2026年6月4日(木)

 李在明政権の前途に暗雲漂う 全国地方選で与党が期待外れの結果に 地元安東市長選挙も敗北

李在明大統領(出展:大統領府)

 李在明(イ・ジェミョン)政権発足後初となる全国地方選挙の結果は、李大統領にとって決して喜べるものではなく、むしろ厳しい内容となった。

 韓国では一般的に、新政権発足後に行われる地方選挙は大統領の高い支持率を背景に与党が優勢となる傾向がある。実際、直近2回の地方選挙では政権与党が圧勝していた。

 革新の文在寅(ムン・ジェイン)政権下の2018年に実施された第7回地方選挙では、与党「共に民主党」が17の市・道首長選挙のうち、ソウル市と釜山市を含む15地域で勝利した。敗れたのは保守の牙城である慶尚北道と、その中心都市・大邱市のみだった。

 また、保守の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権下の2022年に行われた第8回地方選挙では、当時与党だった「国民の力」がソウル市と釜山市を奪還するなど12地域で勝利。敗北したのは革新系勢力の地盤である全羅南道、全羅北道、光州市に加え、李在明氏の政治的基盤であった京畿道の計5地域にとどまった。

 こうした前例から、支持率が66%前後と高水準を維持していた李政権下での今回の第9回地方選挙では、「共に民主党」の圧勝が予想されていた。

 しかし結果は予想を下回った。与党は最大の目標としていたソウル市長選の奪還に失敗。さらに元慶尚南道知事の金慶洙(キム・ギョンス)氏を擁立した慶尚南道知事選でも敗北した。同時に実施された国会議員補欠選挙でも、13議席中9議席の獲得にとどまった。

 中でも李大統領にとって象徴的な敗北となったのが、釜山北区甲の補欠選挙だった。

 与党は側近として知られる元大統領府AI首席秘書官の河丁友(ハ・ジョンウ)候補を擁立したが、無所属で出馬した「国民の力」前代表の韓東勲(ハン・ドンフン)候補に惨敗した。

 選挙期間中、韓候補は「この選挙は私と李在明との戦いだ」と訴えた。一方の河候補も「私を勝たせることは李大統領を勝たせることだ」「私への一票は大統領への一票だ」と声高に叫び、李大統領を前面に押し出した選挙戦を展開した。事実上の「李大統領代理戦争」として注目を集めた選挙だっただけに、その敗北は政権にとって大きな痛手となった。

 さらに深刻だったのは、李大統領の故郷である慶尚北道安東市での市長選挙である。与党は元行政安全部次官の新人候補を擁立したものの、現職の「国民の力」候補に1599票差で敗れてしまった。大邱市長選でも盧武鉉(ノ・テウ)政権で首相を務めた大物を擁立し奪還を狙ったが、こちらも敗北に終わった。慶尚北道知事選、大邱市長選と合わせ、保守地盤への攻勢はことごとく実を結ばなかった。

 今回の選挙戦では先月19日に安東市で開催された日韓首脳会談との関連も注目を集めた。高市早苗首相を迎えて行われた会談は、安東市にとって1999年のエリザベス2世英国女王訪問以来、27年ぶりとなる外国首脳の来訪だった。

 野党「国民の力」の張東赫(チャン・ドンヒョク)代表は「なぜ選挙直前に日韓首脳会談を行うのか。意図が見え透いている」と批判したが、政権側には外交成果を地方選挙の追い風につなげたい思惑もあったとみられる。

 しかし、首脳会談は外交面で一定の成果を収めたものの、選挙結果には期待されたほどの影響を与えなかった。地元の歓迎ムードが高まれば政権への評価向上につながるとの見方もあったが、実際の投票行動には結び付かなかった。

 李大統領は首脳会談を成功させるため共同宣言で「我が両国」という表現を繰り返し使用し、日本への親近感を示していた。慰安婦問題や元徴用工問題、佐渡金山のユネスコ世界文化遺産登録問題には全く触れず、「過去」という言葉も一度しか使わなかった。一方で、「未来」という表現を二度用いるなど、未来志向を強く打ち出した。

 また、会場周辺で「日本は不法占領を謝罪せよ」と抗議活動を行っていた市民団体関係者らを排除するなど首脳会談の成功に力を注いだ。

 元慰安婦問題に触れなかったことに対し、与党の支持基盤の一角である市民団体「正義記憶連帯(正義連)」からは厳しい批判が噴出したが、李大統領はそうした反発も意に介さず日韓関係改善を優先した。しかし、その外交的成果は少なくとも今回の地方選挙においては大きな政治的利益には結び付かなかった。 

 ソウル市長を奪還できなかったことで国内の舵取りは一層難しくなり、自身の裁判回避を巡る野党からの突き上げも相当激しくなることが予想される。

(参考資料:韓国統一地方選 ソウル市長選は野党現職が逆転再選 「タマネキ男」は落選・・・次期大統領選にも影響か)