2026年5月25日(月)

 優勝しても賞金はお預け! 手ぶらで帰国した北朝鮮女子サッカーチーム

韓国で行われたAFC女子チャンピオンズリーグで優勝した「ネゴヒャン女子サッカークラブ」(労働新聞から)

 アジアサッカー連盟(AFC)女子チャンピオンズリーグ(AWCL)の決勝は、大方の予想を覆し、北朝鮮の「ネゴヒャン(我が故郷)女子サッカークラブ」が「東京ヴェルディ・ベレーザ」に1−0で勝利し、優勝の栄冠を手にした。

 グループリーグ初戦では「東京ヴェルディ・ベレーザ」に0―4で完敗していただけに、試合終了のホイッスルが鳴ると、「ネゴヒャン女子サッカークラブ」の選手やベンチは歓喜に沸いた。

 北朝鮮でも翌日、一般国民が目にする「労働新聞」3面に北朝鮮が優勝したことを写真を6枚も掲載し、報道。「ネゴヒャン」の選手たちに優勝カップと金メダルが授与され、主将のキム・ギョンヨン選手が最優秀選手賞(MVP)を受賞したことも伝えられた。

 優勝したことで、「ネゴヒャン女子サッカークラブ」には賞金100万ドルが贈られることになっているが、既報したように、実際には受け取ることができず、事実上“手ぶら”で帰国したようだ。

(参考資料:本日「日・朝因縁の決戦」 優勝してもしなくても北朝鮮の女子サッカーは賞金を手にできない?)

 背景には、北朝鮮の核開発資金源を断つため、北朝鮮籍者による外貨獲得を制限している国連安全保障理事会の制裁がある。そのため、賞金を直接受け取ることができなかったとみられている。

 もっとも、国連安全保障理事会の対北制裁決議に「スポーツ賞金を支払ってはならない」と明記されているわけではない。だが、北朝鮮への外貨流入や資金移転は厳しく管理されており、加えて、北朝鮮の金融機関は国際金融ネットワーク(SWIFT)から排除されているため、通常の海外送金そのものが極めて困難な状況にある。

 とはいえ、賞金が没収されたわけではない。選手たちが獲得した賞金は、一時的に「支給保留」の状態で国際機関側に保管されるものとみられる。

 FIFA(国際サッカー連盟)やAFCは、北朝鮮が国際大会で獲得した賞金や配当金をいったん管理口座にプール。その後、北朝鮮のナショナルチームやクラブチームが第三国で開催される国際大会に参加する際に必要となる航空費、宿泊費、滞在費などに充当する方式を取っている。こうした対応は過去にも行われてきた。

 北朝鮮は2010年6月、1966年イングランド大会以来44年ぶりにW杯本大会出場を決め、南アフリカ大会への切符を手にした。しかし当時FIFAは、本大会出場国に支給される参加配当金(当時約9億円)の北朝鮮への直接送金を拒否した。

 前年に北朝鮮が国際社会の抗議を無視し、2度目の核実験を実施したほか、「人工衛星」と称してテポドン(長距離弾道ミサイル)を発射。さらに韓国・延坪島砲撃事件や、韓国海軍哨戒艦「天安」沈没事件などが相次ぎ、南北関係も極度に悪化していた。こうした情勢もあり、FIFAは苦肉の策として賞金を長期間凍結。その後、北朝鮮のユースサッカー育成資材や国際大会参加費用として活用する方式を採用した。

 実際、2020年までイタリア1部リーグ「セリエA」の名門ユヴェントスでプレーしていた『人民ロナウド』の異名を持つ韓光成(ハン・グァンソン)選手も、年俸が北朝鮮へ流れることを防ぐ名目で口座を凍結され、送金も遮断されていた。最終的には、北朝鮮籍者への労働許可発給が禁止されたことで北朝鮮への帰国を余儀なくされた。

 「ネゴヒャン女子サッカークラブ」は、AFC女子チャンピオンズリーグ優勝により、来年マイアミで開催されるFIFA女子チャンピオンカップ(大陸王者杯)への出場権も獲得した。この大会では優勝賞金230万ドル、準優勝100万ドル、準決勝敗退でも20万ドルが支給される。

 また北朝鮮は、来年6月24日からブラジルで開催される女子サッカーワールドカップにも、日本とともに出場する。優勝国には429万ドル、準優勝301万5000ドル、3位261万ドル、4位245万5000ドルの賞金が用意されている。

 国連安保理の制裁が解かれない限り、いつまで経っても賞金を持ち帰ることはできない。