2026年5月2日(土)
北朝鮮女子サッカーチームの訪韓に期待を寄せる韓国 5月20日に水原で南北準決勝対決
タイで4月行われた「Uー20女子アジアカップ」での南北対決(出展:韓国サッカー協会)
南北関係が完全に断絶してから3年が経つ。「打てど響かず」で韓国が対話、交流を呼びかけても北朝鮮はだんまりだ。そんな八方塞がりの李在明(イ・ジェミョン)政権にとって千載一遇のチャンスが訪れた。
今月20日に韓国の京畿道・水原総合運動場で韓国の「水原FCウィメン」と北朝鮮の「ネゴヒャン(我が故郷)」によるアジアサッカー連盟(AFC)女子チャンピオンズリーグ準決勝(もう一試合は日本の「東京ヴェルディ」対豪州の「メルボルン・シティ」)が予定されているからだ。
「ネゴヒャン」が参加すれば、北朝鮮女子サッカーチームの韓国訪問は2014年仁川アジア大会以来12年ぶりとなる。
北朝鮮選手団の訪韓は、単なるスポーツ交流を超えて南北関係緩和のシグナルと解釈される可能性が高い。実際に2018年の平昌冬季オリンピックへの北朝鮮参加をきっかけにそれまで冷え込んでいた南北関係が急速に改善した前例がある。
北朝鮮は準決勝の開催地について触れなかったもののすでに3月29日に朝鮮中央テレビを通じて準決勝進出の事実を国内に知らせている。当然、参加を放棄した場合は決勝進出権は「水原FCウィメン」に与えられる。ボイコットするのか、それとも電撃出場を決めるのか、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の胸三寸である。
韓国のサッカー協会は北朝鮮の不参加に傾いているが、金総書記がサッカー愛好家であることや政権初期から「体育強国建設」を主要課題として掲げ、特に昨年12月27日の北朝鮮の憲法節行事では、女子17歳以下ワールドカップ優勝を自ら激励するなど女子サッカーに期待を寄せていることから試合出場を強行する可能性があると韓国は一縷の望みを持っているようだ。
北朝鮮女子サッカーはFIFAランキング10位で世界トップレベルにある。2025年のFIFA U−17女子ワールドカップでは史上最多となる4度目の優勝を果たした。前年の2024年にはFIFA U−20女子ワールドカップとU−17女子ワールドカップの両方で優勝している。今年初めにはタイで行われたAFCU−20女子アジアカップでは決勝で日本に0−1で敗れたが、準優勝を果たしている。
南北対決をみると、女子U−20代表は予選で韓国を5対0,準決勝で3対0と圧倒している。この年代の南北対戦はこれまで9回行われ、韓国は1勝8敗である。男子と違って、女子の試合では韓国は北朝鮮に歯が立たない。
女子サッカー1部リーグに所属している「ネゴヒャン」チームは2012年、北朝鮮の代表的な対外貿易・食品・スポーツ用品企業「ネゴヒャン」によって平壌で創設された。1部には「4・25体育団」「平壌体育団」「鴨緑江体育団」「黎明水体育団」などの強豪が属しているが、創設10年後の2021−22シーズン1部リーグで19勝1分2敗の成績を収め、初優勝を果たしている。仮に出場すれば、韓国の「水原FCウィメン」を破って、決勝進出を果たすであろう。
それと、AFCも大会の円滑な運営と興行面の成功のため北朝鮮の出場を望んでいる。日本やオーストラリアも開催に関心を示していたが、韓国の水原を選定したのは歴史的な南北対決の実現による興行性とスポーツが果たべき使命のアピールにあった。
韓国はAFCのサルマン会長が4月29日、ナダ・バンクーバーで開かれたFIFA評議会の場で北朝鮮サッカー協会の金一国(キム・イルグック)会長と会談したことに注目している。サルマン会長は北朝鮮の体育相でもある金会長に北朝鮮女子サッカーを「世界的モデル」と持ち上げていたが、おそらく「ネゴヒャン」の出場を促したのではないかと期待を寄せている。
しかし、総合的にみて、不参加の可能性が高いようだ。金総書記は2023年12月に南北関係を「敵対的な二国家関係」と規定し、「統一を志向する同一民族」であることを否定する方針を公式化した。以後、終始一貫韓国との対話や交流を拒否している。実際に北朝鮮は昨年7月、韓国の光州で開かれた「世界アーチェリー選手権大会」にも出場しなかった。
何よりも、北朝鮮が警戒しているのは韓国で開催される大会への出場、特に南北の直接対決は政治的に解釈される恐れがあることだ。
今年3月に豪州で行われた女子アジアカップの北朝鮮対中国戦では、現地の韓国系応援団が北朝鮮選手団に拍手を送り、「コリア、勝て!朝鮮、勝て!」と声援を送り、これに北朝鮮選手団が応じて挨拶する場面が見られたが、これは韓国は「もはや統一の相手でも、同胞、同族でもない」とする北朝鮮の意に反していた。
まだ北朝鮮から「ネゴヒャン」の不参加通知を受け取っていない韓国サッカー協会は参加を前提に準備を進めているらしいが、仮に出場となった場合、入国経路や入国手段を巡り、南北間で事前交渉をしなければならない。
北朝鮮の出場可否は数日内には確定する見込みだが、客観的に見て、北朝鮮はボイコットするのではないだろうか。