2026年6月27日(土)

 韓国の「W杯サッカー狂騒曲」 予選リーグ敗退危機で荒れ狂う監督へのバッシング

洪明甫監督(出展:「スポーツ韓国」

 どこの国もそうだが、野球にせよ、サッカーにせよ、ワールドカップとなると、国中がフィーバーする。

 韓国は今中南米大会では初戦のチェコに勝ち、ベスト32入りが確実視されていた。ところが、南アフリカに敗れ、3位に転落したことで国民は落胆の底に突き落とされた。

 それでも南アフリカに敗れた時点では決勝リーグ進出可能な3位グループの8カ国中2位につけていた。しかし、その後、ボスニア・ヘルツェゴビナ、パラグアイ、エクアドル、スウェーデンに加え、今日、韓国より得失点差で下回っていたセネガルがイラクに5―0で大勝し、イランがエジプトと引き分けたことで韓国は8位と、順位を最下位まで下げてしまった。

 明日(日曜日)行われるJグループのアルジェリアがオーストリアに、?グループのコンゴがウズベキスタンに、Lグループのクロアチアがガーナに敗れれば、韓国は生き残るが、3チームが枕を並べて負ける可能性は低く、ほぼ絶望的である。

 韓国の国民が試合結果にやきもきする気持ちも、失意も理解できる。しかし、日本では考えられないような洪明甫(ホン・ミョンボン)監督への一点集中のバッシングは度を越している。まだ敗退が決まってないのに「直ちに解任し、即刻帰国させよ」と、吊るし上げただけでなく、政界の一部では「国会に喚問して公聴会を開くべき」との怒りの声まで上がっている。

 洪監督は現役時代に韓国代表として史上最多となる135キャップを記録した韓国サッカーを代表する選手であり、監督としてもロンドン五輪で韓国史上初の銅メダル獲得に導いた実績を持つ、リスペクトされてしかるべきサッカー界の功労者の一人である。

 洪監督が南アフリカ戦後、3位に転落したことについて「すべては監督である私の責任である」と自戒しているのにサッカーファンや解説者だけでなく、かつてワールドカップをともに戦った元仲間や、朴智星(パク・チソン)、安貞桓(アン・ジョンファン)ら歴代のレジェンド、さらには一般国民までもが激しい批判を浴びせている。「洪明甫は出入り禁止」と店頭に張り紙をしたコンビニエンスストアまで現れたというのだから、開いた口がふさがらない。

 韓国のテレビ各局も容赦がない。「MBC」は「戦術はなかった…『4強神話』の同僚まで洪明甫批判」、「SBS」は「先発・交代・戦術すべてが『落第点』…泥沼にはまった低調な試合」、「MBN」は「即時辞退し、南アフリカから帰国せよ」、「YTN」は「これだから選手が動かなかったのか 再照明された洪明甫の訓練映像」と、それぞれ厳しく批判している。

 韓国メディア「ニューデーリー」は、洪監督について「韓国ワールドカップ史上最悪の監督であり、歴代ワールドカップ最多敗戦監督だ。南アフリカ戦の敗戦は歴史的敗戦として記憶される」と酷評していた。

 新聞に至っては、信じられないことに経済紙までが監督批判の輪に加わっていた。例えば、「ヘラルド経済」(26日付)は、「国民の誇りを大きく傷つけた第2戦(メキシコ戦)、第3戦の内容は専門家やサッカーファンからの(批判の)指摘が決して的外れではなかったことを改めて示した」と論じ、「毎日経済」(26日付)も「南アフリカ戦は屈辱的な敗戦だった。(中略)直接的な責任は洪明甫監督にある。相手を圧倒する戦術も、失点後に流れを変える『プランB』も示せなかった。今回の試合は、柔軟な戦術対応を欠いたまま無力に崩れ去った2014年ブラジル・ワールドカップ・アルジェリア戦の惨敗を思い起こさせる内容だった」と辛辣だった。

 地方紙の「大田新聞」(26日付)までもが、「南アフリカ戦は采配ミスだった。主力の孫興?(ソン・フンミン)と李在城(イ・ジェソン)を先発から外したが、その判断は的中するどころか、組織力は崩壊し、守備は何度も突破され、慌てふためく場面が目立った。ベスト32進出の命運を懸けた試合で、世界的なアタッカーを試合開始からベンチに置いたことは理解しがたい。本来、奇策ともいえる選手起用は相手を混乱させ、自軍の力を最大限に引き出すことが目的だが、結果はまったく逆となった。監督の采配ミスを指摘せざるを得ない」と厳しく論じていた。

 韓国はサッカーに限らず、政治や経済の失政、事故や不祥事が起きると、原因究明よりも責任追及が先行する傾向がある。修学旅行生を含む200人以上が命を落とした旅客船「セウォル号沈没事故」の際も、159人が死亡した「ソウル梨泰院雑踏事故」の際も、さらに乗客179人が死亡した一昨年の済州(チェジュ)航空機事故の際も、真っ先に責任者の追及と処罰を求める声が上がった。

 「男はつらいよ」ではないが、韓国の監督は余りに可哀そうだ。