2012年3月19日(月)

「衛星」か「ミサイル」かの2009年の議論の再燃

 4月は中旬に開催される党代表者会での金正恩の党総書記就任、15日の金日成主席生誕100周年、そして25日の朝鮮人民軍創建80周年という三つの一大行事を迎える。何かあるとは思っていたけど、それが「衛星の打ち上げ」ということのようだ。

 「衛星」にしても「長距離ミサイル」にしても、「強盛大国の大門が開かれた」との「祝砲」になるだろう。また、実績のない金正恩氏の初の業績、手柄にもなるのだろう。「打ち上げる」と発表した以上、関係国の説得にも耳を貸さず、このまま見切り発車するだろう。月2万トン支援されるビスケットなど栄養食品とではとても取引できないということなのだろう。

 米国は「米朝合意の違反」と、北朝鮮を非難しているが、北朝鮮は一時停止を約束したのは、長距離ミサイルであって、人工衛星ではないとして、合意に抵触しないと反論しているようだ。「人工衛星」か、「長距離ミサイル」かの2009年の4月の時の議論の再燃だ。

 当時、国連安保理は「4月5日の発射」という玉虫色の表現を使ったものの、北朝鮮に対して「二度と発射してはならない」との議長声明を出している。この声明に北朝鮮の友好国である中露も同意している。ということは、中国もロシアも発射が実質的にミサイルであったことを認めたことに等しい。

 さらに、北朝鮮が反発し、50日後の5月25日に二度目の核実験を強行した際には「いかなる核実験又は弾道ミサイル技術を使用した発射もこれ以上実施しないことを要求する」との安保理決議(1874号)を採択している。

 安保理議長声明及び決議に則れば、北朝鮮は今回の発射が仮に人工衛星であっても、やってはならないことになっている。この決議を北朝鮮が知らないはずはない。

 しかし、北朝鮮は安保理の対応も「不当である」あり、拘束されないとの立場を取り、「我々の自主的な宇宙利用権利を引き続き行使する」(2009年4月14日の外務省声明)と「人工衛星の発射」を継続することを宣言していた。

 北朝鮮は今回、外国から宇宙航空の専門家や報道陣を招き、公開すると言っている。「衛星」否かの白黒をつけたいとの考えのようだが、米国は大陸間弾道ミサイルに繋がるロケットそのものを問題にしているので仮に「衛星」であることが判明したとしても、米国が了承するという類の話ではない。簡単な話が、国連の決議が撤回、解除されない限り、北朝鮮に限っては、人工衛星の打ち上げは許されないということだ。

 北朝鮮が強行すれば、米朝合意は破棄され、栄養食品の支援も見送られ、6か国協議の開催も遠のくとの見方が有力だ。また、国連決議の違反ならば、安保理で再び制裁決議が議論されることになる。そうなれば、北朝鮮は過去2回のケース同様にまたまた、核実験カードをちらつかせることになるだろう。いつか来た道である。

 北朝鮮は金正恩体制になっても何一つ変わってないということのようだ。