生徒のキャンプ施設を事実無根のウクライナの子ども『強制移送』問題と無理やり結び付けて国家の対外的イメージを傷つけ、朝ロ友好・協力関係をおとしめようとしている」と英国の制裁措置を批判した。
そのうえで、「我が国家が最も重視する児童・生徒の権利と利益にまで手を出す妄動を働いた以上、我々はロンドンの悪意ある行為に対応する十分な権利を有している。我が国家に対する英国の重大な敵対行為から生じる全ての結果について、英国政府が全責任を負うことになるだろう」と述べ、何らかの対抗措置を取ることを予告していた。
筆者は5月17日のコラム「なぜ国交を断絶しない 北朝鮮と英国」で、2000年12月の国交樹立以来、葛藤と対立を繰り返しながらも両国が断交に至らない理由について論じた。しかし北朝鮮は今月、文明信(ムン・ミョンシン)駐英大使(53歳)を本国へ召還した。
文明信大使は4月末に任命され、5月に着任したばかりだった。
文明信大使が任命された背景には、対外文化連絡委員会委員長代行や外交団事業総局副総局長を務めた文在哲(ムン・ジェチョル)の息子であり、いわゆる革命第一世代(抗日パルチザン一族)の家系に属すること、さらに在英北朝鮮大使館で書記官として勤務した経歴が重視されたようだ。
書記官在任中には、金正日(キム・ジョンイル)前総書記の死去に際し、人権団体が在英北朝鮮大使館に金正日氏を罵倒する写真を貼り付けたところ、これに激怒して写真を剥がし取り、物議を醸したことで知られている。
2016年7月に韓国へ亡命した太永浩(テ・ヨンホ)前駐英公使は、同年12月に開かれた韓国国会情報委員長および与野党幹事らとの懇談会で、北朝鮮外交官の境遇について「海外に派遣されている北朝鮮の公館員は、業務とは別に外貨稼ぎを強いられている」と証言し、北朝鮮外交官の実態を明らかにしていた。
今回の大使召還は、英国に対する北朝鮮の強烈な不満の表れとみられる。北朝鮮大使館は「不当な制裁が解除されるまで英国との外交関係を臨時代理大使級に格下げする」と表明しているので外交関係そのものは維持される見通しだ。しかし、大使召還は国交断絶の一歩手前の強いメッセージと受け取られることから英国政府が北朝鮮を制裁対象から除外しない状況が続けば、北朝鮮が断交に踏み切る可能性もある。
英国は昨年、30年以上の外交経験を持つサイモン・ウッド氏を新たな駐北朝鮮大使に任命したが、新型コロナウイルスの影響で閉鎖していた北朝鮮駐在英国大使館はまだ再開されていない。英国大使館の閉鎖状態が続いているため、ウッド大使はいまだ北朝鮮に赴任できていない。英国の駐朝大使館は、スウェーデンやドイツとともに、平壌にあるEU共同施設内に設置されている。
なお、初代大使のマイク・ギフォード氏によると、英国が平壌に大使館を置く理由は「北朝鮮が国際社会と積極的に関係を築き、問題を起こさないようにすることにある」とされている。
(参考資料:なぜ国交を断絶しない 北朝鮮と英国)