2026年3月18日(水)
米国よりも怖い外部情報の流入 「ハメネイ殺害」を人民に知らせないため平壌国際マラソンを中止!?
昨年の平壌国際マラソン大会(朝鮮中央通信)
米国とイスラエルによるイラン攻撃は、北朝鮮にも陰に陽に影を落としているようだ。
目に見えるものとしては、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の公開活動(野外活動)が頻繁であることが挙げられる。
イラン攻撃開始の2月28日から3月17日までの金総書記の動静を確認すると、3月2日の祥原セメント連合企業所視察を皮切りに、首都防御軍団直属の平壌第60訓練基地での射撃競技観戦(3日)、駆逐艦「崔賢」号への乗艦(3〜4日)、国際婦人デー式典出席(8日)、「崔賢」号による戦略巡航ミサイル試射の参観(10日)、第2経済委員会傘下の重要軍需工場視察(11日)、人民軍砲兵分隊の火力打撃訓練参観(14日)、セッピョル通りでの植樹(14日)、最高人民会議選挙投票のための順川地区炭鉱訪問(15日)、対露派兵偉勲記念館建設現場の視察(16日)と、およそ1日おきに公の場に姿を現している。
イランの最高指導者だったハメネイ師が空爆で殺害された際、韓国の保守層や脱北者からは「次は金正日の番だ」との声が高まり、韓国メディアでも「金正日は恐れて外出できないのではないか」との見方が散見された。しかし、そうした予想に反し、金総書記は公開活動を継続している。
強がりなのか、それとも「我々はイランとは違う」との自信の表れなのかは定かではない。ただ、常識的に考えれば、北朝鮮は現在、米国と交戦状態にあるわけではない。平時において、特段の理由もなく金総書記が米国から狙われるとは考えにくい。
金総書記は、2月25日に閉幕した第9回労働党大会での演説で米国について「生まれつきの敵対的視覚と強権体質を持つ、ならず者的性質は全く変わっていない。一時的に隠すことはできても、変えることはできない。それが侵略者の本性である」と警戒感を示した。
その一方で、「平和的共存であれ、永遠の対決であれ、我々はすべてに備えている。その選択は我々ではなく米国にある。我々は長年、敵対的実体である米国に対し準備してきたし、今後もあらゆる形態の挑戦に備え、より果敢に、より集中的に対応していく」とも述べている。「共存か対決か」の選択を米国に委ねているのが、現在の金総書記の基本的な姿勢のようだ。
しかし、強気な姿勢の一方で、4月15日の金日成(キム・イルソン)主席の生誕日(太陽節)を記念して4月5日に予定されていた平壌国際マラソンが、3月9日に理由の説明もなく突如中止と発表された。
平壌国際マラソンは、建国の父・金日成主席の生誕日を盛大に祝賀する行事の一つであり、また国際社会の関心を引く、北朝鮮で行われる唯一の国際競技大会でもある。
昨年、2019年以来6年ぶりに開催された、世界陸上競技連盟認定のこの大会に中国、ロシア、英国、ドイツなど約40カ国から200人が参加した。
今年で32回目となる今大会は、参加者募集の開始と同時に、北京にある北朝鮮旅行専門会社「高麗ツアーズ」に応募が殺到し、わずか5時間で定員の500人に達するほど関心を集めていた。
マラソンコースは例年通り、10万人収容の金日成競技場をスタート地点とし、紋繍通り、平壌大劇場、未来科学者通りなど市内の主要地点を巡って同競技場に戻る設定である。北朝鮮にとっては、松花地区や和盛地区に新たに建設された高層住宅や商業施設を対外的にアピールする好機でもある。また、参加費用(5泊6日のツアー)が昨年並みの約34万円であることを踏まえれば、貴重な外貨収入源でもあった。
中止の理由は明らかにされていないが、米国によるイラン攻撃に関する情報流入を警戒した可能性が指摘されている。
北朝鮮は、米国によるイラン攻撃について外務省スポークスマンの談話を通じて間接的に伝えている。しかし、最高指導者ハメネイ師が爆死したことや、テヘランが激しい空襲で大きな被害を受けているといった詳細な戦況については一切報じていない。また、それ以前の米軍によるベネズエラ侵攻についても、マドゥロ大統領が寝込みを襲われ、夫人とともに拘束・連行された件は伏せられている。
金総書記は先の演説で韓国について「和解と協力の機会を利用して我々の内部に自国の文化を流入させ、それによる変化を狙い、ひいては体制の崩壊を企図してきた」と強い不信感を示した。
情報統制を徹底させている国家体制である以上、外部からの情報や文化の流入こそが最大の脅威であることは間違いない。