2026年3月8日(日)

 イラン攻撃の最中に米韓合同軍事演習 北朝鮮は強硬な対抗措置を取れるのか?

昨年10月の労働党創建80周年軍事パレードに登場した新型ICBM「火星20型」(朝鮮中央通信)

 米韓の間で規模と期間を調整していた今年上半期の米韓合同演習「フリーダム・シールド(自由の盾)」が予定通り明日(3月9日)から始まる。

 米韓合同軍事演習は毎年上半期(3〜4月)と下半期(8〜9月)に定期的に実施される、30年以上も続いている言わば「恒例行事」で、昨年も3月10日から実施されていた。

 米韓連合軍の発表によると、演習期間はこれまでと同様に11日間で3月19日まで実施されるが、陸海空と宇宙、それにサイバーなどのすべての領域での実動機動訓練の回数については2月末に演習の日程を発表する直前まで調整がつかなかった。

 「明確に大規模で防御的な性格を持つ演習として実施されるべき」(在韓米軍司令部広報室)と現状維持を主張する米国に対して韓国側が訓練規模の縮小を譲らず、平行線を辿っていた。

 結局、大規模な兵力と装備が動員される野外機動訓練は南北関係改善のため北朝鮮を刺激することを避けたい韓国側の意向が反映され、実動機動訓練の回数は昨年の51件から22件と、半分以下となった。内訳は旅団(3000〜5000人)級が6件、大隊(500人から1000人)級が10件、中隊(100〜200人)級が6件となっている。

 韓国側の配慮にもかかわらず、北朝鮮は期間や規模に関係なく米韓合同訓練を「北侵(北朝鮮侵攻)の演習だ」と非難し、毎年敏感に反応してきた。今年はよりによって最高人民会議開催中に行われる。

 昨年、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の代弁人である妹の金与正(キム・ヨジョン)党副部長(現党総務部長)が演習開始1週間前に「米国は新しい政府(トランプ政権)が発足するやいなや、前政府の対朝鮮敵視政策を継承し、我々に反対する政治的・軍事的挑発行為をエスカレートさせている」との非難談話を出し、「米国は我々の意志と能力を試そうとするな。それは非常に危険なことである」と警告を発していた。演習の前日には北朝鮮外務省が「公報文」で、「(合同軍事演習は)物理的衝突を誘発しかねない危険な挑発的妄動だ」として、「最強硬対応」を取ることを警告していた。

 しかし、対抗措置は「最強硬対応」には程遠く、演習開始と同時に内陸から黄海(西海)に向けて弾道ミサイル数発を発射したことと演習最終日(3月20日)に新型対空ミサイルの性能を点検するための試射を行っただけにとどまった。米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」が参加し、韓国海軍と日本の海上自衛隊との間で17〜20日まで済州島南方の海上で共同訓練を実施しても「最強硬対応」を取ることはなかった。

 昨年8月に下半期の演習(8月18〜28日)が実施された時も演習期間中に金与正氏が李在寅(イ・ジェミョン)政権に対して「小細工はむなしい愚かな夢に過ぎない。韓国が訓練を延期しようが縮小しようが、我々は関心がない」と批判し、また金永福(キム・ヨンポク)第1副総参謀長が非難談話を出した程度で、ミサイルの試射も行わなかった。演習終了から3日後に金総書記がミサイル総局傘下の化学材料総合研究院を視察しただけだった。

 では、今年はどうか?

 金総書記は先月25日に閉幕した第9回朝鮮労働党大会での演説で「(米政府が)憲法に明記された我が国の(核保有国としての)地位を尊重し、対朝鮮敵視政策を撤回するなら、米国と良好な関係を築けない理由はない」と述べていたが、米韓合同軍事演習は北朝鮮からすれば「生存権を脅かす」最たる敵視政策の象徴である。

 条件付きではあるが、米国が対話の呼びかけを無視し、軍事演習を強行することは金総書記の沽券にかかわるとみなせば、昨年とは一転し、強硬手段を取る可能性は否定できない。まして、「米国のイラン攻撃が北朝鮮への警告になっている」とか、「北朝鮮が怯えている」と言われれば言われるほど強気に転じる可能性が高い。

 問題は北朝鮮が選択すべき対抗措置である。これまでのように軍事演習や短距離ミサイルの発射程度ならば米国は痛くも痒くもないが、北朝鮮が自制している7度目の核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)のカードを切るようなことになれば米国を大いに刺激するのは自明だ。これらのカードはトランプ政権にとっては切ってはならないカードだからである。

 北朝鮮は2017年9月7日に6度目の核実験を行って以来、核実験を実施していない。ICBMについてもバイデン政権の2024年10月31日に「火星19型」を試射して以来、これも自制している。昨年労働党創建80周年記念軍事パレードでお披露目した超大型ICBM「火星20型」の発射も控えたままである。

 「それを言っちゃあおしまいよ」はフーテンの寅の代表的なセリフが、トランプ大統領にとっては「それをやったらおしまいよ」とみなしているカードを切るには相当の勇気と覚悟がいるようだ。

 北朝鮮が米国のレッドラインを越せるのか、金総書記の度胸が試されている。

(参考資料:「イランの次は北朝鮮?」 トランプ政権は核を手放さない金正恩政権にも軍事的手段を行使するのだろうか