2026年3月2日(月)
ロシアを軍事支援した北朝鮮は「反米同志国」のイランにはどう対応するのか
イランを訪問した当時の金永南最高人民会議常任委員長とハメネイ師(労働新聞)
北朝鮮は外務省スポークスマンを通じて1日、米国とイスラエルによるイラン攻撃について「侵略行為であり、最も醜悪な主権侵害である」と非難する談話を発表した。
談話では「米国とイスラエルの侵略戦争行為は、いかなる場合にも容認されない」と糾弾したうえで、「地域の当事国と利害関係を持つ国々は、偽りの平和の看板の下で侵略と戦争を選択した不法行為者らの本質を正確に把握し、中東情勢の流れを平和と安定の本道に戻すうえで当然の責任を果たすべきだ」と主張。関係国に対してイランの事態を座視せず、外交努力を含む何らかの行動を取るよう促した。
「地域の当事国と利害関係を持つ国々」と具体的な国名は挙げていないが、中東諸国やEU諸国、さらには中露などを指しているとみられる。もっとも、北朝鮮自身もイランと利害関係を有する国である。
北朝鮮はイランと国交がある。イラン革命前のパフラヴィー朝時代に国交を樹立している。1980年に勃発したイラン・イラク戦争ではイランを支援し、武器などを提供した。このため当時、サダム・フセイン政権下のイラクとは国交断絶を余儀なくされた。こうした恩もあり、1989年にはハメネイ師(当時大統領)が初めて訪朝し、金日成(キム・イルソン)主席と会談している。
北朝鮮からも2012年9月、当時序列2位だった金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長が訪朝し、ハメネイ師と会談しているが、この際、ハメネイ師は「我々には共通の敵がいる」と述べ、北朝鮮との連帯を内外にアピールした。
また、金正恩(キム・ジョンウン)政権が核問題でトランプ政権と一触即発の状況に陥っていた2017年8月にも金永南委員長が軍事専門家を伴って再びイランを訪問した。ハメネイ師のほか、ロウハニ大統領や保守強硬派として知られたラリジャニ国会議長らが応対し、ラリジャニ議長は当時、トランプ政権の圧力に屈しない北朝鮮を「賞賛に値する」と称賛し、金永南委員長も「ミサイル開発に誰の許可もいらない」とするイランの立場を支持していた。
イスラム革命防衛隊コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官が2020年1月にイラクのバグダッド国際空港近郊で米軍の無人機攻撃により殺害された際には、金正恩総書記自らがイラン側に見舞いのメッセージを送っている。昨年10月の朝鮮労働党創建80周年行事にイランは代表団を派遣し、両国は緊密な関係にある。
イランは米国とイスラエルの空爆に対し、地対地ミサイルや巡航ミサイルで応酬している模様だ。一昨年7月に核施設を攻撃された際もミサイルで反撃していたが、その90%以上が迎撃されたと伝えられた。ただし、「ファタ」と命名された極超音速ミサイルについてはイスラエルの防空システム「アイアンドーム」でも迎撃できなかったとされる。
極超音速ミサイルに関していえば、北朝鮮はイランより2年早く試射に成功したとされる射程約1000キロの「火星8型」を保有している。
戦闘が長引けば、イランはいずれミサイルも底をつく。北朝鮮は周知のとおり、ウクライナと現在、交戦中のロシアに対し、武器のみならず兵力まで派遣している。
170ミリ自走砲、240ミリ多連装ロケット砲、短距離ミサイル、さらには北朝鮮版「イスカンデル」と呼ばれる戦術誘導ミサイルまで、ロシアへ搬出したコンテナは、韓国国防情報本部の推定で約3万3千個に上るとされる。加えて、2024年10月の初派兵以降、約1万6千人以上がロシアに派遣されている。これによりロシアがウクライナ軍に一時占領されたクルスク州を奪還できたことは公然の事実である。
圧倒的な軍事力を誇る米国とイスラエルに徹底抗戦するにあたり、イランにとって北朝鮮からの支援は喉から手が出るほど切実だろう。しかし、北朝鮮が軍事支援に踏み切る可能性は低いとみられる。理由は主に4つある。
第一に、ロシアとは「一方が軍事攻撃を受けた場合、遅滞なく自国が保有するすべての手段で軍事支援を行う」と定めた「包括的戦略パートナーシップ条約」があるのに対し、イランとの間にはその種の相互安保条約がないこと。第二に、地理的制約からイランまでの輸送手段が容易ではないこと。第三に、イランがミサイル攻撃を行っている中東のクウェートやUAEなどとは米国やイスラエルとは異なり北朝鮮も国交を有していること。そして第四に、相手が軍事大国である米国であることだ。対応を誤れば、ブーメランのように自国に跳ね返る恐れがある。
イランへの同情があったとしても、他国の問題で過大なリスクを冒すことはできない。結局のところ、威勢のよい言葉を発しても、「義兄弟の関係」にあったシリアのアサド政権が内戦で瓦解した際と同様にただ指をくわえて傍観するほかないだろう。