2026年3月16日(月)

 「艦船を派遣せよ」の「トランプの請求書」に韓国は日本の対応を見極めてからイエスかノーを判断

清海部隊第47次派遣でソマリアのアデン湾海域で任務を遂行中の韓国の駆逐艦「テジョヨン艦」

 ブッシュ政権下の米国は、2001年の同時多発テロ後、アフガニスタンを攻撃した際に、日本に対して「ショー・ザ・フラッグ(旗を見せろ)」と自衛隊の派遣を求めた。再びトランプ政権下の米国も、日本に対して艦船の派遣を求める圧力をかけてきた。

 米国は日本だけでなく韓国にも、ホルムズ海峡を通過する船舶を護衛する多国籍連合への協力を求めている。トランプ大統領は「安保請求書」を突き付け、同盟国の中でどの国が「真の同盟国」なのかを試そうとしているようだ。

 韓国政界の反応を見ると、与党「共に民主党」は政府の判断に委ねる立場であるのに対し、最大の保守野党「国民の力」は「我々の将兵の生命と安全がかかる問題を、政府が一方的に判断したり、憲法上の手続きを無視して決定してはならない」として、国会の批准同意が不可欠との立場を取っている。

 李在明(イ・ジェミョン)政権は19日に高市早苗首相が訪米し、トランプ大統領と首脳会談を行う日本の対応を見てからでも遅くないと慎重な立場を崩していない。

 韓国のメディアは今朝の社説でこの問題を一斉に取り上げ、様々な角度から論じていた。以下は社説で取り上げられた各紙とその見出しである。

 ▲保守紙

「中央日報」「ホルムズ派兵要求、国益と同盟を考慮した精緻な戦略を」

「朝鮮日報」「ホルムズの海の道を共に守ろうというトランプの要求」

「東亜日報」「米国のホルムズ派兵要求…『国益と協調』の原則で慎重に衡量すべき」

「毎日新聞」「『ホルムズ海峡に軍艦を送れ』、難題を抱えた韓国政府」

 ▲中立紙

「国民日報」「米国のホルムズ派兵要求・・・同盟と国益をともに考慮すべき」

「韓国日報」「『軍艦を送ってほしい』というトランプ・・・関税で圧力をかけていたのはいつのことか」

 ▲進歩紙

「ハンギョレ」「ホルムズ派兵、国益を損なう戦争に巻き込まれてはならない」

「京郷新聞」「米国のホルムズ海峡への派兵要請は受け入れられない」

 ▲経済紙

「ソウル経済」「軍艦を送れのトランプ 同盟の負担と国益の間で絶妙なバランスを」

「韓国経済」「米、ホルムズ海峡への軍艦派遣を要請・・・試される同盟外交」

 この中から韓国の国民感情を反映しているものとみられる代表的なものを3紙取り上げてみる。

 「中央日報」「ホルムズ派兵要求、国益・同盟を考慮した精緻な戦略を」

 「韓国はこれまで中東地域において比較的バランスの取れた関係を維持してきた。また中東は我が国のエネルギー安全保障の核心軸であり、主要な建設・プラント市場でもある。軽率な軍事介入はイランおよび中東諸国との外交関係や経済的利益に深刻な打撃を与える可能性がある。(中略)一方で、ホルムズ海峡の航行の安全に利害関係を持つ国々が一定の貢献をすべきだとする要求を完全に退けることもできない側面がある。軽率な選択や立場表明は禁物である。中東の状況をはじめとする国際社会の動向を綿密に注視しながら、慎重に対応すべきだ。」

 「韓国経済」「米、ホルムズ海峡への軍艦派遣を要請…試される同盟外交」

 「私たちは原油の70%、液化天然ガス(LNG)の20%をホルムズ海峡を通じて輸入している。戦争の長期化により、この海峡が現在のように封鎖され続ければ、原油価格の急騰による負担はもちろんのこと、供給そのものに問題が生じる。産業全体の生命線である原油などのエネルギー資源をいかにしてでも安定的に輸送する方策を確保しなければならない理由である。(中略)政府は過去にアデン湾海域へ派遣した清海部隊をホルムズへ送り、我が国の商船を護衛した前例がある。直接的な戦争状況ではなかったとはいえ、国益を最優先に据え、経済・安全保障上の必要性を考慮した決定だった。今回は、原油輸送路を安定的に確保すると同時に、韓米同盟の基調をさらに強固にしつつ、軍艦派遣による反発を最小化する方法を見いだすことが急務である。同じ課題を抱えざるを得ない日本など同盟国との連携も検討に値する」

 「京郷新聞」「米国のホルムズ派兵要請、受け入れられない」

 「米国・イスラエルによる先制空爆で始まった対イラン戦争に同盟国をはじめとする他国を引き込もうとしている。韓国が決して受け入れられない無理な要求である。(中略)政府としては、トランプ大統領の要求を拒否した場合に生じ得る韓米同盟の弱体化や各種の不利益を考慮せざるを得ないだろう。しかし、一方的に始めた戦争の軍事的負担を第三者である同盟国に押し付けようとする米国の態度こそ、むしろ同盟精神を損なうものである。これまでのトランプ政権の振る舞いを見れば、今回の要求を受け入れた場合、さらに無理な要求へと繋がらないとの保証もない。政府はもちろん、批准同意権を持つ国会も、ひたすら国家と国民の安全を中心に据え、明確に一線を画さなければならない。」

 総じて、米国とイスラエル主導で行われる対イラン軍事作戦に本格的に加担すること、イランを敵にまわすことのないよう慎重に検討して判断するよう政府に求めているが、その一方で米国との同盟関係を考慮すると、無条件に拒否することも難しいとの苦渋も滲み出ている。ホルムズ海峡の安定は、韓国のエネルギー安全保障や為替・物価など経済に直結する問題であり、「対岸の火事」として眺めていられる問題ではないからだ。

 現状では米国の要請を受け入れる姿勢を見せつつも、イランを刺激しない折衷案が必要で、文在寅(ムン・ジェイン)元政権下の2020年にソマリアのアデン湾で活動していた清海(チョンヘ)部隊が作戦範囲を一時的にホルムズ海峡まで拡大し、韓国商船の護衛任務を遂行した事例が参考になっているようだ。

 清海部隊には4400トン級の駆逐艦と262人の兵力が投入されており、以前、ホルムズ海峡に派遣されたことがある。当時も国会の批准同意が必要との指摘があったもののアデン湾への派遣同意案に「有事の際、国民の保護活動が必要な海域を含む」との文言があり、別途の手続きなしにホルムズ海峡で作戦を行うことができた。

(参考資料:「ホルムズ海峡封鎖」で米国から軍事支援を求められる日韓 韓国は「艦船護衛」日本は「掃海隊派遣」)