2026年3月9日(月)
「北朝鮮がイランにミサイルを支援する」「北朝鮮が参戦する」との怪情報が飛び交う!
金総書記の発言を捏造した「Iran HD」Xアカウント(出典:「オーマイニース」)
米国とイスラエルのイラン攻撃から、今日(9日)で10日が経った。制空権を握った米国とイスラエルによる連日の激しい空爆により、首都テヘランはまるで「火の海」と化しているようだ。
イランもミサイルや無人機でイスラエルに反撃を試みている。しかし米国本土に直接届く攻撃手段を持たないことから、中東地域にある米軍基地や領事館などを攻撃しているようだ。だが、それが逆効果となり、クウェートやカタール、UAEなど米軍基地を置いている諸国の猛反発を招き、孤立感を深めている。
すでにUAEなどはイランへの攻撃を開始したとの報道もあり、今後、他の中東諸国も足並みをそろえてイラン攻撃に加わるようなことになれば、完全に袋小路に追い込まれることになる。
頼みの綱であった友好関係にあるロシアと中国は、米国やイスラエルに攻撃を止めるよう外交的に働きかけているものの、肝心の軍事支援については、米国と事を構えるのは得策ではないとして及び腰である。
ロシアからすれば、イランを支援するよりもウクライナ和平に向けて米国の協力を取り付けることが喫緊の課題である。また中国にとっても、今月末に北京で米中首脳会談を控えているだけに、トランプ大統領の機嫌を損なうことは何の利益にもならないと、腕を組んだままである。それぞれの事情があり、両国とも否応なく慎重にならざるを得ない。
孤立無援の状態に置かれたイランを見るのがいたたまれないのか、韓国紙「オーマイニュース」(3月6日付)が報じたところによると、同じイスラム教の国インドネシアのニュースポータル「シンドニュース(Sindonews)」には、3月1日付の北朝鮮外務省の談話を引用しながら、「金正恩は、イランが要請した場合、北朝鮮がイランにミサイルを供給する準備ができていると明らかにした」とし、「核武装国家の指導者は『ミサイル一発でイスラエルを完全に破壊できる』と強く警告した」と報じていたという。
これは誤報どころか、明らかにフェイクである。
北朝鮮外務省報道官は、米国とイスラエルによるイラン攻撃を「侵略行為であり、最も醜悪な主権侵害である」と非難し、「地域の当事国と利害関係を持つ国々は、偽りの平和の看板の下で侵略と戦争を選択した不法行為者らの本質を正確に把握し、中東情勢の流れを平和と安定の本道に戻すうえで当然の責任を果たすべきだ」と呼びかけたものの、イランへの武器支援や参戦の可能性には全く言及していない。北朝鮮はこの日以降、イラン問題に関して談話も声明も出していない。
前出の「オーマイニュース」によると、米国・イスラエルとイランの戦争以降、X(旧ツイッター)やフェイスブックなどのソーシャルメディアには、事実かどうか確認されていない虚偽情報が拡散しており、その中には北朝鮮関連の内容も相当数含まれているようだ。
例えば今月3日には「Iran HD」Xアカウントなどソーシャルメディアを通じて「我が国民がイランにいる。彼らの帰還は交渉の対象ではない。たとえ1人でも傷つけば、ためらわず戦争に参加する」との金正恩(キム・ジョンウン)総書記の声明が発表されたとする投稿が広がったようだが、これも虚偽である。
確かにテヘランには北朝鮮の大使館があり、韓誠宇(ハン・ソンウ)大使ら外交官が駐在している。しかし、北朝鮮大使館が空爆で被害を受けたとする情報は流れておらず、北朝鮮からのそうした報道も皆無である。
それでもこうしたフェイク情報が乱舞する理由の一つは、ラファエル・ハルパズ駐韓イスラエル大使がソウル・光化門での記者会見で「イランは国際社会で孤立しており、今イランを歓迎する友人は北朝鮮だけだ」と発言したことが引き金になったものと推測される。
もう一つは、北朝鮮が1980年のイラン・イラク戦争でイランを支持し、武器を供給した前歴があることや、現在、欧米諸国に対抗してミサイルなどの武器をウクライナ戦争のただ中にあるロシアに提供していることなどが挙げられる。
北朝鮮は、一昨年4月にイスラエルとイランが交戦した際もミサイル支援を行わなかった。当時、米国務省のマシュー・ミラー報道官が記者会見で「我々はイランと北朝鮮の核・ミサイル協力を信じ難いほど憂慮している」と発言していたが、米国防総省のパット・ライダー報道官は「イランがイスラエル攻撃に北朝鮮の兵器を使用した可能性はあるのか」との質問に対し、「推測できない」と述べ、肯定しなかった。
反米の同志国であるイランを助けたい気持ちはあっても、障害が多く、まして米国が相手だけに手が出せないのが、今の北朝鮮の現状なのだろう。
(参考資料:ロシアを軍事支援した北朝鮮は「反米同志国」のイランにはどう対応するのか)