2008年12月17日(水)

CIAにもわからない北の核保有数

 北京から帰国したヒル米国務次官補は、6カ国協議の失敗説について問われた際に「2005年9月の合意以降、北朝鮮は1kgもプルトニウムを製造していない。明らかに6カ国協議が寄与した部分がある」と答え、これまでの成果を自画自賛していた。この発言を聞いて、ブッシュ政権がクリントン政権下の「ジュネーブ合意」を批判した際のペリー元国防長官の「擁護発言」を思い出した。

 ペリー氏はワシントン・ポスト紙とのインタビュー(03年7月3日付)で「この合意がなかったら、北朝鮮は50〜200個の核爆弾を手にしていただろう」と言っていた。「歴史は繰り返される」とはまさにこのことだ。

 この8年間、ブッシュ政権がやったことと言えば、停止していたものを、再稼動させ、再度それを止めたに過ぎない。その間、プルトニウムの増産を放置し、核実験までさせてしまった。8年もの間、実に無駄な時間を費やしたということだ。要は、北朝鮮の核問題を解決できなかったという点においてはクリントン政権もブッシュ政権も同類だ。

 昨日、CIAに25年間在職し、北朝鮮など極東を担当していたとされるアーサー・ブラウン元要員が外国人記者倶楽部で講演したが、彼の話は、核問題にしても、拉致問題にしても、金正日総書記の健康問題についても、日本のメディアですでに伝わっている程度の情報で新味がなかった。またその分析も、一般の評論家並だった。

 ブラウン氏は夜のテレビのニュース番組に登場し、金総書記の治療に当たったフランス人医師や韓国の情報機関、国家情報院のトップが「本物」と断定、鑑定した公開活動の写真を今尚「偽物」と言う始末で、正直唖然とした。

 「情報源」を聞かれ、「答えられない」ともったいぶった感じで話していたが、ひょっとして、「情報源」は日本の週刊誌や新聞記事類ではないだろうかと勘ぐらざるをえないほどお粗末なものだった。正直、CIAの北朝鮮に関する情報収集能力、分析はこの程度なのかと失望した。

 まあ、北朝鮮については無理もない。何しろ、CIAを持ってしても、肝心要の北朝鮮の核爆弾について正確な数は今もってわからないのが実情だからだ。

 デサッター米国務次官補(条約検証・順守担当)は昨日、日本人記者団との会見で、「正確な数はわからないが、北朝鮮はいくつかの核兵器を持っている」と明言した。ゲーツ国防長官も米外交専門誌フォーリン・アフェアーズ最新号への寄稿で、「北朝鮮はいくつかの爆弾をつくった」と述べていた。二人の発言を総合すると、北朝鮮の核保有数は2〜3個ということになるが、オバマ次期大統領は大統領選挙期間中に「8個持っている」と言っていた。数個と、8個では大違いだ。

 ところが、韓国のキム・ハッソン国会国防委員長は昨日、国防研究院主催のフォーラムに出席し、「北朝鮮が1個当たり2〜3kgのプルトニウムを必要とする小型核を開発していれば、現在20個以上の核爆弾を製造した可能性がある」と語っていた。

 米国防省も、国務省も「核兵器保有国として認めない」(デサッター米国務次官補)と言っているが、認めようが、認めまいが、北朝鮮が核爆弾を保有していることだけは確かなわけだから、一刻も早く、物騒な核を放棄させるよう全力を挙げなければならない