2026年6月21日(日)

 世界が歓迎している米国とイランの戦闘終結を報道しない「世にも不思議な国」北朝鮮

習近平主席訪朝歓迎宴で挨拶する金正恩総書記(朝鮮中央通信から)

 世界中が米国とイランの戦争終結を歓迎し、世界各国のメディアがトランプ大統領とイランのペゼシュキアン大統領が17日(米東部時間)に署名した終戦に向けた覚書を大々的に報じている。

 しかし、北朝鮮の国営通信「朝鮮中央通信」は、21日正午現在までこれについて全く言及していない。不思議な現象である。

 「朝鮮中央通信」が伝えた国際記事の直近3日間を見ても、19日は「ベラルーシ大統領がウクライナのテロ行為を糾弾」「イスラエルがガザ地区で休戦以来1000人を殺害」など7本。20日は「ロシア外相がウクライナのテロ行為(モスクワへのドローン攻撃)に集中打撃で対応すると警告」、「昨年、紛争地域で殺害された子どもの数は6200人」、「中国で衛星発射」など6本。そして21日は、「露朝包括的戦略的パートナーシップ締結2周年を迎え、ロシアで写真・図書展示会を開催」の1本のみである。

 さらに調べてみると、「イラン」の見出しが付いた記事は3月以降皆無だった。イスラエルによる空爆などレバノン関連のニュースは頻繁に取り上げているものの、イランについてはまるで報道規制をしているかのように、1本もなかった。

 ちなみに2月は、2日の「イラン、英国の敵対的行為に対応すると警告」を皮切りに、「イラン軍総司令官、敵の挑発活動に警告」(9日)、「イラン大統領、国民の団結を呼びかける」(23日)など、その数は27本に上り、ほぼ連日のように取り上げていた。

 しかし、27日の「イラン外務省、米国とイスラエルの虚偽宣言を糾弾」を最後に、「イラン報道」は途絶えてしまった。従って、その後の米国とイスラエルによるイラン空爆や、最高指導者ハメネイ師、イラン革命防衛隊のパクプール司令官らが殺害されたことは伝えられていない。

 北朝鮮は2024年4月14日にイランがイスラエルを攻撃した際には、翌15日には党機関紙「労働新聞」が「イラン、イスラエルに対して報復攻撃を断行」との見出しを掲げ、異例の速さで国民に情報を伝えていた。それと比べると大きな違いである。

 北朝鮮はイラン革命防衛隊コッズ(クドゥス)部隊のカセム・ソレイマニ司令官が、2020年1月3日にイラクのバグダッド国際空港近郊で米軍の無人攻撃機によって殺害された際も報道しなかった。

 トランプ政権を刺激することを避けているのか、あるいは首都・テヘランが米国の空爆を受けた事実を伝えたくないのか。それとも、イランが非核化を受け入れ、米国との和平協議に応じたことに不満なのか。北朝鮮の沈黙の理由は判然としない。

 思えば、イランが2015年7月、国連安全保障理事会による経済制裁発動から9年目にして、オバマ政権との間で制裁解除を条件に核兵器を保有・開発しないことを宣言し、国際社会から歓迎された当時、北朝鮮は外務省の談話を通じて「イランと我々とは実情が異なる。結び付けること自体が話にならない」として、「北朝鮮もイランに見習え」とのオバマ政権の呼び掛けに反発したことがあった。

 その際、北朝鮮は「一方的に先に核を凍結したり、放棄したりすることを論じる(米国との)対話には全く関心がない」と述べ、「一方的に先に核を凍結、放棄した」イランに対する不快感を示していた。

 今回の覚書にはイランが核兵器開発を行わないことや、国際原子力機関(IAEA)による監視・査察の枠組みを拡充する方向性が確認されている。北朝鮮にとっては、イランの非核化を前提とした合意が受け入れ難いものなのかもしれない。

 そのことは、北朝鮮が最近数日間、非核化に言及した日米韓の関連協議やG7首脳会議に対し、反発する声明を相次いで発表していることからもう窺える。

 北朝鮮外務省は14日、米韓核協議グループ(NCG)会議及び日米間の拡大抑止対話(EDD)で「非核化」が取り上げられたことについて「非核化は最終的に終結した問題だ」として強く反発した。また、金与正(キム・ヨジョン)党副部長も18日、「北朝鮮の完全な非核化」の実現意思を盛り込んだG7首脳声明に対し「時代錯誤的だ」と批判し、「非核化は決して越えることのできない不退転の一線だ」と反発していた。

 どうやら北朝鮮は国際社会で「イランを見習って非核化せよ」との声が高まるのを警戒しているようだ。