2026年5月30日(土)

 駐韓米軍司令官が韓国政府の意向を再三無視! 最高司令官の李在明大統領と相反する発言を繰り返す!

ブランソン駐韓米軍司令官(出展:ペンタゴン)

 米韓関係が微妙な局面を迎えている。駐韓米軍司令官が李在明(イ・ジェミョン)大統領に再三異を唱えているからだ。

 韓国軍の最高司令官は李大統領だが、朝鮮半島有事の際の軍の統帥権(作戦統制権)は韓国大統領ではなく、駐韓米軍司令官が握っている。駐韓米軍司令官は米韓連合軍司令官、国連軍司令官も兼任している。つまり、第27代駐韓米軍司令官であるジェイビア・ブランソン大将は、第18代米韓連合軍司令官であり、第33代国連軍司令官でもある。

 イラクやアフガニスタンでの従軍経験を持つブランソン司令官は、2024年9月24日に米上院軍事委員会の承認を受け、同年12月に駐韓米軍司令官に就任した。在韓米軍の黒人司令官としては、ヴィンセント・ブルックス前司令官に続き2人目である。

 「世界190余りの国の中で戦時作戦統制権を持たない唯一の国家」(安圭伯〈アン・ギュベク〉国防部長官)という屈辱的な状況から脱却するため、韓国は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代から戦時作戦統制権の返還を米国に求めてきた。米国は原則的には同意しているものの、さまざまな理由を挙げて返還時期を先送りしているのが実情である。

 李在明大統領は5月26日、慶尚南道昌原市の海軍潜水艦司令部で開かれた「第1回未来国防戦略委員会」で「戦時作戦統制権を明日にでも取り戻したとしても何の問題もない」と述べた。これに対し、ブランソン司令官は「政治的便宜主義が(戦時作戦統制権移管の)条件に先行してはならない。時期ではなく条件に集中すべきだ」との発言を繰り返している。最近では「期限を決めて推進しようとする可能性が気がかりで眠れない」とまで語っている。

 米韓両国は米韓連合軍の作戦指揮能力、北朝鮮の核脅威に対する韓国軍の独自対応能力、そして北東アジアの安全保障環境という三つの条件が満たされた場合に戦時作戦統制権を移管することで合意している。しかし、「条件を満たしているかどうか」の判断と評価は米国側が行う。李大統領が「戦時作戦統制権を行使するに十分な軍事能力を備えているので明日にでも移管できる」と主張しても、ブランソン司令官は聞く耳を持たないようだ。なぜか?その理由は、これまでのブランソン司令官の発言から読み取ることができる。

 ブランソン司令官はこれまでも、在韓米軍や韓国軍が担うべき「地政学的役割」について、「北京から直線距離で400〜600キロしか離れていない唯一の部隊」など刺激的な中国を刺激するような表現を用い、説明してきた。

 昨年5月の米太平洋地上軍シンポジウムでは、朝鮮半島が北東アジアにおける最適な作戦地域であることを強調し、中国と台湾の紛争時には「日中間に浮かぶ空母の役割」を果たし得ると述べた。

 同年11月16日には、在韓米軍の公式ウェブサイトに、上下を逆転させた朝鮮半島地図を背景として、朝鮮半島が北朝鮮だけでなく、中国やロシアの脅威に対応する上でも重要な戦略的価値を持つことを強調する長文の寄稿を掲載した。

 さらに今年5月22日には、陸軍戦争大学主催のポッドキャストに出演し、韓国について「中国が東海岸から外を見れば、最初に目にするのが韓国であり、アジアの中心部に位置する『短剣』のような存在だ」と語った。韓国軍を中国に危害を加え得る「凶器」に例えたのである。

 これらの発言を総合すると、米軍が韓国に対し、中国本土の中枢を狙い得る攻撃的役割を期待していることがうかがえる。米韓の摩擦はこれだけではない。

 在韓米軍は今年2月18日から19日にかけて、烏山空軍基地からFー16戦闘機を黄海(西海)上空へ出撃させる大規模訓練を実施した。この際、中国軍戦闘機も対抗して出撃し、一時的に黄海上空で米中戦闘機が対峙する事態が発生した。

 在韓米軍の単独行動だったが、韓国軍への事前通告や了承はなかった。これに対し、韓国国防部長官と合同参謀本部議長は直接電話で抗議し、謝罪を求めた。しかし、駐韓米軍は「即応態勢の維持について謝罪することはない」として応じなかった。

 さらに、韓国政府が在韓米軍の許可なしに要人が非武装地帯(DMZ)へ出入りできるよう、DMZ関連法令の改正を求めても、ブランソン司令官は首を縦に振らないので李政権のいら立ちは高まっているようだ。

 韓国を対中牽制網に組み込みたい米国と、今年1月の訪中を通じて中韓関係を改善した李政権との間の摩擦は、今後さらに顕著になる可能性がある。