2026年3月26日(木)

 クリントンもブッシュもオバマもトランプも北朝鮮に対して先制攻撃を検討したが、実行できなかった!

トランプ第1次政権の時に北朝鮮攻撃を検討したホワイトハウスでの会議(出典:ホワイトハウス)

 米国によるイラン攻撃の大義名分は、イランの核開発阻止である。トランプ大統領は、交渉によって核開発を断念させるのは不可能だと判断し、軍事力の行使に踏み切った。

 「トランプ大統領だから成せる悪行」との声も聞かれるが、トランプ政権に限らず、力の行使は言わば米国の「伝統」であり、「専売特許」でもある。

 では、歴代政権は北朝鮮の核開発に対してどのように対応したのか。戦略的忍耐政策を取り、何もしなかったオバマ大統領を除外し、クリントン元大統領からみてみることにする。

 北朝鮮は1990年代初頭に寧辺に原子力発電所を建設・稼働させ、核爆弾の原料となるプルトニウムを抽出していた。北朝鮮は「平和利用のため」と主張していたが、国際原子力機関(IAEA)の査察を拒否したことから、米国は密かに核開発を進めているとの疑いを強めた。

 IAEAの代理的役割を担う形で、米国は北朝鮮との外交交渉に乗り出し、ニューヨークなどで高官会談を実施した。その結果、1993年6月、米国は@核兵器を含む武力を使用せず、武力で威嚇しないことを保証する、A経済制裁を緩和し関係正常化を図り、1995年末までに連絡事務所を設置する――ことを約束した。一方、北朝鮮は@核施設を凍結し、使用済み燃料棒を密封して第三国に移転する、A軽水炉供与と引き換えにすべての核施設を解体する――ことで合意し、共同声明が発表された。

 しかし、北朝鮮が約束を履行しなかったため、いざとなれば攻撃する構えで、1994年5月から6月にかけてホワイトハウスではシュリカシュビリ統合参謀本部議長らと北朝鮮への先制攻撃の検討に入った。

 ゴーサインが出される直前、民主党のカーター元大統領が6月15日に訪朝し、金日成(キム・イルソン)主席との間で核施設の凍結に合意したことで軍事衝突は回避された。

 3年後、韓国の朴寛用(パク・クァンヨン)大統領秘書室長は当時の状況について「核疑惑が浮上した際、米国は北朝鮮を攻撃しようとした。米国は我が大統領を優柔不断だと批判していた。米国の空気は軍事行動に傾いていた。朝鮮半島で戦争が起きることは我々は絶対に容認できない。爪先にトゲが刺されば我々は痛いが、米国はそうではない。戦争の可能性が0.1%でもあれば我々は不安だが、米国はそうではない」と述べていた。

 また、ペリー米国防長官も1997年、あるセミナーで「私はクリントン大統領に対し、いずれ米国に向けて発射されるかもしれない核を北朝鮮が保有するのを放置するのか、それとも戦争のリスクを冒してでも阻止するのか、どちらかを選ぶよう求めた。クリントン大統領は後者を選んだ。ところがカーター元大統領からホワイトハウスに電話が入り、わずか1時間で歴史が変わった」と述べ、戦争直前であったことを明かしていた。

 クリントン政権から北朝鮮の核問題を引き継いだブッシュ政権もまた、北朝鮮が核を放棄しなければ武力行使も辞さない姿勢を一貫して示していた。

 ブッシュ政権も交渉による解決を模索し、2002年10月にケリー国務次官補を訪朝させ、その結果、北朝鮮は同年12月に核凍結を解除し、施設の稼働再開を宣言。しかし、翌2003年1月に北朝鮮が不意にNPT(核不拡散条約)からの脱退を表明したため、武力行使を真剣に検討した。

 ブッシュ大統領は2010年に出版した回顧録「決断の瞬間」で、2003年2月10日に訪米した中国の江沢民国家主席に対し、「外交的に解決できなければ北朝鮮への軍事攻撃を検討せざるを得ない」と警告したことを明らかにしている。

 ブッシュ政権は2003年8月、中露および日韓を加えた六者会合により北朝鮮の核開発の一時凍結に成功したが、それでも2005年まで「米国は武力行使を排除しない」(ライス国務長官)との強硬姿勢を崩さなかった。

 オバマ政権でも、2012年4月、当時の米太平洋軍ロックリア司令官は「北朝鮮が3度目の核実験を行った場合、基地に対する局地攻撃の可能性がある」と述べ、またオバマ大統領自身も2014年4月、ソウルの竜山基地での演説で「同盟国防衛のためには軍事力行使もためらわない」と表明していた。しかし最終的には、「戦争になれば韓国が深刻な影響を受ける」として、「軍事的解決は考えていない」とし、武力行使には踏み切らなかった。

 北朝鮮はオバマ大統領在任中の2016年1月までにすでに4回の核実験を実施していた。核を保有する相手に対しては軍事作戦を取れない――これが結論である。

 実際、「狂人をこれ以上暴走させてはならない」として、トランプ大統領も2017年後半から2018年初頭にかけて「北朝鮮が米国を脅かすなら、世界が見たことのない炎と怒りに直面することになる」と警告し、武力行使を検討したが、最終的には踏み切らなかった。

 その後、金正恩(キム・ジョンウン)総書記との首脳会談に臨んだトランプ大統領は、「もし戦争になっていれば、2000万〜4000万、いや5000万人の死者が出る大惨事になった可能性がある」と述べ、戦争のリスクの大きさを強調していた。

 裏を返せば、核保有国を相手に軍事攻撃は取れないということである。換言すれば、イランは核兵器を保有していないため、トランプ政権はいとも簡単に軍事作戦に踏み切ることができたとも言える。