2026年3月6日(金)

 北朝鮮が米国の心理戦を超警戒 「敵は外ではなく内部に」

昨年11月に韓国で「北朝鮮のゲシュタポ」と称されている国家保衛部を視察した金正恩総書記(労働新聞から)

 イランの事態を注視している金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、韓国や日本で「次は北朝鮮」とか「ハメネイの次は金正恩の番」と囁かれていることに不愉快な思いであろう。

 その思いを韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が代弁するのも何とも妙な話だが、シンガポールやフィリピンなど東南アジア諸国を歴訪して帰国した李大統領は、昨日(5日)、SNSで米国とイランの戦争に関連し、「『次は北朝鮮だ』などという奇妙なことを言う人がいる」と問題提起し、「朝鮮半島の平和と安定を不安定にして何の得があるのか」と不満を表していた。

 そもそも「次は北朝鮮」という言い方は、今に始まったことではない。西側諸国では、北朝鮮に似た体制や指導者が倒れた時に言われる、いわば「慣用句」となっている。

 振り返れば、古くは兄弟国であった東ドイツや、ルーマニアのニコラエ・チャウシェスク政権が雪崩現象のように崩壊した時も「北朝鮮も時間の問題」と言われた。また、米国の元大統領ジョージ・W・ブッシュから「悪の枢軸」の烙印を押されたサッダーム・フセイン政権が瓦解した時も、リビアのムアンマル・カダフィ大佐が民衆蜂起により倒された時も、「次は北朝鮮」が「流行語」になったほどだ。

 今回も「独裁者」と称されたベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領と、イランの最高指導者アリー・ハーメネイーが枕を並べ、米国によって「駆除」されたことで、「米国に逆らう者は皆、同じ目に遭う」という文脈から、「次は北朝鮮」と言われ始めているようだ。

 米国などでは、メディアが「次は北朝鮮」と騒げば騒ぐほど、金正恩体制が動揺するため、あえて煽っている節もみられる。「核を持っていればやられるのだから、放棄するのが生きる道」とか、「トランプが会おうと呼びかけているうちに対話に応じた方が得策だ」とか、陰に陽にプレッシャーをかけることができるからだ。

 北朝鮮が最も警戒しているのは、おそらく米国の武力侵攻ではなく、この種の心理戦による内部の動揺や亀裂である。

 先月25日に朝鮮労働党第9回大会が閉幕したが、前回の第8回大会の際には、党大会参加者ら全員による金正恩総書記への忠誠を誓う集いが開かれ、「金正恩同志の思想と意思と運命を共にする戦士になる」という宣誓文が採択されていた。

 この宣言文のベースとなっているのが、フセイン政権崩壊(2003年)後に作成されたとされる「一心団結して首脳部を決死擁護せよ」と題する文書である。A4サイズで39枚、朝鮮人民軍総政治局が作成したものとみられ、軍幹部や将校向けの学習教材として使用されている。概要は以下の通りである。

 ▲イラク軍は土壇場で投降・変節した
 最高司令官同志に対する絶対的、無条件的な崇拝心を持たなければならない。イラク戦争が差し迫った際、バグダッドでイラク軍の閲兵式が行われた。ここに参加した軍人らは全員フセインに忠誠を誓い、侵略者らと最後まで戦う決意をしていた。しかし、自らの指導者への崇拝心に基づく信念が欠けていた。戦局が不利になり、心理戦が極度に達すると、指揮官と軍人らは投降・変節した。大統領も国の運命も眼中にはなかった。良心が清くなく義理を守らない者は、革命の高揚期には忠臣として化け、試練の時には好臣として本性を現す。最後には醜い背信者、変節者として脱落する。

 ▲首脳部決死擁護は最大の重大事である
 革命の秘訣は団結である。一心団結して首領を決死擁護することだ。革命首脳部の決死擁護は、一心団結の中心を守る最大の重大事である。今、敵が我が革命首脳部に向けて悪あがきをしながら策動しているのは、党と軍、人民の信念の柱を倒し、革命隊伍の一心団結を破壊しようとしているからだ。我々を軍事的に絶えず脅している。また、経済封鎖を強化し、国の経済状況と人民生活を極度に緊張させている。革命の首脳部から人民大衆を切り離そうとあがいている。

 ▲敵は革命首脳部を除去しようとしている
 今、敵は我が国を孤立・圧殺しようと、反革命的攻勢の矛先を革命の首脳部に向けている。敵は武力圧殺や経済制裁のような方法を使っても資金と時間の浪費に過ぎず、効果がないことに気づくだろう。それゆえ最も近道は革命の首脳部を除去することだと見ている。首脳部護衛事業に関連した秘密を盗み出そうと、あらゆる手段と方法を講じている。我が制度に恨みを持つ者を前面に立て、革命の首脳部の権威を中傷し、我が内部を瓦解させようと悪辣に策動している。

 ▲敵の賄賂は毒でなければ、打首である
 人民軍指揮官らは、どのような環境や条件下にあっても不正との戦いでは旗手にならなければならない。贅沢に反対し、簡素な生活を送り、質素な習慣を身に付けなければならない。「敵の賄賂は毒でなければ打首である」という言葉がある。敵の賄賂攻勢に決して嵌ってはならない。敵からの賄賂を手にした者は必ず死の道を歩む。イラクに対する買収作戦で成果を味わった米国は、我が国に対してもその方向を適用しようとして狡猾に策動している。敵の餌に飛びつけば、革命の背信者、変節者として堕落することになる。

 ▲敵の謀略宣伝に乗ってはならない
 銃を手にした軍隊が敵の脅しと懐柔、悪辣な謀略宣伝に乗り、信念と秩序を捨て、背信と変節の道に進めば、自らの指導部を守れない。これはソ連、ルーマニア、イラクの教訓である。敵の謀略宣伝の主な対象は我が人民軍隊、特に指揮官らだ。固い信念と秩序を守らなければならない。革命の首脳部を守れなければ、敵の絞首台に真っ先に上がるのは我々指揮官である。

 ちなみに北朝鮮は昨年末、金総書記を護衛・警護する党中央委員会護衛処、国務委員会警衛局、人民軍傘下の護衛司令部、秘密組織である護衛局のうち、3つの組織のトップを交代させている。