2026年5月27日(水)
初の米朝首脳会談が開かれたシンガポールの外相の訪朝が注目される理由
平壌で開かれたシンガポールと北朝鮮の外相会談(労働新聞から)
中国の習近平主席の6月初旬訪朝説が取り沙汰される中、シンガポールのビビアン・バラクリシュナン外相が昨日(26日)北朝鮮を訪問した。
北朝鮮は通常、外国要人の訪朝については首脳だけでなく外相クラスであっても事前に公表するが、今回は事前予告がなかった。
今朝付の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」によると、バラクリシュナン外相は平壌到着後、直ちに金正恩(キム・ジョンウン)総書記の側近でもある外交の司令塔、崔善姫(チェ・ソンヒ)外相と会談した。
同紙によると、会談では、外務省間の交流・協力を強化し、二国間関係を多方面で発展させていく問題に加え、地域および国際問題についても意見交換が行われたという。
バラクリシュナン外相は、2018年6月にシンガポールで開催されたドナルド・トランプ米大統領と金正恩総書記による史上初の米朝首脳会談の際、夜間視察に出た金総書記を案内した人物として知られている人物である。それだけに今回の訪朝に俄然、注目が集まっている。
シンガポールと北朝鮮は1975年に国交を樹立し、半世紀にわたり良好な関係を維持している。シンガポールには北朝鮮大使館も置かれており、朝鮮籍保有者には在日朝鮮人を含めてノービザ措置が適用されている。
外交面でもシンガポールは米朝関係や南北関係において中立的立場を維持しながら、北朝鮮との貿易関係を続けてきた数少ない国の一つである。
また、シンガポールはこれまで北朝鮮と他国との間で「メッセンジャー役」を担ってきたことでも広く知られている。
例えば、南北対話が活発だった金大中(キム・デジュン)政権から盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権、さらに悪化していた李明博(イ・ミョンパク)政権にかけて南北秘密接触の橋渡し役を果たしていた。
例えば、2009年10月には、シンガポールが仲介し、当時の青瓦台(大統領府)秘書室長だった任太熙(イム・テヒ)氏が、シンガポールで北朝鮮の統一戦線部長だった故・金養建(キム・ヤンゴン)氏と秘密裏に会談し、失敗に終わったが、李明博(イ・ミョンパク)大統領と金正日(キム・ジョンイル)国防委員長との南北首脳会談開催について協議したとされる。
また、南北の接触だけでなく、シンガポールが日朝間の秘密接触の舞台となったこともあった。直近では、岸田文雄政権下の2023年3月から6月にかけて、日本政府は公式に認めていないが、日本政府関係者がシンガポールで北朝鮮の党関係者と複数回にわたり極秘接触を行ったとされている。
バラクリシュナン外相は訪朝日程を終えた後、明日(28日)に韓国を訪問する予定だ。シンガポール外相の公式訪韓は2007年以来、約20年ぶりとなる。
ソウルでは、趙顕(チョ・ヒョン)外相に加え、北朝鮮政策を所管する統一部の鄭東泳(チョン・ドンヨン)長官との会談も調整されている。会談では中朝首脳会談や米朝首脳会談の可能性など、最近の情勢に関する北朝鮮側の立場が共有されるとの見方が出ている。
中国の王毅外相が4月に北朝鮮を訪問したことで、習近平主席による2019年以来、7年ぶりとなる訪朝が近いとの観測も浮上している。さらに、バラクリシュナン外相が訪朝直前に訪中していたこともあって韓国側は今回のシンガポール外相の訪韓に大きな期待を寄せている。